ホンモノ
ある日、夢を見た。
とても懐かしくて、愛おしい夢だった。
いつか見た夢のような感覚で、デジャヴを感じた。
けれど、私はその時を思い出す事は出来ない。不用品の、私には──
──私はホンモノだ。“ニセモノ”とは違って、きちんと出来た正規品だ。
“不用品”とは違い、きちんと生きているし、成績も良い。そもそもの学習速度が違うもの!
「うーん……流石にこれは──として世に送り出せないですね……いっそ殺しちゃいます?」
ある白衣を来た男が別の男に喋りかけた。
「そうだな……殺すのも面倒だし、警察もいずれ来るだろうから前線にでも連れてゆけば良い。」
「承知しました。しっかし、最近は学習速度が遅い奴ばかり出来上がりますね~」
「失敗作ばかり生まれてもなぁ……」
「D棟の奴なんか全員ニセモノだしな……」
目の前のエレベーターには、『ここはD棟です』という案内表示。
違う違う違う!!
私は、“ホンモノ”。
誰になんと言われようと、ホンモノなのだから。
ニセモノの不用品とは違って、ホンモノなのよ!
そう!だって私は1番成績が良いんだもの!
きっとだれか違う奴の話をしていたに違いないわ。それか、私だけホンモノなのよ。
嗚呼、なんて滑稽。
自分の考えに反吐が出てくるわ。