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10.Pay or Time。to win。

「まぁ基本はソロだけどな。コンキスタでは調査団っていう名前のギルドシステムがあるんだよ。で、調査団を組むとステータスに補正がついたり、アイテムを共有出来たりと色々ボーナスがあるんだ」


 涼はコンキスタのギルドシステムについて説明する。


「チャットなんかの連絡機能もあるし、ゲーム内でも調査団の結成を推奨してるぜ」

「へぇ、そうなのか」


 僕は涼の説明に相槌を打つ。

 さすがにアヴァンサールが開発しているだけあって、システムの設計とサポートは充実しているようだ。


「正直、オレも最初はカネに釣られたんだけど、やってみるとゲームとしても結構ハマるんだよ。どうだ? 一緒にやろうぜ」


 涼はうさん臭い健康食品でも勧めるように言った。


「いいよ、どうせ今から始めたところで先行組には追いつけないしな」


 僕はそう言って首を横に振る。



 オンラインゲームは時間かお金をかけるほど有利になると相場が決まっている。

 今から先行組に追いつこうとするならお金か時間、あるいはその両方をそれなりにかけなければならないはずだ。


 別に十億を探すつもりはない――というか、そもそもコンキスタを始めるつもりもないのだが、断るには良い理由だろう。



 しかし、涼は僕の言葉ににやけて見せる。


「と、思うだろ? それがコンキスタは割と運ゲーなんだよ。課金もないし、宝箱からなんのアイテムが手に入るかは完全に運だからな」

「って、ちょっと待てよ」


 僕は涼の説明を聞いてふとひっかかる。


「たしかコンキスタってプレイは無料だろ? そのうえ課金要素もないのか? じゃあアヴァンサールはどうやって儲けてるんだよ?」

「さぁ? この街でしか遊べない試験的なゲームだからな。金儲けは二の次なんじゃねーの?」


 涼はそんなことなどまるで興味がない様子で言った。


「金儲けにもならないゲームに賞金十億円も出すなんておかしいじゃないか。アヴァンサールにいったいなんの得があるんだよ?」

「そこはオレらには分からないようなビジネスモデルがあるんだろ。今の時代、eスポーツだって数千万円の賞金なんてザラにあるしな」


 涼は適当な理屈で自分を納得させるように言った。


 まぁ、確かにこれだけ話題になれば、広告代だと考えれば決して高くないのかもしれない。

 しかし、ゲームの開発費も含めれば、それ以上の莫大なお金がかかっているはずだ。

 それをどう回収するつもりなのか。


「とにかく、どういう理由かは分からないけど、天下のアヴァンサールが十億出すって言ってるんだから間違いなく出るだろ。一緒に一攫千金目指そうぜ」


 涼は僕の疑問など気にする様子はなく目を輝かせて言った。

 その輝きは若者らしい純真なものではなく、欲にまみれた濁った輝きだった。


「まぁ、課金要素がないのはわかったよ。だとしても先行有利には変わらないだろ?」

「そりゃまぁ、先に始めた奴の方が有利には違いないけど、一週間くらいの差じゃそんなに変わんねーよ。みんなまだ手探りだし、今からでも十分チャンスはあるぜ」


 僕はテーブルに頬杖をついて考える。



「うーん……やっぱり興味湧かないなぁ」


 そして少し考えた後、そう言った。


 僕だってまったく興味がないわけじゃない。

 しかし、今のところ行動に移すほどまでの熱は湧いてこなかった。

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