15.not bad ≠ good。インストール。
『――新たなる冒険家へ。
黄金都市へ赴き、隠された財宝を手に入れよ。
謎を解き明かした暁には、巨万の富が与えられるだろう。
クリストバル』
メールにはそう書かれていた。
それと一緒にコンキスタのアプリケーションが添付されている。
僕はメールをじっと見つめる。
そして少し考えたあと深いため息を漏らした。
「はぁ……」
一瞬、怪しいチェーンメールのような文面に少し驚いたものの、その内容はなんのことはない、コンキスタに誘っているだけだ。
そして、こうまでして僕をコンキスタに誘いたい人物。
僕には一人しか心当たりがなかった。
「まったく涼の奴、こんな手の込んだことを……。そこまでして僕にプレイさせたいのか?」
僕はため息交じりにつぶやいた。
謎めいた文章を送りつけて、少しでも僕の興味を引こうという作戦だろう。
涼の考えそうなことだ。
わざわざフリーメールで送ってくるあたり手が込んでいる。
「誰がこんな安易な手に乗るか。僕は謙虚堅実だって言ってるのに、まったく……」
そうつぶやいた僕の脳裏を、ふと涼の言葉がよぎる。
『ニヒルなふりしてただの言い訳じゃねぇのか?』
その言葉が昼間から妙に心に引っかかっていて、頭の中で繰り返えされる。
僕は言い訳しているだけなのだろうか――
最近、なにかに熱くなったことがあっただろうか。
僕は自問する。
しかし、思い出そうとしてみてもすぐには浮かんできそうにない。
別に体を動かすことは嫌いじゃないし、勉強だって特に苦手な科目があるわけじゃない。
学校生活で特別テンションが上がることはないが、極端に下がることもない。
今までこの調子でやってきたし、感情の振り幅が少ないことは悪くないことのはずだ。
だけど、それが本当に良いかことかといえば――
その言葉の続きが出てこず僕は考え込んでしまう。
『ホント、高校二年生になったっていうのに全然成長が見られないんだから』
答えが出るどころか、藍の言葉まで浮かんでくる始末だ。
「成長ねぇ……」
僕はそう言ってソファに仰向けに倒れこんだ。
そして、エクステンドのディスプレイ越しにぼんやりと天井を眺める。
しかしそこには真っ白な天井があるだけで、答えはどこにもなかった。
「……ったく仕方ない、ちょっとだけやってみるか」
僕は天井を見つめたまま、誰に言うでもなくそうつぶやいた。
そして、メールに添付されたアプリに触れる。
インストールの確認画面が表示され承認すると、ダウンロードの進捗を示すバーが表示される。
ものの数秒で百パーセントになりダウンロードが終了すると、続いてインストールが始まる。
インストールが完了すると、いきなりディスプレイが暗転した。




