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35◇治療は戦いですかぁ?◇










※病気に関して出てきますが、作者は医療関係者でないので詳しくありません。全て、ファンタージーな世界観でお読みください。

※医療もの話ではありません。

※グロイ表現もあります。


~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~






いつになく真面目な顔のヒューバートさんの言葉と肩に置かれた手からその真剣さが窺えた。ていうか、大きくはあるけど女性のように細い指ががっちりと私の肩を掴んでいる。これは置くとは言わないわ。


「えっと・・・私が、ですか?」


ヒューバートさんを見上げて、出した声が思いの外震えていた。

いや、だって転移魔法使ったことないのよ、私。

どうやったら・・・


「不安なのは、わかるけどアイリにしかできないと思うんだ。・・・俺には、病気を体から切り離すなんてイメージできない。」


何時もの飄々とした様子もなく、優しい眼差しで紡がれる言葉。優しいが悔しさが隠すことなく滲んでいるのは、ヒューバートさんではどうすることもできないと自覚しているから?


「ですが・・・その、マーリンさんとかもいらっしゃるのに?」


ヒューバートさんの向こうに、並んで立つヒューバートさん血縁の一級魔術師の二人。

彼らは、魔王討伐の英雄。

緻密で様々な魔法が得意なマーリンと、生まれつき膨大な魔力を有するコリー。

国だけでなく、世界に名を轟かせる御仁を差し置いて私にお鉢が回ってくるかな?


やったことなのない人がやるよりも、確実にできる人がするべきでは?

人命がかかってることなんだから。

何かあってからでは遅い。


「正直さぁ、僕らでは無理だと思うよ。ねっ?」


そんな考えは素知らぬように、明るく言うコリーさん。

ヒューバートさんに以前聞いた話では、国家に所属する魔術師というのはとてもプライドが高い。

魔法で冒険者に敵わないなど、口にすることを意地でも拒むと聞いたことがある。

例え相手がSSランカーだとしても、純粋に魔術の腕ならば負けないと自負しているらしい。

そんな国を代表する筆頭魔術師のコリーさんは、あっけらかんとできないと口にする。

だがそれはどうやらコリーさんに限りで、同意を求められたマーリンさんは、苦虫を噛んだような口に出すのも嫌だと誰が見てもわかるほどの眉間に深い皺を寄せて小さく、本当にわずかに頷いてしぶしぶという体が見て取れるほどの同意をした。


「・・・・・・魔法をイメージで使うなんて・・・、・・・聖女、だけよ・・・」


嫌々ながらもそれでも口にする言葉は、普通の魔術師と聖女は違うということ。

マーリンさんの言うこともわかる。

でも私が聖女だということについては、後ほどきちんと話し合いが必要だと思う。


「つまり・・・、イメージで『ガン』を摘出して見せろ、ということです・・・か?」


私の戸惑いと不安を含んだ声に、ヒューバートさんとマーリンさんコリーさんだけでなく、聖堂の中に集まるすべての人が頷く。


「アイリさん、さっき貴女が聖堂に入ってくるまでわたくしたちは残された短い時間しかないと心を決めようと努めました。

でも、貴女はウィルから聞いたお母様の病気をあきらめきれないのでしょ?

貴女が扉を開けた時の強い顔にそう感じたの。確かに使えない魔法を使ってみてというのは、不安もあるでしょう。

でも、それでも、貴女に貴女だからこそ全てを託したいと思います。


リド国女王のわたくしが宣言するわ。


・・・この結果が如何であろうとも、誰にも一切の責を問いません。」


日奈子に似ているどこかふんわりとしたかわいらしさがある女王様。

でも女王という地位のためか、日奈子のようなふわふわとした雰囲気はなく凛とした美しい女性。

思いがけない形で親友の娘に会ってしまい内心複雑ではあるが、愛しいという気持ちが溢れてくる。

その女王(友人の娘)が私に日奈子(母の命)のを託した。


正直、怖いです。


その重圧が怖いが、できるのが私だけだというのならば・・・試してみよう。

ないよりも、大切な親友の娘にそこまで言わせてまだ怖気つくなんて女が廃る。

私にあるのは、幼いころからプレイしてきたゲームとラノベで培った想像力。今こそ、それを如何なく発揮さるべきなのだ。

なによりも、私自身も日奈子との再会を短い時間にしたくない。


ならば、私のすることはただ一つ。



「わかりました。・・・やってみます。」



そう腹を括ること。


グッと小さく手を握りしめて気合を入れて穏やかな顔で眠っている日奈子と向き合った。






正直私がいつもやっている魔法は、ほぼ想像力の賜物だ。

魔術詠唱もその時思いついたものが、自然と口に出ていた。

言われてみれば、ヒールと魔力を体に循環させることはクレイさんにきちんとレクチャーされたけどそれ以外は、というよりそれを教わって以来魔法について教わっていない。・・・たくさん、お叱りは受けましたが。


もともと私の魔法は、想像力というより冒険もののゲームやラノベの知識だ。

魔石に魔法付与など、その最たるもの。

それを使って、クレイさんのお家を好き勝手に改装したけど、クレイさんは最初は驚きからマジお説教をされたが、それも私の体を心配したから。

勝手をしたことは怒られなかった。寧ろ、感謝の言葉はないけど、端々で喜んでくれていたと思う。蛇口を捻るたびに、口の端が堪えきれずにニヨニヨしていたのを目撃しました。

今ならわかる、あれはやっぱり“ツンデレショタ枠クレイ”なんだわ。


ともかく、私の想像力がそのまま魔法として使える世界なら記憶を一生懸命掘り起こして発動させて見せる。


私は、最初と同じように日奈子の眠る棺のそばに座り、肩口に手をかざして集中する。

そこは最初に私がヒールをかけて小さくした病巣がある。そこに魔力を流すのだが、ヒールをかけた時とは違うのは私の想像力を基にした魔力をかけるのだ。


まずは、病気の元『ガン』の姿を想像、可視化する。

テレビドラマとかで、手術の映像を目にしたことあるけど正直リアルな病巣を想像したくない。


そこで私が思いついたのは、ちっちゃなモンスター。

雫型のRPGゲームでおなじみのスライムくん。

彼らがいると仮定する。


そうすると、あら不思議。

マークしたところに大小のスライムくんがたくさん。


集中力を切らさずに、そのスライムくんに向けて魔力を流す。魔力といっても、そのまま流すわけではない。魔力を使って腕をつくり、手には小さなナイフまでを象る。

って、想像で魔力をそんな風にできる私ってすごくない?


さて、まず魔力で作った腕を伸ばして、病巣のスライムくんをナイフでそぐように払う。


「っ!!!」


がっ、スライムくんに触れた感触は、はっきりとあるのに取れない。

まるで、暖簾押しのような手応えのなさ。

何度か挑戦するが、ナイフではだめだ。

私自身がナイフの扱いに慣れてないからか、スルリと避けられる。

仕方ないから、ナイフを消して指でスライムくんをつつく。

魔力で作った指からは、ぷよぷよした感触が伝わる。

こうなったら、力付くでやるしかない。



今度はそれを、素手で掴んで、勿論魔法の手で剥がす・・・だが、これは意外と?

本当に、力がいる。

顔に血管が浮き上がるのではないかというくらい、力を込めるがびくともしない。

しっかり掴んでるのに、むにむに暴れて指の間から逃げられる。

なんだろう、スライムくんが嫌々してるみたい?日奈子の体から離れたくないって、しがみついてる?

あっ!しかもあっかんべーされたような気がする・・・


ムッカァー


ちょっとあんた!!!

スライムくんの可愛い姿に見えるけど、それは、私が魔力で擬態可視化してるだけだからね!

本来なら、グロテスクな悪性腫瘍という体にはいいことなんて一つもない病気だからね。嫌じゃないのよ!そこから早く離れなさいよ!!

だんだん腹が立ってきた。


その怒りのためかつい乱暴に魔力を増やして、無理やり日奈子の体から引っぺがした。

思いっきりポイっと放り投げるように、実際に腕を動かしてペイっと剥がして放り投げてしまった。

そしてそれは現実にも起こったようで、マークしていた癌細胞がそこがぽっかりなくなっていた。


これなら、いける!!!


小さなガンだったけど、しっかりとした手ごたえを感じてその感触を忘れないうちに次々、がん細胞のスライムくんを掴んでは投げ、掴んでは放りを繰り返す。


自分の想像が作り出す映像に集中して、周りの人の声も物音も全く聞こえなくなってくる。

まさしく研ぎ澄まされた集中力で、数あったガンが除去されていく。


そして、どのくらいそれを繰り返したのか、気が付けば、最後の大元のガン細胞を残すだけとなった。

だが、これがとんでもなく手強かった。


今までのスライムくんが数は多いが初期レベルで倒せるものだとしよう。最後の大元のスライムくんはまさしく“キング”の称号を持つような強さがあった。

私の魔力でも、剥がせない。

魔力で作った手で引っ張ってもびくともしない。まるで動かざること岩の如し・・・

堅いからと思って叩いてみるが、その時はぷよぷよしてる。けど掴んで引っ張ると重い石のように動かない。

変幻自在のガン細胞スライムくん。

それこそ、スライムでも姿を変化して患部に巻き付くようにへばりつく、・・・まるでは〇れメ〇ルスライムのよう・・・

キングも手強いけど、はぐれは姑息だから、その両方を兼ね備えたようなラスボス(ガン細胞)

でもここで、手を緩めるつもりはない。


魔力を練り直して、こちらも両腕をもう一度魔力で変化させる。

今度こそ、武器の出番だ!

両腕には、二刀流の三日月形のソードを握らせた。

細身でありながら、刀身は短く鋭い。

シャキーンと効果音付きで大元のガン細胞、ラスボスと対峙する。


魔力の腕の件がへばり付くラスボスを切り刻む。それを繰り返すこと暫く。

気が付くと、大きかったラスボスがん細胞は、小さく弱弱しくなっていた。

それでも患部から離れようとしない。

だが今までのような力はなく、ソードを削ぐように振るとスパッとはがれた。


それが最後のがん細胞だったようで、あとにはきれいな幹部だけになっていた。

少し荒く切り刻んだ部分が、傷になっていたのでヒールをかけると修復された。


「───ふうぅ・・・」


息をするのを忘れていたのかというほど集中していたせいで、吐いた息がとても大きく出た。


そして意識が持って、周りを見渡すと周りがとんでもないことになっていた。






一面ガラスの壁、柱は美しいレリーフの彫られた白。天井もガラスと白い彫刻で高く取られていた。

明るく白い空間だった聖堂は、何があったのかというような惨状だった。


白い柱やガラスの壁に飛び散っている血痕。

同じく白い大理石のような床には、肉塊のようなものが所狭しと彼方此方に飛散って、何があったのか知らないが地獄絵図とはこのことを言うのではないかと言うような惨状。

何しろ、私たち日奈子の周りに陣取っていたオーフェン様と女王様の周りは無事だったけど、日奈子が安置されている祭壇の下は、大変なことでそこに居たみんなもそれぞれが身を縮めたり誰かに抱き着いたり震えていた。平気そうにしているのはヒューバートさん位だった。ジェフさんもアシュトンさんもさすがに震えたりはしていないが、顔色はひどく悪かった。

いつもは気丈なフィオナさんでさえ、ジェフさんの腕に攀じ登るような勢いで掴んでいる。思わず二度見したのは、マーリンさんとコリーさんだった。

よほど怖かったのだろう。抱えられるようにお姫様抱っこをされて、血肉を目に入れないように顔を相手の肩に埋め、離れてみてもわかるほど震えていた────コリーさんが。


マーリンさんが細腕でしっかりとコリーさんをお姫様抱っこで抱えていた。



私がスライムくんと戦っていた間、何があったのかしら。

まるで何かと戦ったあとのようだけど、襲撃があれば私も気が付くはずだし・・・


「アイ・・・」


「酷いよ!!!!!」


思わず見渡し目があった女王様が呼び掛けたとき、震えるような叫び声がこちらに突き刺さった

その声の主は、真っ青な顔色のコリーさんだった。


「僕は、何度もやめてって言ったのに・・・、酷いよ。次々血肉の塊を飛ばしてきて。しかも、まるで僕を狙ったみたいにこっちばっかり飛んでくるし、うぷっ、気持ち悪い・・・」


悪い顔色のまま、穏やかだったさっきまでとは違ってすごい剣幕で叫んでいるコリーさん。叫ぶために顔をあげたときに、周りの光景が目に移ったらしく再びマーリンさんに抱き着いてしまった。


ん?飛ばしてくるって・・・

それって、私に言ってたの?


傍にいたオーフェン様を見るけど、何だという顔をするばかりで何も言ってくれない。

ということは、私が原因ですか?

この惨状の?





~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~



「うわっ、ダメだ・・・。前王妃陛下の魔法がかかっている。」


「やっぱりな。この大木は特別だからなぁ・・・」


護衛に付けられた二人の騎士。

一人は年若く、もう一人は少し先輩騎士。

若い騎士が、元辺境伯令嬢のお姉様方に言われて大木に登るが、何度やっても3本目の枝に手を掛ける前にするりと落とされる。

足元が滑りすとんと、尻から落ちてしまう。あまり高くないので普段鍛えている騎士にとっては大したことではないが、何度やっても失敗するのは精神的に堪える。

それにため息交じりに、呟く先輩騎士。


「この大木は、元々集まったお子様方が自発的に登っていた大木なんだよ。それこそ女王陛下も登っていたって話だ。

子供だから、一時期だけ許されることにするために聖女様である前王妃陛下がこの大木に何か魔法をかけたって聞いたんだよな・・・」


その魔法が何かは、詳しく伝わっていないが近衛騎士の中でも王族の護衛を務めるのものには、この大木は特別なだからと聞かされていた。

若い騎士は、数日前に護衛に加わったばかりだから知らなかったようだ。

先輩騎士は、話で聞く大木に大人が登ると、どうなるか見たかったため黙っていた。


「・・・多分だが、登ることが出来るのは子供だけだろう。」


若い騎士の様子を見て、先輩騎士はそう結論付けた。

そうして大木を諦めたように並んで見上げる・・・・・・


「ちょっと!どうすんのよ!!!」


「そうよ!いくら子供だけって言ったって今まで女の子は陛下とフィオナしか登っていないのよ。」


「しかも、もう少し大きかったわ・・・」


「マナちゃんは、まだ3歳なのよ。手を滑らせたら・・・」


だが、お姉様二人は真っ青な顔で悲鳴のような声を上げる。

お姉様二人は、この大木に登ったことは無い。

二人にとって木登りは、冒険の時に出来る特権で、王城ですると言う考えはなかった。

辺境伯とはいえ、きちんとした令嬢の考えも持っていたのだ。


とはいえ、いくらお姉様が命令しても一介の騎士に王族のしかも聖女のかけた魔法を破ることはできない。


「おそらくは、大丈夫かと・・・。聖女様のことです、安全面も考えた魔法をかけているでしょうから・・・」


先輩騎士は、自信はないがそんな気がしていた。

実際に、大人が登って拒否されるのはあまり高くない高さ。落とされるが大人なら怪我をすることは無い。


「ああ、でも・・・」


「母様ぁ」


それでも、不安な声を紡ごうとした声は遥か頭上からの声に遮られた。

お姉様二人は、やっと降りてくると思い、嬉しそうに見げた後に聞かされたのは、更にパニックになる言葉だった。



「どうしよう、この子上で寝ちゃった・・・」



マナちゃん、数日前に3歳になったばかり。

今日は、朝から移動と綺麗なドレスを着たり、お城に行ったり大好きなじいじに会ったりと大興奮。


お昼すぎ、疲れも相まって睡魔に負けてしまった。





大木の頂上で・・・・












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