結末
同時にシリカの悲鳴が聞こえます。 痛い痛い痛い、助けてママ――、ママ――!
「全くアンタは悪趣味な事だわ。 でもこうなることを見越して、準備だけはしておいて良かったわ。 聖杯よねじれ狂え、ブルーブラッド・レブナント!(捻れ狂う、罪の炎)
私達の娘は渡さない!」
そういった瞬間、カルラの体が青く発光し、私たちの体の中へと入ってきます。
『今から聖杯の力を、私の力で受け流す。 私はお前の中へと封印されるだろうけど、シリカがいなくなることだけは防げる』
とカルラは言います。
シリカ存在が消えかけたことで沈静化し始めていた身体に再び変化が訪れます。
浄化の炎は私をより、高次元の存在へと押し上げます。
無理な身体の強化により、全身が悲鳴を上げます。
「あああああああ――!」
同時に、私の身体へと潜り込んだ。 カルラがサキュバスの娘としての私を協力に押し上げて、より高次元な魔族――リリスへと身体を作り替えていきます。
私の意識はそこで途絶えました。
暗い無意識の中に、エリス様の声が響きます。
「どうやら、失敗したようですね。 貴女はサキュバスの娘としての因子を残したまま、女神リリスへと昇華してしまったようです。
ですが、わたくしの血も三分の一程度は混ざったようなのでよしとしましょう。
問題は予想外の事態で、カルラを仕留めきれなかったことです。 貴女の中にはサキュバス――シリカともうひとり、カルラが封印された状態になってしまいました。
まあ、シリカ以前通りに、貴女と会話できるでしょうが、カルラは精神の奥底へと潜ってしまったので、貴女ごと殺さないと、仕留めることができません。
そして、今のわたくしには、愛しの我が娘、セリカを殺すことなどどうして許すことができましょうか? と、演技めいた大げさな身振りで、心底残念そうに状況を説明するエリス様。
貴女はこれから旅をなさい! 見聞を広げるのです。 その先でシリカと、にっくき泥棒猫カルラを、身体から排除する方法も見つかるはずです。
ねえ、セリカ――私のかわいい娘、女神・セリカよ、いいですね。
ふと身体を見回すと、翼が生えていました。 天使の翼ですが黒く染まっています。
恐らく魔族の血の影響でしょう。
そこでまた意識が暗く沈んで行きました。
目が覚めると、そこは教会でした。 目覚める前とは何も変わらない教会です。
私は身体を調べてみますが、翼も尻尾も生えてはいませんでした。
すべては夢だったのでしょうか?
『違うよ、私たちは勝ったんだよ、女神エリスに、アンタは女神の因子を受け継いじゃったみたいだけど、私はとママは消滅せずにすんだんだよ』
とシリカは言いましたが、痛み分けと言っていい状態でした。 結局私はエリス様を母親として、受け入れてしまったのです。
第1章はエピローグを残した状態です。 まあ、煮え切らない最後なのは最初に構想した頃からの、展開なのでいろいろと迷ったのですが、こうなりました。




