女神の思惑2
たおやかな声が響き渡った、瞬間――神々しい光が舞い降り、女神エリス様が姿をあらわしました。
私たちは、膝をつき、女神様に祈りを捧げます。
「シスター・システィーナ、そして修剣士・セリカよ、よく、魔族達を退けました」
ノアが、さりげなく省かれていますが、今回は何もしていないので、仕方がないのかもしれません。
「シスター・システィーナの傷の治療はわたくし、がさせていただきます。
治療には時間がかかりますので、しばらく身柄はわたくしが預からせていただきます」
「はい、女神エリス。 しかし、私はまだここを離れるわけには――」
そう言って、システィーナは私に心配と、申し訳なさの混ざったような視線を向けるのでした。
恐らく、シリカのこと気遣っているのでしょう。
「システィーナ、私は大丈夫です。それに女神様もついていてくれますし、しっかり休んで着てください」
私はシリカのこと以上にシスティーナの傷の心配をしていました。
シリカのことは今考えてもわからないことだらけで、改めてシスティーナに問いただす必要がありそうだと思いました。
ですが、それは大戦が終わってから考えるべき事でした。
「では、システィーナ、並びに、天使長ノエル治療を、施します」
「まってください。 私にはまだやるべき事が――」
「くどい! 一度お引きなさい、システィーナ――!」
瞬間、有無を言わせずまばゆい光に引き込まれれるように、二人の姿がかき消えていました。 女神エリス様の視線が私を射貫きます。
「さて、邪魔者はいなくなりました。
修剣士セリカよ、貴女の変わり果てた姿、女神として見過ごせる者ではありません。
説明を求めてもよろしいですか?」
「私は――私には何が何だかわかりません。 ただ、私には魔族の血が流れているような気がします。
何故かはわかりません。 母親のシスティーナはなにもにも教えてくれませんでした。
「ふむ、魔族の血ですか、それは大変ですね。さぞかしつらい人生を送ってきたのでしょう? 私は私に祈りを捧げる者であれば、たとえ半妖であっても、等しく慈悲を与えます」
修剣士・セリカ、いえシスターセリカよ、その汚れた血を、清め、わたくしに祈りを信仰を捧げる事を誓いますか?」
「はい、誓います!」
では、これを貴女に、みすぼらしいシスター服もよりもこちらの方が貴女には似合っています。
そういって、エリス様は上質な絹でできたような、法衣を取り出した。
空中に何もないのに広がったそれは、エリス様が着ているのに、よく似ているデザインだった。
強力な魔力を帯びる品であることに間違いでしょう。
しかし、今着ている物はシスティーナが娘にと手ずから作ってくれた物なのです。
とは言っても断れるはずもなく、女神エリスの衣装を手に取りました。
その瞬間、私の体はまばゆい光に包まれ、新しい衣装へと着替えていました。
「その衣が、汚れた血を、制御してくれることでしょう、うふふふ♪」
「さて、シリカよ、システィーナのことは忘れ、私の娘として過ごしてはみませんか?
あんな野暮ったいシスターより、私の方が優れている。 何せ最優秀種たる女神なのですから、さあ、わたくしをお母さんと、システィーナにさえ甘えられない。貴女の愛情わたくしに思う存分、晴らしなさい」
そう言われた瞬間あがらいがたい衝動が体の中から湧き上がりました。
なんとも言えない飢えた愛情――私の中に眠るマザーコンプレックス、システィーナを母と呼べない私の一面。
そう、なによりも飢えているのです、厳しすぎるシスティーナにも相談できない。
両親の味わいを……
しかし、女神とは言え出会って間もない他人を、母親と思えるものなのでしょうか?
「お母さん、エリス様が私のお母さんに?」
しかし、浮かび上がる感情は、意思に反して肯定的であり、操られるようにエリス様を抱きしめ、甘えます。
自分が自分ではなくなっていくと感じる側面で、強烈に愛情が満たされていくのを感じました。
恐らく、女神エリス様の特殊能力による物だと感じられます。
「うふふふ、アハハハハ――! これであなたはわたくしのものですわ。 アハハ、これでついにあの方を手に入れることができます」
女神様が何かを言っていますが、もう何も聞こえません。
私は強烈に満たされていく自分の感情を制御できずに、翻弄されるままでした。
「おい、セリカ、やめろ! おまえへんだぞ。 お前にはシスティーナがいるじゃないか!? なにやってるんだ。 システィーナを裏切るのか?」
ノアが何か言っていますが、私にはもうノアの声は聞こえません。ただ、女神様に抱きついて胸にすがっていたい、そう感じるのです。 システィーナのことがどうでも良く思えるほどに――
「やめろ! 正気に戻れ!」
そう言うと、ノアは思いっきり私に平手打ちをしました。
恐らく、別の人なら強い反発心がわくか、なんとも思わなかったのでしょう。
ですが、ノアだけは別でした。彼から向けられる負の感情は、私に明確な恐怖を与えます――彼に嫌われたくないと!
「あああ、ねえ、ノア、私どうしたらいいの……」
我に返りかかった私は錯乱し、ですが、まだどうしていいのかわからずに、ノアに返事を求めます。
「おのれ、たかが人間ごときが、邪魔をするな!」
エリス様が強烈な怒気を発すると、ノアは一瞬で、吹き飛ばされました。
それをみて、さらに正気にも取りかけた、私に、エリス様は言います。
「そんな男、母親と同じく忘れてしまいなさい!」
「はい、お母様――」
再び湧き上がるエリス様への強烈な忠誠心と愛情に、私は逆らうことができませんでした。
再びエリス様を抱きしめます。
エリス様は満足劇に微笑みながら、頭を撫でながら銀髪の髪をすいてくださいました。
その好意がたまらなくうれしくて目をほそめて、膨よかな胸に顔を埋めて、いると眠気が出てきました。 そのまま、私の意識は遠くなり――夢へと落ちていきました。
先週はビューが思いのほか延びて気分がちょっとだけ上向きです。
エリス様の名前某女神様とかぶっているので、いろいろ考えましたが、しっくりくる物がないまま書き進めたので、そのままになってしまいました。 最初はマリアだったのですが、宗教上めんどいかなあと思って変えたりいろいろ女神っぽい名前ってどんなだろうとか? 悩んだ末おもいつきませんでした。




