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40.徒労。ゲーマーの常識。

「ちょっ、それは僕が――」


 そう言いかけた僕を制止するように女の子は人差し指を突き出し左右に振って見せる。


「ノン、ノン、ノン。テソロを先にロックしたのはワ・タ・シ、早い物勝ちだよ」


 そう言われて僕は氷室先輩の言葉を思い出す。



『テソロを見つけたら、まずはテソロをロックしてオープン権を確定しておくことをおススメする――』



 コンキスタは最初にテソロをロックしたプレイヤーにオープン権が与えられる。

 先輩はそう言っていた。


 僕はテソロを見つけただけで既に手に入れたつもりだったが、ロックをしていなかった。

 つまり、まだ僕には獲得権がなかったわけだ。



「どうやら誰もいないと思って油断してたみたいだねー。まぁ、勉強になったと思って次からは気を付けることだね」

「……あいにく初心者でね、そこまで気が回らなかったよ。今度からは気を付けるよ」


 僕は悔しさを堪えそう言うしかなかった。


 一時間ほど歩いたあげくテソロを手に入れることが出来ずとても残念だったが、彼女がルール違反をして僕からテソロを奪ったわけではない。

 見つけた時点でロックしなかった僕が悪いということになるのだろう。


「へぇ、キミ初心者なんだ?」


 女の子はそう言うと興味深そうに僕を眺める。


 その様子を見て僕はある違和感に気づく。

 彼女はARデバイスを装着していなかったのだ。



 AR――拡張現実とは現実に存在しない情報を視覚化するシステムであり、現実に存在しないものを視認するためにはエクステンドのようなARデバイスが必須だ。

 それを女の子は装着していなかった。


 これまでの言動から彼女がコンキスタドールであることは間違いない。

 しかし、ARデバイスもなしにいったいどうやって彼女はコンキスタをプレイしているというのか。


「ランクはいくつなの?」


 僕の疑問をよそに女の子がたずねる。


「このあいだ3になったところだよ」

「ふぅん、3かぁ。ところであなたの名前は?」

「ん? 僕の名前? 僕の名前は末永――」

「違う違う!」


 女の子は名前を言いかけた僕を慌てて制止する。

 名前を聞いておいて違うとは何事か。


「ゲームのプレイヤーが名前を聞くっていったら、普通はアカウント名でしょ」

「あぁ、それもそうか」


 僕は素直に納得する。


「アハハハッ!」


 そんな僕の様子を見て女の子は可笑しそうに笑う。


「……アカウント名はグッドフェローだよ。ゲーム自体あまりしないんだ、カンベンしてくれ」


 僕は恥ずかしくなり、少し照れながらアカウント名を名乗る。


「で、キミの名前は?」

「私? 私の名前は、erik(エイリーク)


 そう名乗った彼女の瞳がキャップの奥で赤く光った。

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