シリカ2
『いいよ、おじちゃんが次のおやつね――!?』
そういった瞬間、もう既にシリカは動き出しています。システィーナとは違い無垢な彼女には礼儀という概念がありません。
一対一の決闘や果たし合いなどと言った概念はそもそも学習していないのでしょう。
一心不乱にカイルに突進します。
「あめえよ―! パワーだけじゃ、俺には勝てねえ! 小娘が――!
カウンター・デッドリー・キル!(確定した死の反撃)――!」
絶好のタイミングで迎え撃つカイルに、経験不足なシリカは大上段から思いっきりぶん殴られました。 地面に激突するシリカ――!
痛覚を通じてシリカがそれなりのダメージをうけたことは感じとれるのですが、それさほど大きくない者でした。戦闘経験のない私でさえ激痛を感じないのは、圧倒的なステータスの差によるものか?
それとも、感覚が完全に同調し切れていないため、麻痺しているのか?
ガラガラと、瓦礫の中からシリカが立ち上がります。
『いったっーい、おじちゃん思っちゃよりやるね。 セリカだったら確実に死んでたよ』
と、ゾっとするようなことを言いながら、クツクツと笑います。
「なんでえ、聞いてねえのかよ。 おかしいなあ。必殺のつもりだったんだが!?
これは噂に聞く賢者の力ってヤツかあ? 全く面倒くさいなあ」
彼は魔族の力ではなく、賢者の力といいました。 シリカは間違いなく魔族なのですが、どういうことなのでしょう?
「しかし、こりゃあ、分が悪いな、俺は逃げるぜ、二人同時にかかってこられたらまず勝てねえしな」
『ふうん、逃げるんだ。 お母さんの手前追いかけるわけにもいかないし、残念だなあ。
おじちゃんの血はなかなかおいしそうなんだけどなあ』
危機感なく飄々と言う、カイルに、同じく緊張感のかけらもないシリカ。
システィーナもここに至っては追撃を選択しないようで、無言でことの成り行きを覗っています。
「うんじゃ、またな、おまえら、次があったら、また戦おうぜ!」
といって、カイルは飛びのいて行きました。
緊張が解けたのかシスティーナが膝をつきました。
『お母さん大丈夫? もう、私が目を離すとすぐこれなんだから』
「システィーナに近寄るなーー! セリカ!」
駆け寄ろうとするシリカに、ノアが剣を向けて立ちはだかります。
私が感じる。シリカに悪意はなかったのですが、このノアの悪意を受けて、シリカ(セリカ)の感情が黒くぎらつきます。
ノアの悪態にシリカが機嫌を損ねたのがわかります。
『へえ、ノア、あなた死にたいんだ。 私の強さ、なんとなくわかってるんでしょう?
アンタなんかが、私相手にして、戦えると思ってるの?』
私は、小悪魔のように、小首をかしげて、いじわるくノアを脅します。
「くぅ――」
シリカにはかなわないであろう想像をノアもしているのでしょう?
顔色には焦りがうかがえますし、シリカは気づいていないようですが、私に剣を向ける事への嫌悪感からか、かなりの動揺がうかがえます。
この状況――私がシリカをコントロールできればなんとかなるのかもしれません。
ですが、魔族の血が目覚めたときは決まって体の自由がきかなくなります。
今まで覚醒したのはノアとの邂逅の一度きりだと思ってはいましたが、思えば思え当たる節があるような気がします。
「おやめなさい。 二人とも、ノア下がって、セリカは自分が制御できていないだけです。
こちらに敵意はないはずです。
ですよね。 セリカ?
貴女がいつかそうなってしまうことも、私は知っていました。
セリカが戦う必要はないのです、剣を捨てて下がりなさい」
この説得シリカは――
『ふーん、そこまで言うなら、やめてあげてもいいけど、私が気に食わないのは、あのカイルって、ヤツよ。
お母さんを傷つけて―― お母さんもその傷であいつに勝てると思ってるの?
勝てるかは五部だよ。 負けたら死んじゃうんだよ。
私はお母さんが死んじゃうのはいやだなあ。
フン、ノアのことはお母さんに免じて、大目に見てあげるわ。感謝しなさいよね!』
シリカの言動はどこか幼いです。 恐らく私を通じて世界を見ているのでしょうが、魔族であることから夜型なことで昼間に活動している私を通してでは世界触れる時間が短く、人生経験も幼児並みなのでしょう?
そう言うとシリカ意識を私へと戻した。 足下がふらつく。
急に体の主導権が交代したことで、軽いめまいを覚えた。
「すまない。取り乱した。 お前が、最近ちょっと変なのには気づいていたんだが、俺にはどうしたらいいのかわからなかった。
人間じゃないとしても、俺たちは幼なじみだ。
剣を向けたことは謝るよ。すまない、セリカ!」
至近距離でそういうノアの顔を見ていると顔が赤くなっていくのがわかる。
これはシリカの感情なんだろうか? それとも……
「別に、私もおかしな事をたくさんしたと思う。そう言ってくれるだけでうれしいよ。
ありがとう」
そう言うと、ノアはバツが悪そうにそっぽを向いた。
「とりあえず、システィーナの治療をしないと」
まだ天使団と、悪魔の戦いは続いているようでしたが、私たちの主力であるシスティーナがいなくてはどうにもなりませんし、子供主導で戦闘行為を続ける気にはなれませんでした。
「そうは及びません」
たおやかな声が響き渡った、瞬間――神々しい光が舞い降り、女神エリス様が姿をあらわしました。
先週はあまりビューが伸びず、やる気は高いとは言えませんが、アップはしていきますよー。




