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猫と少女

買い物に一人で向かったスフレが出会ったのは…?

四月二日午後十四時。

その日、私は主に頼まれた物を買うため一人で街へ赴いていた。


車を出す程の距離でもないので、スタスタと早歩きで街の中を移動する。


いつもは主と二人で必ず買い物等は来るようにしているのだが、今日は主の仕事の締め切りが近く、とても外出している余裕がなかったので、私一人という訳だ。


私は必要なものを売っている店を見つけては手短に選び店を出て、気づけばあっという間に頼まれていた物は買い揃え終わっていた。


「ふぅ、これで主の必要な物は集まったな..やっぱり主がいない分時間はかからなかったな..。」


二人で買い出しにいく際は、主が入らなくてもいい店にまで入り、余計な物まで買おうとするので、予算も時間も取られがちで。


彼女が稼いだお金で買うのだから良いのかもしれないが、部屋に要らないものが積み重なっている所を何度も見ているので、流石に止めることにしている。


私が物の入った紙袋を両手で抱えながら帰り道を歩いていると、近くの茂みから猫の鳴き声が聞こえてきた。


つい気になったので、私はその茂みに足を踏み入れ、奥を覗いた。


すると黒猫がおり、猫の前には水色の髪をなびかせながら座り込む少女がいた。


私にとっては見覚えがある、少女が。


「フィーレ..なんでここに..。」


「あら、スフレじゃありませんか。お買い物ですか?」


「主に頼まれた物をちょっとね..フィーレは仕事がお休みなの..?」


「お休みというかサボりですわね。主様が夜まで帰ってこないですし、お仕事も今日の分は終わってしまって暇なので猫と遊んでいたのですわ。」


「そ、そっか..。」


フィーレの主様は、私の元主様でもある。


お菓子会社の社長で、それなりに忙しい毎日を送っているらしいが..。


私はとある理由で、その人の従者を辞めた。


理由は正直語りたくもない、思い出すだけで苦しくなってくるからだ。


優しくて不器用で、目付きが悪くて人に勘違いされてばかりの主だったけど。


私にとっては大事な人、だった。


主様としても、異性としても。


けれどもう彼とは関わりたくない、少なくとも彼が望まない限りは。


望まれても、もしかしたら怖くて会えないかもしれないし、今彼の傍にはこのフィーレがいる。


私に会いたいなんてそもそも望むわけはないか..。


私がそう考えながら少し俯いていると、隣にいたフィーレが声をかけてきた。


「スフレ、顔色が悪いですわ。早く帰ってその荷物を自分の主に渡したほうがいいのでは?」


「そ、そうだね..ごめんフィーレ心配かけて..。」


「なにも気にすることなんてありませんわ。わたくしはスフレとお友達ですから、このくらいの配慮なんて問題になりませんわ。」


「それならよかった..じゃあまた、フィーレ。」


「またね、ですわ。」


私は心配してくれたフィーレとその場で別れた後、駆け足で帰り道を帰った。


暫く歩き屋敷についた私は、紙袋を持って主の部屋に向かい扉をノックして中に入る。


「ただいま戻りました、主。頼まれていた物は揃いましたよ...。」


「あ、おかえりなさいスフちゃん。..あら、顔色が悪いわね、大丈夫..?」


主はそう言いながら立ったまま紙袋を持つ私に駆け寄ると、私の頬に優しく触れてきた。


「平気だよフィナン、少し疲れただけ..。」


「ごめんねスフちゃん、人が多いところに行かせてしまって..。」


主は心配しているのか、頬に触れていた手を外し、今度はその手で私の身体に触れ始めてくる。


ぎゅっと私を抱き締め、甘えてこいと言わんばかりにすり寄ってきた。


その主の行動に見て私は甘えてしまい、紙袋を近くに置き、つい彼女を抱き締め返し彼女の腕の中に顔を埋めてしまった。


「よしよし、いい子ねスフちゃん。」


「ん...ごめんフィナン、余計な心配かけて。」


「いいのよ?だってスフちゃんは私の大事な従者で家族で..幼なじみだから、えへ。」


主に..彼女にそう言われながら抱き締められ背中を撫でられると、いろんな気持ちが込み上げてきそうになる。


昔の事も、今の事も..。


正直辛い気持ちもわいてきてしまう。


だけど、彼女の匂いや姿が目の前に映ると途端に安心ができて、辛くても苦しくても前を向こうってなれるんだ。


彼女に押し負けてしまうことが、少し悔しいけれど。


「...後から困っても、知らないからな、バカ主。」


「大丈夫よ?だって私にとって、スフちゃんと居られるのは幸せな事だから。困るなんて発想もないわよ?」


「そっか..。なら今日の夕食はフィナンの苦手な物にしようかな。」


「えー!!好きな物がいいー!スフちゃんのいじわるー!」


「困る事なんてないんじゃなかったのか...?ほんと変わった主だな...ふふっ。」


そう目の前で膨れっ面をしながら私の服を引っ張る彼女と共に私は部屋を出て、キッチンへと向かった。


そして彼女の好物であるカルボナーラとお菓子を作った後、二人で一緒に夕食を楽しむのであった。

今回は今日投稿致しました、お設定に出てくる登場人物 フィーレ・ミルートちゃんとのお話を書きました。


お設定もぜひ見て頂けたらより楽しめるかと思います(ペコリ


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