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死神の猫  作者: 十三番目
第三傷 Third Guilty 真なる神へ告ぐ
119/223

ep.18 合同作業


「大量死って、穏やかじゃない内容ですね」


「私たちの仕事に、穏やかさなんてものは(はな)からありませんよ」


 言われてみればそうだ。

 死神なんて呼ばれるくらいである。

 魂を事務的に回収していく仕事に、穏やかさなんてあるはずもない。


「ミントからも追って連絡が届くはずです。詳しいことは、そちらで確認してください」


 上司に了承の返事をすると、現世に戻るため霜月と部屋を後にする。

 美火は寂しそうな雰囲気を漂わせていたが、去り際に頭を撫でると、少し元気が復活していた。


 そういえば、上司の髪も三つ編みのままだったな。

 なんて、現世に戻ってからふと思い出していた。




 ◆ ◆ ◇ ◇




「今回の仕事は合同作業ってわけね」


「そうみたいです」


 律の部屋でテーブルを囲みながら、ミントから届いた情報を整理していく。

 律と共に仕事について打ち合わせをしている中、周りでは燕たちが盛り上がっていた。


「良かったね時雨! 睦月さんたちと一緒だって!」


「はあ? なんも良くねぇし」


「素直じゃないな〜。本当は嬉しいくせに」


「死ね」


「もう死んでまーす。あ、僕はもちろん嬉しいですよ。睦月さんと一緒ですから」


「リブラってば、霜月くんが抜けてるよ」


「やめとけ燕。あいつはあえて抜いてんだよ。性根が腐ってるからな」


「ちょっと時雨、それブーメランだからね?」


 言い争うリブラたちを見て、律は呆れた様子でため息を()いている。

 霜月はと言えば、淡々と視界のモニターを確認しているようだった。


「ごめんなさいね、騒がしくて」


「いえ。たまには(にぎ)やかなのも良いですね」


 私の返事に、律は少し驚いた顔になると、次第に柔らかい笑みを浮かべていく。


「睦月ちゃんが楽しめてるなら良かったわ。それにしても、霜月ちゃん。ちょっと見ない間に、随分と成長したわねぇ」


「睦月さんのこととなると、邪魔者は全て排除するくらいの勢いだったからね〜」


「邪魔者筆頭が何か言ってるわ」


「もー時雨ってば! いくら本当のことだからって、何でも口に出していいわけじゃないんだよ?」


 時として、悪意のない言葉の方が殺傷能力は高かったりする。

 傷ついた(こころ)に手を当て、静かになるリブラを見て、時雨が何とも言えない表情をしていた。


「でもまさか、大量死の原因に死神が関係しているなんて……」


「詳しい目的はまだ分かってないみたいだけどさ。自戒の印があるのに、そもそもそんな事態を起こせると思う?」


 複雑そうな律に、リブラは半信半疑といった様子で問いかけている。


「たしかに、規則(ルール)を破るどころか、逸脱にも近い行動だよね」


「だとしても、選別所の管理者が大量の死を読み取ったんだろ? なら、起こるのは確実じゃねぇか」


 死神はどうやって生命の終わりを予測するのだろうと思っていたが、時雨の発言からして、閻魔(えんま)の存在が関わっているらしい。


「たしかに、あそこの管理者が言及した時点で、()()()()()()()()()が絡んでるのは間違いないだろうね」


「どうして閻魔の話したことが、三界の関与に繋がるの? 魂の回収時期については、情報管理課の方でも把握してたはずだよね」


 疑問を口にした私に、リブラが答えてくれる。


「睦月さんの言う通り、寿命はデータベースにも載っているので、魂の回収時期などは前もって依頼されています。ただし、三界の存在が接触した際に、寿命が書き替わってしまう事があるんです」


「つまり、閻魔が変化した寿命を伝えてきた事で、三界の関与が判明したってこと?」


「察しが良いですね。さらに言うと、僕たちの仕事は、同族が現世に残した痕跡の隠蔽(いんぺい)と後始末なんですよ」


 リブラたちに依頼が来た時点で、少なくとも死神が関わっていることは確定したわけだ。

 なるほど、点と点が繋がった。


 教えてくれた感謝を口にすると、リブラの顔が一気に崩壊していく。


「いえいえそんな……。睦月さんのためならいくらでも……」


「うわ、キモ」


 時雨のドン引いた声が聞こえたが、リブラの耳には届いていないのだろう。

 顔が溶けているリブラを見て、霜月が冷え切った表情を浮かべている。


「やるべき事を整理しましょう。睦月ちゃんと霜月ちゃんは、魂の仕分け及び選別所への転送。あたしたちは、いつも通り痕跡の後始末を行うわ」


 律の言葉に、それぞれが自らの仕事を認識していく。

 人間の大量死。

 そして、それに関わっている死神。


 相手が規則(ルール)を破ったからといって、こちらまで破るわけにはいかない。

 私がやるべき事は、亡くなった魂を一つ残らず回収することだ。

 

 規則(ルール)に従わない死神とやらは、印の抜け道を見つけたのだろうか。

 それとも──。


 予想が正しければ、この仕事も一悶着ありそうだ。




 ◆ ◇ ◆ ◇




【 お知らせ 】


 近況ノートに、(カクヨムの)サポーターさん限定で『死神の猫のSS』を載せています。

 完全書き下ろしになっていますので、良ければ読んでみてください。


 いつも読んでくださっている方も、プラスでサポーターになってくださっている方も、本当にありがとうございます。

 今後も物語でお返しできるよう、実力を磨きながら精進して参ります。



◆ 書き下ろしの内容は、

『睦月と霜月』『レインとビベレ』の二本立てです。



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