少年とお菓子
庭でお菓子と紅茶を出していたスフレとフィナンを訪ねて来たのは…?
従者視点。
四月十一日午後十四時。
仕事の合間のティータイムを志望した主のために、私は庭で主にお菓子と紅茶を出していた。
クッキーにショートケーキ、おまけにチョコレートまで..主の好物がこれでもかと言わんばかりにテーブルの上を占拠している。
「ん~美味しい!やっぱりスフちゃんのお菓子って食べると幸せになるぅ~!」
「それは何よりです、主。」
目の前で美味しそうにお菓子を頬張る主を見ていると、作った甲斐があるなと毎度思うが、流石に二十三歳にもなって頬っぺたにクリームがついてしまってるのは子供過ぎるのではないだろうか..。
私は片手でおかわりを入れた紅茶を持ちながら、もう片方の手でハンカチを取り出し、彼女の手や頬や口元についているクリームと食べかすを拭き取りながら話を続ける。
「ほら、あちこち汚れてる。まったく..そんなに急いで食べなくても誰もとらないぞ、フィナン。」
「だってすごく美味しいんだもん、スフちゃんも食べればいいのに~。」
「私は後でつまむから、あんたはさっさと食べて仕事しろ、クソ主。」
「はぁーい、へへ..おいひぃ。」
仕方なそうに返事をしつつもお菓子に手を進める主を見ながら立っているとインターホンの音が聞こえたので、私は主に紅茶のコップを渡してから、屋敷の門の前へ向かった。
門の前に行くと、私より背の低い少年が荷物を抱えながらキョロキョロとしている。
「...貴方は?」
「..あ、えっと、僕マド・レイドールといいます!今日からこの付近の荷物の配達担当になりました!よ、よろしくお願いします!」
「こ、こちらこそよろしくねマド。私はスフレ・モノクロームです。基本荷物の受け取りは私がすると思うので、ここに来たら私をそこのインターホンで呼んでくださいね。」
「は、はい!わかりました!」
すごく素直な子だな..でも素直過ぎると逆にちょっと心配になってしまうけど..。
せっかくきちんと挨拶もしてくれたし、何か渡さなければ..。
「では改めて、配達ありがとうマド。ところで君が良ければだけど..お菓子を作りすぎてしまって..お一ついかがですか?」
「え..い、いいんですか?ぜ、ぜひ食べたいです!」
彼の承諾を得たので、私は一旦テーブルの前に戻り余っていたクッキーを袋に入れ彼の前に差し出し荷物とクッキーを交換する形で受け取った。
「あんまり美味しくないかもしれないけど..。はい、どうぞ。」
「あ、ありがとうございます..!」
クッキーを受け取った彼は嬉しそうな表情を浮かべた後、私に深めのお辞儀をしてその場から去っていった。
私が荷物を抱えながら立ち去る彼を眺めていると、突然主が後ろから抱きついてきて、言葉を洩らしてくる。
「その荷物私のー!やっと届いた!」
「これ...いったい何を買ったんだ..?」
「残念だけどこれは教えられないかなぁ..まだ秘密だから。」
「...はぁ、不安でたまらないなその言い方...。変なものだったら怒るからな。」
「大丈夫!変なものではないから!それより紅茶のおかわり飲みたーい、早くー!」
「..はいはい、クソ主。」
わがままを言う主に対して私はそう言い放った後、彼女に抱きつかれたままテーブルの前に戻るのであった。
今回は設定集に登場する、マド・レイドール君の登場回を書いてみました。
マド君可愛い。