第1章2話 日常の終わり
「まぁいいや、じゃあ僕のおすすめの店で良いね?」
と、ジャラジャラ男が言った瞬間、チャイムがなった。意識してなかったが、教室の外で時間を潰していたクラスメイト達もほとんどが帰って来ていた。
「あぁ、チャイム鳴っちゃったね、じゃまた放課後ってことで」
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放課後になった瞬間、クラスメイト達が早々に部活や帰宅していくなかご飯を食べに行くのを約束した5人は教室の中に残っていた。
「で?まだ夜ご飯の時間には早いけどどこで時間潰すの?」
と、黒裂がつまらなそうにジャラジャラ男に聞いた。
「うーん、ここは無難にショッピングモールとかどう?」
「良いわね、私のとりまきは私の意見を尊重してくれるからいいけど、ノゾはどう?」
とりまきは自分の意見を無条件に聞いてくれると思ってるこの女はもう駄目かもしれない。しかし、それに何も言わない2人はどんだけ黒裂に…
と、そこまで考えたところで、黒裂はなぜか顔を赤くしながら、
「ノゾ?ショッピングモールでいいの?駄目なの?」
と、聞いてきたので、
「ああ、ごめん俺もショッピングモールでいいよ」
と答えた。
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ショッピングモールについてからは、おととい嫌な思いをしたばかりのゲーセンに連れて行かされたり、どこで制服から私服に着替えたのかわからない女子グループの買い物に付き合ったりして、時間を潰した。
「えっと、もうそろそろ良い時間だから移動しようか」
「えぇ?まだ4時30分だよ?鈴木の家ってそんな夜ご飯早いの?」
「いゃいゃ、こっから1時間ちょいかかるからそろそろ移動しようかなと思いまして、」
「…はぁ?おい、ここ町の中心だぞ?バスとか使えばどこに行くにも30分で行けるくらいだと思うんだが?」
「公共交通機関とかじゃ行けない場所にあるからね」
こいつは何を言ってるんだろうか?公共交通機関で行けないとか山の上とかにあるんだろうか?
「まぁ、行けばわかるよ」
という一言で1時間10分ほど歩かされることが決定してしまった。
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「ねぇ、どんだけ歩かせるつもり?ショッピングモール前の大通りから裏路地に入ってずっと歩き続けてるのに景色が全く変わらないんだけど」
「いゃあ、あとちょっとだよ?」
「そんなこと言って1時間くらい歩いてるんだけど…それに治安とか大丈夫なの?ほら、変なまがまがしい店とか見えてきたし」
「ん?あぁ、そこだよ僕のおすすめの店」
「はぁ?お前おかしいんじゃないの?これが飯屋?キャバクラかなんかの間違いじゃないの?」
と、思わず突っ込んでしまった直後に
「ええ?ここ?なんかピンクな店とかじゃないですよね?もしかして私たち鈴木君に騙された?」
と、普段は黒裂の言いなりになって喋ることが少ない宗教にはまったという噂が立っている少女が口を開いた。
「えぇ?そんな店じゃないよ?僕ぁここの常連だしね…まぁ、入ってみればわかるよ」
またこのパターンだ。
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店の中に入ると、外見からは想像もつかないような小綺麗な店内で、客もかなりの数入っていた。
「あら、意外と良いじゃない、あんだけ文句言ってごめんね?鈴木」
「いゃいゃ、全然良いよ、さぁ席について注文しよう」
といい、ジャラジャラ男は店の奥に入っていき、店員の人となにかを喋っているようだった『あら、鈴木くん』とか『久しぶり』とか聞こえてきたのでジャラジャラ男も久しぶりの来店だったのかも知れない。少ししてからジャラジャラ男は4人のところに近づき、
「席空いてるみたいだから移動しようか」
と、ジャラジャラ男が案内し始めた、まるでこいつが店員みたいだ。移動している時に、
「なあ、聞いてなかったけどここって何屋なんだ?」
「あぁ、言ってなかったっけ?ここは料理なら何でも扱ってるってとこだよ」
「何でも?それっておかしくないか?」
普通の飲食店なら材料とか手間とかの関係で決められた料理しか出せないと聞いたことがある、それがなんでも?と考えていたところで黒裂が
「何でもっておかしくない?やっぱりここの
怪しい店なんじゃ…」
黒裂もおかしいと思っていたようだ。
「いゃぁ、それがここは『何でも』出してくれるんだよしかも味も良い、2ヶ月くらい前シュールストレミングの煮付けを好奇心から頼んだことあるけど普通に出てきたしね」
『2ヶ月くらい前教室が臭かったのお前のせいか』
と、黒裂と全く同じタイミングで同じことを言ってしまった。
「まぁまぁ、落ち着いて、ほらあそこに座って」
と、ジャラジャラ男は2階の見渡しが良い場所の1つのテーブルを指差した。 5人でそこのテーブルに座り、座ってから1分くらいたってから、店の店員が水を持ってきたので、その時に注文まで済ませてしまおうとジャラジャラ男が言って来たのでみんなそれに乗っかり、ジャラジャラ男は麻婆豆腐、望はオムライス、黒裂はフィッシュパイ、宗教の子はカレーライス、黒裂より強い子はホットケーキ3枚とラーメンを注文した。
「ほんとに何でも頼めるのね。イギリスの郷土料理を頼んで嫌な顔されないなんて…」
確かに黒裂が注文した料理は日本生まれ日本育ちの望にはどんな料理なのかもあまり想像つかないような名前をしていた。
「ね?すごいでしょここ、それよりそっちの黒裂より強い子、意外とたくさん頼んだけどもしかして大食い?」
「お前、女子にそんなこと言うとかサイテーだぞ」
「いえ、大丈夫…です。私は大食いとかじゃないですけどこんなところに来るのは始めてでどうすれば良いのかわからなくて」
「あぁ、ならしょうがない」
と、言った瞬間ジャラジャラ男は黒裂に指を指しながら、
「ところで黒裂クン、君は好きな人はいるのかね?」
と、急に関係ない話をぶっこんできた。突然に不意打ちされた黒裂は飲もうとして口に含んでいた水を喉に引っ掻けたのか、顔を赤くして咳をしながら、
「―――なによ、あんた、セクハラ?」
「いゃいゃ、黒裂クンは望クンのことが好きなのかな?ってなんとなく思って」
「おい、お前、黒裂が俺のこと好きな訳ないだろ、て言うかこんな能力とか関係なしに呪ってきそうな女こっちから願い下げだ」
と、思わず口から出てしまった、黒裂には悪いかもしれないが、本心はどうやっても隠せない。そんなことを思っていると、黒裂はさらに顔を赤くしながら、
「あんたそれ本気で言ってんの?」
と、言ってきた。
「えぇ?やっぱり黒裂は望のことが?」
と、こんなくだらない会話をしている時に望のケータイに電話がかかってきた。送り主は母だ。母は電話してくることが少なく、してくる時は大抵何かあった時だ。そんな母からの電話なので無視するわけにもいかず。
「ごめん、ちょっと外で電話してくる」
「あぁ、全然大丈夫だよ」
「サンキュ」
という言葉を残し、店を出た。
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店を出て、少し歩いたところにある橋の上で母に折り返しで電話をかけた。
「もしもし?母さん?」
『やっと出た、スマホ依存症のあんたが全然でないから事件にでもまきこまれたかと思って心配したよ』
「ごめん、友達とご飯食べに来てて、」
『あら、それじゃあ邪魔したかしら?切った方がいい?』
「いや、大丈夫だよそれで何でかけてきたの?普段かけて来ないからなんか用事があるんでしょ?」
『寮のお金を振り込んでおいたって言うのと、…』
「ありがとう… それで、言うのと?」
『なんかあんたが危ない事件に巻き込まれるような気がして、心配になって』
「いや、大丈夫だよ、今だって元気」
『なら安心、気をつけて遊んでね』
と、言うと電話が切れた、鍵を毎日のように閉め忘れる癖に変なところで心配性な人だ。
気を取り直してあの4人のもとに戻るために、店の中に戻っていった。
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店の中に入ると、床に赤黒い液体がこぼれていた、その液体は鉄さび臭い匂いを放っていた、
「…なんだ?これ…血?」
ピチャピチャと音を鳴らしながら店の真ん中には大量の肉が積まれていたその肉の層の間に洋服や、髪の毛が含まれていて、その中には黒裂が着ていたシャツや、黒裂よりも強いという噂が立っていたとりまきの女の子の青色に染まった髪の毛が含まれていた。
それが眼に入った瞬間、とてつもない吐き気と、嫌悪感に包まれて、昼から何も食べていないのに口から何かを出そうとして胃液が出そうになった。
良く見ると肉の塊の後ろに男がいて、なにかをしていた。それに気付かれないようにそっと店を出ようとしたが、ピチャ、ピチャ、という音で築かれてしまったらしい。男は俺の目の前に出てくると、
「ほう、まだ生き残りがいたか、目的の品が手に入らなかったが、食糧は手に入って気分が良い、なのでお前だけは見逃してやろう」
と、床に広がっている液体と同じ色をした2つの目でこちらを睨みながら話しかけてくる。
「…どうした?俺の気が変わらないうちにさっさと逃げ出した方が良いぞ」
男がそういった瞬間、望は走りだし、店をとびたした。