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22.誤解。家庭環境と教育。

「何を勘違いしているのか分からないですけど、僕はほんの数時間前にコンキスタを始めたばかりの善良ないち市民なんですけどね」


 僕は他に説明しようもなくそう言った。


「それはこちらで判断させてもらう」

「あぁ、そうですか。まさかコンキスタにこんな素晴らしいイベントが存在するなんて知りませんでしたよ」


 僕は皮肉を交えてそう言った。


「コンキスタを始めたばかりと言ったな」

「ええ、そうですよ」

「……ふむ。ではその言葉が本当かキミのステータスを確認させてもらおうか」

「え? そんなことが出来るんですか」


 僕は少し驚いてそう言った。

 コンキスタには他のプレイヤーのステータスを確認できるシステムがあるのだろうか。


「ステータス画面を開いた状態でキミのエクステンドを渡してもらおう」

「……なるほど」



 僕のゲーム画面を直接見ることで確認するつもりらしい。

 思っていたよりもアナログな方法だ。


 しかし、現状、相手の言う通りにするしかないだろう。

 僕はコンキスタのステータス画面を開くとエクステンドを外す。

 そして、後ろに向かって差し出した。


 背後の人物は僕のエクステンドを受け取ると、なにやら動きを見せる。

 こちらからは何をしているのか見えないが、僕のステータスを確認しているのだろう。



「名前はグッドフェロー。ランクは1か……。どうやら本当に初心者のようだな」


 少しの間のあと、背後からそう聞こえてくる。

 その声は心なしか警戒心が薄れているようだった。


「だからそう言ったじゃないですか」

「すまないな。キョロキョロと怪しい動きをしていたからワッケーロかと思ったんだ」

「わっけーろ……?」


 さっきも耳にした言葉だったが、僕にはなんのことか分からなかった。


「いや、なんでもない。私が気にしすぎたようだ」

「……はぁ。よく分からないけど誤解が解けたなら、そっちを向いてもいいですか? 人と話すときは、ちゃんと相手の顔を見て話せって教育されてるもので」


 僕は前を向いたまま背後の人物に話しかけるという不自然な状況にいい加減疲れてそう言った。

 なにがなんだかよく分からないが、疑いが晴れたならいつまでもこんな態勢で会話を続ける必要はないはずだ。


「ずいぶん立派な家庭環境で育ったようだな」


 背後の人物はそう言って僕の質問には否定も肯定もしなかった。

 僕はそれを勝手に肯定と捉える。


「少なくとも人を後ろから脅すような教育は受けてませんよ」


 僕は出来るだけ皮肉を込めてそう言うと、疲労感たっぷりに振り返る。



 いったいどんな人間がこんなタチの悪い真似をするのか。

 その顔を一度くらい拝んで文句の一つでも言っておかなければ気が済まない。


 しかし、背後に立つ人物を視界に捉えた瞬間、僕の口から出たのは長々とした文句ではなく、短い驚きの声だった。


「――え?」


 僕は目を見開き短く声を漏らす。


 街はずれの工事現場を背景に僕の目の前立っていたのは僕の知っている人物で、そしてまったく予想外の人物だった。

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