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まさかの三股!?

作者: 宮智沙希

俺は、しがないIT企業で働くサラリーマン、SE(システムエンジニア)だ。


2つ上の姉は、見事な大学デビューをはたし、恋愛にあけくれていたが、俺は平々凡々と学生時代を過ごし、週末は主に山本たちとつるんでいたので、姉に言わせると「彼女いない歴イコール人生」だった。


「もしかしてゲイなの?山本くんと付き合っているの?」


「女性に興味がないの?」


姉は、いろいろ言ってきたが、俺は一言、


「出逢いがない」


と、正直に答えていた。


確かに学生時代に男友達としか遊ぶことがなかったのは、反省すべきことなのかも知れないが、出逢いは突然やってきた。


派遣先のプロジェクトに参加していた一つ下の女性から、飲みに誘われたのだ。しかも、顔がどストライク。控えめに言っても、儚げな美人だ。


最初は、騙されるのか?と警戒したが、なぜか、やたらと積極的だ。とうとう俺の古びたマンションで同棲、トントン拍子に入籍。ハワイで身内だけの結婚式まであげた。


最初は、俺も頑張った。食後は食器洗い、週末は掃除。一晩にワインを二本あける嫁に付き合って2日酔いに耐えながら、出勤。


嫁は結婚式を終えるとすぐにSEを辞めた。終電帰りや、泊まり込みが当たり前のSEは、女性にはキツイ仕事だと、俺は転職するつもりなのだと思い込み、了承した。


しかし合唱サークルに所属する嫁は、退職金でヨーロッパに旅立った。1ヶ月して帰国したが、いっこうに就活する様子が見えない。


週末は、合唱のレッスンに通い、平日は在宅ワークを見つけたが、とにかく片付けができない。最初は、俺が片付けるしかないと頑張ったが、片付けても片付けても、散らかるので、馬鹿馬鹿しくなって、俺は片付けを放棄した。


子供嫌いな嫁の意思を尊重して、子供はつくっていない。本当は、かわいい姪と、従姉どうし遊ばせたり、バドミントンしたり、子供は欲しかったが、嫁ができないで、子供ができる訳もなく、彼女の気が変わるのを待ったが、四十路になり、さすがに諦めた。


そして、嫁が三十路最後の一年、見事にやらかしてくれた。態度がおかしいのは薄々勘づいていたが、


「離婚したい」と、言い出したのだ。


俺も最終手段にでた。探偵に安くはない金を払い、浮気調査をした。


結果は、まさかのまさか。さいたまの男と吉祥寺の男と、嫁の実家がある仙台の男。どれも決定的な証拠は掴めなかったが、浮気は明らかだった。


まさかの三股だ!?


離婚騒動は、半年間にわたり、俺は心労で七キロも痩せ、なにもかもどうでもよくなり、マラソンを辞めたら、七キロ太って、もとに戻った。


たまに、実家に帰ると出戻りの姉は言う。「離婚して、三十路前半の女の子見つければ、子供できるかもよ?」


いや、できちゃった婚するのしないので揉めたあげくにシングルマザーになり、姪が二歳になるかならないかで、次の男と付き合い、華々しい結婚式をあげておきながら、四年も持たずに離婚して、実家に出戻りしたと思ったら、通い妻ならぬ通い夫を実家に連れ込んでいる自由人の姉に俺の気持ちはわかるまい。


「婚カツパーティーとか行けばいいじゃない?」


「いや、ああいうところに行く女性は、年収500万以上とか理想が高いから。俺は400からあがる見込みも下がる見込みもないから」


「そんな浮気しかも三股までかけられて、あんたはいいの?」


いいのだろうか?

しかし完全な独り身になって、やっていく気力も、新しい女性を探して苦労して結婚して、穏やかな家庭を新たに作り上げる気力も俺にはない。


嫁しか女を知らないし、姉が自由人過ぎたおかげで、女そのものが、よくわからない。


一緒に飯食って、酒呑んで、テレビ観ながら、たわいもない話ができる相手がいるなら、それ以上、求めなくても、すべてを受け入れて、現状維持。


とりあえず、現状維持。


へたれと思われようとも、現状維持。


結局、嫁に惚れているんだ。

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