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06.食堂。平行線上の美少女。

 登美ヶ丘高校の校舎は一階ロビーから三階までが吹抜けになっている。

 まるでホテルのロビーのような吹抜けの周りには図書室やPCルーム、購買など生徒がよく利用する施設が配置されていて、食堂は二階の吹抜け南側にあった。



 僕と涼は吹抜けをぐるりと囲む廊下を通り食堂へと入って行く。


 食堂には一面ガラス張りの窓からたっぷりと光が差し込んでいる。

 十分なテーブル間隔が確保された室内席とテラス席を備えた開放的な空間で、食堂というよりは、ちょっとしたカジュアルレストランのような雰囲気だ。


 食堂は僕もよく利用しているが、メニューは和洋中と学生が好みそうなメニューが一通り揃えてあり、学生価格の割に味も良い。

 また、放課後にはカフェとして利用できるようになっている。

 コーヒーやジュースを飲みながら打ち合わせや勉強ができるため、生徒からは評判の良い食堂だった。



 僕と涼はすでに多くの生徒で賑わう食堂内を見渡す。

 そして、空いている二人掛けのテーブル席を見つけると席に着いた。


 全ての席にはタブレットの注文パネルが置かれている。

 涼は席に着くとすかさずタブレットを手に取った。

 そして、ずっと前から決めていたかのように迷いなく親子丼セットを選ぶ。


 涼がタブレットに学生証をかざして決済を済ませると、注文番号が表示される。

 料理が出来上がると受け取りカウンターの上にある大型ディスプレイにその番号が表示されるので、それを合図に料理を取りに行くという仕組みだ。



 僕は涼からタブレットを手渡されると、指をさ迷わせる。

 そして、しばらく悩んだ結果、カレーライスを選び注文した。


 少しして受け取りカウンターのディスプレイに注文番号が表示されると、僕たちは料理を受け取り再び席に戻る。



「おい陽成、あっち見てみろよ」


 僕が椅子に座ると、涼が何かに気付いた様子でそう言った。

 その視線は窓の外、テラス席の方へと向けられている。

 僕はその視線を追ってテラス席へ顔を向けた。


 テラス席の一角にはそこだけ雰囲気の違う、ずいぶんと華やかな一席があった。

『華やか』と言っても特にその席だけ豪華な椅子とテーブルが使われているとか、色鮮やかな花が飾りつけられているとか、そういうわけではない。

 三人の女子生徒が楽しそうに会話しているだけだ。


 それだけの、一見どこにでもあるようなお昼の光景がなぜ華やかに見えるのか。

 それは、その中でもひと際美人で優雅な居ずまいの一人の女子生徒のせいだろう。


 人形のように小さな頭と顔。

 まっすぐと伸びた背筋。

 どこまでも続く平行線のように綺麗に揃えられた足。


 椅子に座るその女子生徒は、まるでファッション雑誌から抜け出てきたようだった。

 そして、その仕草ひとつひとつが今まさに雑誌の撮影中かと思うほどサマになっている。

 かといって、その動作が芝居がかっていたり、嫌味っぽかったりするかと言えば決してそんなことはない。

 むしろ洗練され、爪の先、髪の毛一本からでさえ気品を漂わせているように見えた。



「たしか三年生の……、氷室(ひむろ)理恵(りえ)先輩だっけ?」


 僕は女子生徒に視線を向けたまま言った。



 テラス席に座る氷室先輩のロングのつややかな髪が春風に吹かれてふわりと揺れる。

 それだけのことがまるで映画のワンシーンのように見えるから不思議だった。

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