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再び出会う時、双子と縛られて




「やあやあ、こんな所まで来てくれてありがとう」


 私たちの先ほどまでの緊張とは裏腹に、軽快な挨拶と共にここの住人によって私とレオスは出迎えられた。


「待っていたんだ。君たちを! ほらここに座って。長い長いお話になりそうだからね!」


 オルフェさんはいるのだろうか。一体どのような場所に管理されているのだろうか。


 意を決して扉の向こうへと歩んだ私たちの心情を知ってから知らずか、明るく案内する彼を見て、レオスは早々呆れ顔だ。


 呆気に取られている私よりレオスの方が先に話し始めた。


「はぁ。案外快適そうな場所に住んでいるんだね」


「そう? 君たちの部屋とはいかないけど普通のところさ。驚いたかな?」


 くるっと回り、両手を広げて部屋を案内しようとしている。


「私はさしずめ案内人さ。そして君たちが今まで一緒に過ごしてきた彼は……きっかけを与える人物かな。勿体ぶってなにも、真相を話さなかったでしょう?」


「エピソードがコンプレックスがとかしか話さなかった。内容なんてなんにも」

 

 うんざりした様子でレオスは言う。彼はレスディさんと私より何か話していたのだろうか。


 オルフェさんはレスディさんを知っているのか、レオスの話に頷いてこう言った。


「その役割は彼には重いからね。真実を君たちに伝えるのは私の役目だ」


「真実を全て知っているってこと?」


 私が話についていけずに呆気に取られていると、オルフェさんが私の聴きたいことも全て知らずのうちに伝わっていたように、いつかのように答え合わせが始まった。


「君たちが私に聞きたいことがあるそれくらい知っているとも。わざわざここまで来てくれたんだ! 今聞きたいことだけと言わず、これから起こることも教えようじゃないか!」


「未来のことも知っているってこと?」


「まず手始めに、お客様が来てくれたから換気をしよう」


 驚き間髪入れずに質問をするレオスにどこ吹く風。マイペースにも部屋の窓を開け始めた。


 入ってくる風が頬を撫ですぎていく。その潮の匂いがわずかにする風に、慌てて沸騰していた私の思考が冷やされる感覚がした。


「ああ、君たちはこの椅子に座るといい。よいしょっと。──まずは、何から話そうか」


 指し示された2人がけの椅子に座る。その前にオルフェさんは椅子を持ってきて私たちと向かい合うようにして腰掛けた。


「今起きていることについて、知っていることを全部教えて」


 間伐入れずにレオスが何か焦っているように質問を投げかける。


「うーん。そうだね。今はエディ殿下が伏せっていて、ユディ殿下が生まれてもう少しで一歳。と言ったところだね」


「そんなこと僕たちでもしってるさ。もっとこう、大人たちの知らないこととかさ!」


 レオスが前のめりになる。それをみたオルフェさんは笑みを一層深くして、私たちに新たな疑問を植え付けた。


「見えていることは本当のことなのかな? エディ殿下はもう目覚めている。ユディ殿下が生まれたのもエディ殿下に関係、というよりこの国に関係がある。それだけは覚えておいて損はない」


「僕らに見えていることが本当か? そんなの本当かどうかわかったらアンタに聞きに来ないさ」


 イラついたレオスを右眼に、落ち着きを取り戻した私から疑問を投げかけた。


「レスディさんからオルフェさんは眠りについたと聞きました。だから私たちは会えなかったんだと思いました。でもどうしても今になって目覚め、私たちを出迎えてくれるのですか?」


 オルフェさんは驚いたように目をぱちくりさせ答えてくれる。


「おや、そんなことまで聞いていたとは。実はですね私には呪いがかけられているんです。呪いの発動と解除の条件がそろっているから君たちの目の前に今いることができているのですよ」


「呪い?」


 すかさずレオスが反応した。


「ええ、私の力を秘匿とするために。この物語を語りきるために。今は君たちを導く順番。その時空(とき)がきたのです」


「これが私、アポスフィスムの特性なんです」と、悲しそうにでもどこが誇らしげにオルフェさんが答えてみせた。


『真実に気がつけば気がつくほど、大切な物に近づけば近づくほど、彼のプシュケーは蝕まれていくのです』


 そうか、これがレスディさんの言っていた、答えだったのか。


 真実に近づくほどにオルフェさんとの距離が空いてしまう。──つまりオルフェさんが眠りについてしまう。その理由は、私たちが気づくことを恐れた抑止力が働いたからなのだとわかってしまった。


 何らかの理由か、それともこの世界の悪戯か、オルフェさんが目覚めた今、私たちは真実に1番近い場所にいる。


 そう気がついた瞬間、震えが止まらなくなってしまった。真実を知るのが怖いというわけではない。愉しみの方が優ってしまった。


「オルフェさんなら、私の神の力や封印されたコトについて聞いてもいいってことですか?」


 恐る恐る。尋ねる。もう何を言われても怖くない。隣にレオスがいるから。そして、自分自身聞く準備ができているからだ。


「ええ──。でも、君たちが双子である。定義されてから、貴女特殊な力が生まれ、そしてあるコンプレックスは封印されてしまったのですよ」


「それは僕たちが双子であることに全てが関係しているんだね」


 双子。


 レオスとエレーヌが双子として生まれてきたからこそ。エレーヌの力が生まれ、あるはずのコンプレックスがなくなってしまったということだろうか?


 それは、まるで最初から双子で生まれることが決定していなかったかのような口調。


「本当? 私たちが双子じゃなかったら私の力も封印されたコンプレックスもそして私の記憶も……」

 

 私がつぶやいた言葉に思うことがあったのだろう、レオスが顔色を変える。


「君たちが双子ということに大きな関わりがあるということです。今話せる最大限のことをもう言ってしまいましたから、今日はここまでにしましょう」


 レオスと私はオルフェさんの話に衝撃を受け二の句を告げぬまま、オルフェさんの部屋を後にした。


 オルフェさんを訪ねる前とは違う空気感が二人の間に流れる。


 お互い無言のまま、私たちはおとなしく部屋へと戻った。



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