14.自宅。端末の片隅で。
僕はなにか新しい情報はないかと辺りを眺めながらブラブラと歩いていく。
しかし、特に気になる情報はなく、エクステンドを外すとセントラルアヴェニューを逸れる。
中心地である中央駅から離れるにつれて次第に商業ビルが減り、住宅用マンションや一軒家が増えていく。
僕の住む家は中央駅から十分ほど歩いた先にあるマンションで、街の一区画を占める、大型ファミリーマンションだった。
エントランスに入ると人感カメラが自動的に僕を捉え顔認証でオートロックを解除する。
僕はノンストップでエレベーターホールに進むと、エレベーターに乗って自宅がある六階まで上がっていく。
タッチキーで玄関ドアを開けると、僕の帰りを出迎えたのは愛想のかけらもない自動掃除ロボットだけだった。
というのも、両親は仕事の関係でこの街にもう一つ別に部屋を持っており、生活のほとんどをそちらの部屋で過ごしていた。
両親がこちらの部屋に来るのはなにかの都合で近くまで来た時か、たまの気まぐれぐらいだ。
つまり、僕はこの部屋でほとんど一人で過ごしていた。
誰もいないリビングに鞄を置くと、制服の上着を脱いでソファに腰かける。
わが家のリビングにはテーブルとソファしかなく、いつもきれいに整頓されていた。
別に僕がきれい好きとかミニマリストとかいうワケではない。
本来の生活の拠点ではないため、特に置くべきものがなく散らかりようがないというわけだ。
「ふぅ」
僕はひとつ息をはいてソファに背中を預ける。
そして、再びエクステンドを装着した。
エクステンドはウェアラブルデバイスとして、AR機能だけでなくパソコンの端末としての機能も兼ね備えている。
メールやインターネットはもちろん、スマートフォンも操作可能だ。
一応、家にはパソコンもあるが、わざわざパソコンを使うのはレポートや資料を作成するときぐらいだった。
僕はエクステンドのサイドフレームにある小さな電源ボタンを押して起動させる。
すると、レンズ部分の透過型ディスプレイがモニターとなり、視界に半透明の画面が浮かび上がる。
画面の左隅上部ではメールアイコンの上に小さく①と表示されており、メールが一通来ていることを知らせていた。
僕はメールのアイコンに触れるように空中に人差し指をかざすと、エクステンドのセンサーがその動きを感知してメールフォルダが開く。
「これは……」
僕は開いたメールを見て、思わず声を漏らしていた。




