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怒りと優しさと後悔と  作者: ぱとる
第2章 違和感まみれの世界
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第2章1話 やり直した世界

 望は光に包まれた後、ただでさえ悪い頭をうまく働かせることができなかった。ただ、漠然とした意識があるだけで、そこから何を行動しようか、という考えにまで至らなかった視界はあの教会で浴びた光と同じ白で染まっていた。


「―――――おい?―――おい、望?」


 と、誰かが望のことを呼ぶ声がする。


「―――きろよ?――まえ、ただでさえ――できるか怪しいのに」


 どこかで聞いたことがある声だ。それはたしか、もとの世界で数学の時間に良く聞いていたような?

 そこまで考えたところで声の主は望の肩を揺すりだし、


「おい、そろそろ起きて、この問題に答えやがれ」


 と、怒りをあらわにした。肩を揺すられたからなのか働かなかった頭が覚醒し、数学を教えているサングラスにマフラー、ニット帽の茶髪の男を見てから、直ぐに視線をおとし、自分のノートを見ると、一番最後にかかれていた大問6の小問4の答えを答えた。


「答えは13です」


「そりゃ1個まえの問題ダロ、今は大問7ダゾ。やっぱお前寝てたな。てことで減点しとくな」


 と、茶髪の男はあきれたようにそういい、クラスメイトは望を見てクスクスと笑っている。良く考えるとこんな応用問題、望の足りない頭で解ける訳がないのだ、大方黒板に書いていた答えと解説を書き写して次の問題に入るまえに寝落ちしてしまった感じだろう。

 茶髪の男は馬鹿な望にあきれたのか、次の出席番号の人にその問題をあててしまった。


 もう当分は当てられないことが分かったので周りを見渡してみると、前の世界とクラスの雰囲気は変わらないが、黒裂がいなかった、いったいどうしたんだろうと考えていると、小声で隣の席から


「おぃおいノゾ、どうした?次のテストはガチでやるから授業中寝ないって言ってなかったか?」


 と、あの時死んだはずの鈴木が声を掛けてきた、生きてる鈴木が話しているところを見れて、涙が出そうになったがこらえ、疑問に思ってたことを聞いてみた。


「なあ、黒裂ってどうしたんだ?」


「黒裂?あぁ、5月のはじめくらいから不登校になってるけど、っていうかノゾも知ってるよな?クラスメイトなんだから」


「―――あぁ、そういえばそうだったね、いやぁ、黒裂とご飯を食べに行く夢をさっき見てな、それで現実とこんがらがってたわ」


「えぇ?黒裂とご飯を食べに行く夢を?お前らもしかして付き合ってんの?あの、変な宗教に入ったって噂たってる子とか黒裂と仲良くしてる子ならまだしも、黒裂がいた研究所ですら行方が分からなくなってるって噂なのに?」


「――――――はぁ?そんなわけないだろ、第一、保護者ですらどこに行ったか分かってないのに何で俺が居場所知ってんだよ」


 と声を荒げて反論してしまった、その声で話していたのが茶髪の男にばれ、


「おい、お前、また減点されたいのか?」


 と、脅された。


 あらぬ誤解を掛けられたが、こっちの世界では黒裂が不登校になっているという重要な情報を手に入れられた、窓の外を見ると空が青く、蝉の鳴き声も聞こえるのでおそらく7月中頃くらいなのだろう。ということは2ヶ月くらい学校に来ていないのだろうか?


 ここまで考えたところでまた、茶髪の男が視界に入ってきた。 7月でもマフラーにニット帽の茶髪の男は元の世界でも暑い時期にマフラーやニット帽をしていたのであまり変わってないように見える。たしか元の世界では犯罪者に見えるから生徒たちから陰口で犯罪者先生と呼ばれていたはずだ。


「おい、お前心の中で犯罪者先生って思ったか?」


 ――――こちらの世界のこの男は明いての思考を読む能力でも持っているのか?


「イエ、ソンナコトカンガエテナイデス」


「思ってるよな?まぁ、お前がなんて思おうと勝手だが」


 といった瞬間に授業終了のチャイムが鳴った。


「チッ、もう終わりか、じゃあもういいや、休み時間にまで必要ないこと喋る意味もないだろう」


 と、茶髪の男がいうと、元の世界でも学級委員長だった真面目な女子が号令をかけた。号令が終わった後、茶髪の男は、


「今日の授業で分からなかったことがあれば今日の昼休みか放課後に来るように、何度も言っているが、テスト前に来ても教えんからな」


 この男は、もとの世界でもそうだったが、めんどくさがりの癖に分からなかった生徒のためにしっかりと自分の時間を使って教えるという方針のようだ。

 意外ともとの世界と人はの性格はあまり変わらないのだろうか?

 そんなことを考えながら、今日1日を過ごした。


ーーーー


 放課後、望と鈴木は誰もいない教室で駄弁っていた。


「なぁ、ノゾ、いつもはすぐ帰るのに今日はどうしてそんな落書きまみれの数学のノートを開いて――――――はっ、もしや今日の授業中寝ていたことをそこまで反省して?」


「いや、反省はしてるけど勉強はしないよ?てかするきなら、あの不審者のところ行ってるはずだろ?」


「確かに、じゃあどうして?」


「別に何もないけど、」


 と、答えると鈴木は教室の壁にかかっている時計を見て焦り、


「はっ、今日、バイトの日だ、やばい走っていかないと間に合わない、てことでバイバイ」


「おい、この学校バイト禁止じゃなかったか?」


「別にそんなこと関係ないし、てかそんなルール守ってるやつ、かなりの少数派だと思うけどね」


 そんなことをいいながら、鈴木は走って教室を出て行った。鈴木の後ろ姿を見送り、今日起こったことを思い返してみる。


 確かに大体の人の性格はあまり変わっていなかった、しかし、何か違和感があった、文字には表せないほど繊細な違いだが、すごく気持ち悪かった、こんな小さい違いならまるっきり別人になっていた方が良い気さえした。

 親や、黒裂もこんな感じに変わっているのだろうか?というか黒裂はどこへ行ってしまったのだろうか?もとの世界の赤い目の殺人鬼はいったいどこの誰なのだろうか?という疑問が次々と浮かんできて頭がおかしくなりそうだった。


 なので気分転換のために街に出て、街の様子を見てみようと思い、教室を出て後にした。

 





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