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冒険者とシスティーナ

 神託を命じます。彼らの化けの皮を剥がしてご覧なさい。


 女神は高圧的にそう言い放った。

 そのカリスマを含んだ。

 怒気に私は恐怖せざる得ませんでした。





 旅人達はシスティーナに、急に教会前へと呼び出された。

 これから異端審問が行われるとは冒険者たちは思ってもいないだろう。


「昨日女神マリア様より神託がありました」


 それだけで村中の人々が、慌ただしくなりはじめた。


「それでそのエリス様っていうはなんといったんですかい?」


 冒険者の中でもひときわ屈強そうなカイルという男がそう答えました。


 女神という存在を信じていないのでしょう。 心底胡散臭いという口調でした。 



「マリア様はおっしゃられました。 冒険者一同異端審問に処すると」



「ほう、俺たちは異教徒以前に、無宗教ですぜ?」



 カイルが吠える。 自分たちに降りかかる火の粉をようやく理解したらしい。



「マリア様さまは、おっしゃられました。あなた方は異界のもの達だと」



「この世界で魔界の者が見つかればどう言う目に遭っても文句を言えないことは、知っておいでですね?」



「俺たちが魔物だあ? なあ、姉ちゃん、それは、ちょっと無理があるってものですぜ。

どこからどう見れば、俺たちが魔物に見えるって言いますんで?」


「それは戦ってみればわかることでしょう、弱った魔物の化けの皮を、剥がすのはたやすいことです。 試してみますか?」


「姉ちゃん、あんたには世話になったが、女の細腕で冒険者に喧嘩売るのは酷だぜ」


 そう言うと、カイルが、戦斧ハルバートを構えた。


自信満々な覇気は――勝利を確信しているのが、見て取ることができました。

 彼からは真剣勝負にならば感じるであろう気迫を感じない。

 舐めているのだ。


 システィーナは若い、見た目からは17、8といったところの細身の女性だ。

 加えてシスターである彼女に本格的な戦闘経験があるとは思えない。


 そのことがカイルを調子づかせていることは明白だった。


 だが―― システィーナが放つ自信は、衰えることなどありませんでした。



 システィーナが奔る(はしる)。


 速い――


 上体を屈めた瞬間にはすでに、視覚には彼女をとらえることができず。

 カイルは喉元に剣を、あてがわれていた。


「私の勝利ということでよろしいですか?」


「ヒュー、かわいい顔してやるじゃないか、姉ちゃん。

 今のはなしだ。 本気で行かせてもらう」


 そういった彼から、間違いなく本気ととれる闘気の発露を感じる。

 戦斧をぶんぶんと振り回し、気合い十分、それが試合の合図となったのか、戦いは開始された。


 システィーナが動く――

 彼女の動きは目で追うのすら難しいほどの速い――

 ――だが、勝負を決めるのは何も速さだけではないのでした。


 カイルの気迫が空気を、振動させるかのごとくビリビリと痛い。

 

 彼が信じるのは圧倒的な力、パワーです。

 パワーこそ力とも言いますが、これは圧倒的な力だった。



 しかし、速さで劣る以上は、先に攻撃することはない、先手はシスティーナです。

 彼はカウンターを狙うしか勝機はない。


 奔る剣閃―― 

 が、それをあと一歩のところでカイルはそれを受け止めた。


 甲高い風切音をさせて、なぎ払われる旋風――反撃へと移る戦斧――


 ――だが、それで終わりではなかった。


 二手三手先を読むように、銀閃がたなびく!

 奔る剣戟は、しかし軽い。 流麗に流れる銀線は一撃の重さではさほどのようには見えません。


 だが、瞬間的に3回まで打ち込まれる、剣の銀光カイルは為す術がない。

 防戦一方のカイル――

 

 「くぅ、こりゃまずいな――、仕方ない。

  賭け事はすきじゃないんだが――」


 そういった瞬間カイルは思いっきり戦斧をなぎ払った――渾身の一撃。

 彼の重たい斧を、まともに受ければ、まず無事ではすまないだろう。


 しかし、その一撃でさえ、システィーナを捉えることはできない。


 いやな音が耳をつんざく、衣類が引き裂かれる音――

 

 しかし、それは、彼女の法衣を切り裂いたに過ぎない――ちぎれたスカートをはためかせてシスティーナの一撃がカイルを捉えた。


 命中すれば、当たれば無事では済まない、剣戟。

 100回打てば100回とも、カイルを切り刻むであろうそれが――


 ――弾かれた!?


 「さすがに殺してしまうのはどちらもやりすぎだと思うわね」


 短刀を構えた女性カルラが、余裕の笑みでシスティーナの剣戟を受け流していた。

 割って入ったために注視していなかったとは言え、彼女の動きが私には見えませんでした。


「先に仕掛けた(本気になった)のは彼だと思うのですが!?」


 システィーナが眉を潜めて、不服をもらすと、すぐに真剣な表情で――


「いいでしょう。次はあなたが相手ですね?」


 そう言い放った。


「カイル、分が悪いよ、引きな! このお嬢ちゃんやるわよ」


「しかしお嬢、俺はまだやれる」


「聞き分けのない子は嫌いだよ、本気でやるつもりなのかい?」


 そういったカルラはすぐに、システィーナから距離をとり、得物を構えた。


 鞭と、短剣の、二刀流――!?


妖艶ささえ感じさせる彼女の佇まいは、カルラに似合っていた。


対するシスティーナは真っ直ぐだ。

諸刃のような、敵意を隠そうともしない。

 どこか飄々としている、カルラとは対照的といえた。


「わかりました。 その余裕、打ち砕いてあげます!」


「お嬢ちゃんには無理よ!」


 先に動いたのまたしてもシスティーナだ、実直であり堅実、最短の最速の一撃――


 ――先程から二戦目だ。

 けれども、システィーナ疲れは、まるで感じさせない。俊敏な動きで、カルラへと迫る――


――閃く閃光、彼女は、踊る踊り子を連想させる。

破れた法衣がはためき、そう連想させるのだろうか。

 剣の舞、二手三手ステップとともに舞う彼女は、まるでブレイドダンサーだ。


 受けるのはカルラ、飄々と、剣戟を短剣で受け流す。

だが、それだけではない――反動で彼女も片腕をしならせると、鞭が舞う。


 システィーナはそれを、いなすように連撃を乱舞する。


 二人は互いに踊り子のようで、まるで正反対に動く。



青い法衣に、銀髪をはためかせるシスティーナを青とすれば、


赤い長髪を、頭から流すカルラは赤い。



 お互いが、ライバルであるかのように舞う二人のダンサーは、青赤、対であるように思えた。


 赤と青――正反対の、カラーが示すように、お互いの先頭パターンも正反対でありながらも、二人の息は合っているように思える。


 互いにぶつかり合っても、簡単には勝負はつかず、一定のリズムをとってぶつかり合う。


 相性がいいのではない、正反対であるが故に、紙一重で歯車が回っているに過ぎない。



 奇しくも、互いのイメージカラー正反対であり、飛び散る火花は青赤、混ざり合った紫の、光が夜の闇へと溶けていく。


突如私の中で警鐘けいしょうがなりました。


 カルラの鞭による攻撃から、ピンク色のオーラ―が出ていることに、それは、システィーナの体力を奪っているようにわたしには思えました。


 両者の実力は互角、このままの状況が続けば、システィーナは負けてしまいます。

それ自体は悔しいですが、最悪、死の危険だってあるのです。


 私はシスティーナにも、カルラさんにも死んでほしくはないのです。


「ちょっと――待ってください!」


できる限り大声で怒鳴ったけど、そんなことで二人が止まるわけが――

――止まった。 なぜだかわかりませんが、二人の動きが止まりました。


ここぞと、語りかけます


「カルラさん、その鞭から、システィーナさんの生命力を奪っていますね。 それが人の技ではないことは、未熟な私でもわかります。


 ここから、出て行ってください。 人外に与える宿はありません」


 なんとかそれだけを言い放ちました。 戦闘を止めるにはそうせざる得なかったのです。

 

 本心は二人を遠ざけたかったからに過ぎなかったけれども。

 

 これでまるく収まるようなら、御の字とおもったのです。


「へえ、お嬢ちゃん、この力が見えるのかい? よくない吉兆ね。 何かにとりつかれてるなら相談のるけど?」


 しかし、彼女が油断した瞬間をシスティーナは見逃しませんでした――


 バトルシーンと、日常シーンでは一人称が変えてありますが、最初もちょっと違う雰囲気になっている気がします。 書いてる内にこういう文体にしようかなあとか思ったので、いささか統一性が微妙な気がしますが、まあ、気にしないでくれると幸いです。

 バトルシーン本格的に投入しましたが、やっぱりテンポ良い感じにしたかったので……

この辺りからバトルシーンが多くなっていきますが、恋愛要素ももっとのこしていきたいとはおもっているのですが、加減が難しいです。 今書いている辺りまでやたらバトっています。

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