33◇異世界では多いほど文殊の知恵ですかぁ?◇
※病気に関して出てきますが、作者は医療関係者でないので詳しくありません。全て、ファンタージーな世界観でお読みください。
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日奈子の体を巣食う、病魔。
それは、いわゆる悪性腫瘍。
この世界には、無いという病気らしい。
私も病院へは、患者としてお世話になっていたが専門的な知識は全くない。
日奈子の体の彼方此方には、大小の腫瘍が散らばっている。転移とみていいのかな?
正直、よくない状況というのは素人目でもわかる。
根本となる病巣も、どこにあるのか分かった。
悪性腫瘍は、取り除くのが基本だ。
切り開きその部分を摘出、ということは知識としては知っている。
がっ!私は、医療関係者ではない。
知識も、漫画で読んだりドキュメンタリー番組で見たぐらいだ。
私は、ブ〇ックジャックでも赤〇げ先生でもない。
患者としてなら自慢するほど語れる話はあれど、治療する側に立ってのことはずぶの素人。
そんな私が、どうやっても人の体にメスを入れてどうこうなどできるはずがないし、やろうとも思いません。
折角、原因を見つけたのに・・・
「・・・どうしよう・・・」
思わず漏れた声。
本当に、大きな啖呵を切ったくせになにも考えていなかったというのは、あまりにもお粗末だ。
穴が入ったら入りたいどころの問題では済まされない。
何しろ啖呵を切った相手が、この国の最高峰の前国王なのだから・・・
「どうした、アイリ?」
「・・・・・・」
こぼれた私の声にアシュトンさんが心配げな声で聞くけど、ウィルフレッド王子は彼らには日奈子の病気は話していないと言っていた。だから、このことを口にしていいかの判断はできない。
「・・・・・・・・・無理、か・・・」
すぐ傍で一番食い入るように見守っていたオーフェンさんの声が虚しく広い聖堂に広がる。
それに誰もが、答えることができない。
この聖堂には、オーフェン様と女王様、ウィルフレッド王子とマーリンさんとコリーさんに、あとはアシュトンさんたちがいる。
ここで日奈子の状況を話せば、みんなに知れ渡るというわけで・・・
「あの・・・えっと、」
どう言うべきなのか口ごもってしまう。
はっきりとできないということは簡単だけど、それはつまり日奈子とは短い逢瀬しかできずに何のためにこの世界に私が生まれ変わったのかという後悔だけが残る。
せめてこの小さな転移だけでも、消せないかな?
ものは試しだ。
日奈子やクレイさんがすでに『ヒール』をかけているのは知っているが、私も試してみるだけでもいいだろう。
『ヒール』をかけて悪いことが起こらないということだけは、自信がある。
なら、今ある手数を打ってみるのも大切だ。
日奈子の手を放して肩口に手をかざす。
そこには、推測小指の爪ほどの大きさのガンがあったのを確認している。それが大きなものか小さいのかは私にはわからないが、大元のガンに比べれば小さい。
マークしたガンに焦点を当てる。
「『ヒール』」
みんなの見つめる中、かけたのは割と強めな魔力を使ったものだ。
私が知るRPGの世界のように、回復魔法は『ヒール』以外にもあるけど『ヒール』が一番扱いやすい。流す魔力の大小で、発揮する力は様々。さらには、怪我にも病気にも効くというのは、楽でありがたい。
「・・・・・・ぁっ?」
だが、その強めな『ヒール』でもガンには効き目が薄いようだ。
少しは小さく縮んだような気がするが、目視でないのではっきりとはわからない。消えていないことだけは確かだ。
全く効き目がないわけではないだろうが、小さなガンに対して消そうと思うなら、もっと魔力を消耗するだろう。それは、この全身のガンを消すには相当な魔力が必要だ。多分、1日2日でできるものではない。
「・・・・・・あの、やっぱり『ヒール』はガンに効かないのかな?」
私が臍を噛んでいると、恐る恐るかけられた声はコリーさんの弱弱しい声だった。
「まぁねぇ、いくら『新たな聖女』といってもねぇ・・・、異世界の病気は、やっぱり未知のものなのね。」
マーリンさんの声にも、悔しさが滲み出ている。
って、ちょっと待って、アシュトンさんたちの前で病気の話をしてもいいの?
そんな疑問が顔にまんま出た状態で二人を見れば、正しく受けとったらしいマーリンさんが口を開く。
「大丈夫よ、ヒューには話してあるの。冒険者としていく先々で見つけた珍しい薬草を届けるように言っていたからね。・・・どうせ、他の子にも話してるんでしょ?」
ねっと、真剣な空気感に似つかわしくない、態とらしいチャーミングな笑顔でヒューバートさんたちをみる。暗くなりそうな空気を少しでも、軽くしようとするみたいに。
その声にヒューバートさんを見れば、うんうんと頷く姿があった。
「あぁ、もしかしてそこのお子ちゃま王子が何か言ったのかしら?」
オコチャマオウジ?
王子と呼ばれる人物は、現在一人しかいない。あっ、昔の王子様は居た!思わず見た当て嵌まる人物2人。
どちらもお子ちゃまという感じではないけど?
私の視線に気が付いたオーフェン様は、思いっきり眉間に皺を寄せ、違うと声にまで出して否定された。
では、と、もう一人?と見ると、ばっちり目が合い微笑まれた。
うん、本日何度目かのうっとりするほどの色気が駄々洩れな微笑みだわ。
冗談でもこんな色気一杯の人をお子ちゃまなんて言えません。
でも私にこの話をしたのは、ウィルフレッド王子で間違えがないわけで・・・
「・・・・・・少しなら『ヒール』で小さくなりましたが、効果は芳しくありません・・・」
けど、誰がなんてそんな話は、この状況では重要ではない気がして、この人たちの前なら話していいと判断してとりあえず病状から話そう。
「そうか・・・、多少はあるのか・・・」
私に答えてくれたのは、オーフェン様。その口元が、少し綻んで見えるのは気の所為じゃないと思う。
なんの成果も見えていないのに、少し小さくなったと言っただけなのにその顔には、少しだけ希望が宿って見えた。
それは、オーフェン様が日奈子をそれだけ思っていると、死なせたくないと言う気持ちだ強いと受け取った。
それは私も同じだから、その気持ちはわかる、けど・・・
「効果があるといっても、それは転移した小さなガンに対してです。ガンは、すべてを取り除かない限り増殖して様々な臓器に移っていきます。
・・・こんな小さなものに、手こずっていては・・・」
「えっ?それはどういうことなの?」
それまで静かに居た、女王様がパッとこちらに不思議そうな顔を向ける。
みれば、オーフェン様たちもみんなが不思議そうな顔をしていた。
「・・・どういう、とは?」
「その『転移』ってなに?」
みんなの視線が今までと違う思惑で集中する中、戸惑い閊える私の声にコリーさんが結構な食い気味で気味でかぶさる。
『転移』とは?
って、そりゃガンの転移でしょ?
そう、素直に思ってことを声に出せば、矢継ぎ早に次々女王様から先を促すような質問がなされた。
それに誘導されるように、知っている限りのことをこたえるのだけど・・・
「つまり、ヒナの病気『ガン』は全身にいくつも散らばっていると・・・。元々は、胸にできたものが、胃や肺だけでなくお腹の中まで広がっていると、だから、食事も取れなくなっていたのか・・・。
だが、それを何故『転移』と?」
オーフェン様が、私の拙い説明でもある程度、理解できたのだろう。そういって声を出して、顎に手を当て考え込む。
何故と聞かれても、私が考えたのではないし、専門的分野でもない私が知るはずもない。
でも・・・
「理由は知りません。でも、体のリンパと言われる全身の連絡網のようなものや、血液を通じて広がるというのは聞いたことがあります。ほかにも広がり方はあるのかもしれないですが、私に分かるのはそのくらいで・・・」
「その『転移』した小さなガンには、ヒールが効いているんでしょ?みんなで絶えずヒールを掛け続けたらどうかな?」
私の説明で、それまで考え込んできたようなフィオナさんがそんな提案をしてきた。
「えっ?でもさぁ、聖女とクレイと医務官とで3日くらい連続でヒールを掛け続けても対して効果はなかったぞ。」
オーフェン様が言うには、もうすでに試した後らしい。
たぶんだけど、ヒールの効きに対して、ガンの広がりが早かったんだと思う。
私からも、そう言えばだれもが黙り込む。
「ならさぁ、そのちっちゃいのをとりあえずちっちゃいのだけでも、ヒールで治して・・・」
「いえ、ガンは少しでも残ればまた広がります。小さいのを取り除いても、大本が残っている限り命の危機は去りません。」
ジェフさんの提案も、その場凌ぎにすらならないもの。
折角だけど、無意味とは言わないけれど、時間稼ぎとしてもどれほどの効果が見込めるのか・・・
ジェフさんの後には、誰も口を閉ざした。
多分だけど、王女様もマーリンさんもコリーさんも、そして勿論オーフェン様もできる限りのことをしてきたはず。だから、今、二人が言ったことはすでに実証済み。私がかけたとしても、一人の力だとどれほどできるのか・・・
暫く流れる沈黙。
それは、さっきまでのみんなが希望を持って見守った沈黙と違い、沈痛した暗い沈黙だった。
「ねえ・・・」
せめて、転移していない状態で出会えたなら。
みんなも転移については知らなかったみたいだし・・・
どうして日奈子は『ガンの転移』というものについて説明はしていなかったのか、誰もがガンという病気が勝手に体に広がるという現象に驚いていた。
そんな中、漏れた呟きは意外なものだった。
「ならさぁ、その『ガン』っていうの?同じように『転移』で体外に出せないの?転移魔法で取り出しちゃえばいいじゃん?ポイッと」
そう言ったのはヒューバートさんで、医療に詳しくなく魔法とマナにしか興味がないそんな異世界的な考えだった。
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「気を付けろよ。ほらっ、太い方の枝をちゃんと掴んで!」
「うんちょっ!」
「怖くないんだぁ。すごいな、お前!」
王宮、裏庭には、代々集まった子供たちが登って遊んでいた大木がある。
庭師が密かに手入れをして、登りやすい枝を上手く残して子供たちが挑戦しやすいように調整されていた。
そこに今、煌めく金茶色の髪と碧眼の少年二人と天使な幼女が挑戦していた。
10歳の兄少年は、幼女マナちゃんに手を貸しながら手伝っていたが、9歳の弟少年は、二人を置いてスルスルと猿のように中腹まで登って眺めている。
「あっこまで、いく!」
「焦らないで、危ないよ。」
先に登った弟少年が、腰かけている横に張り出した太い枝。マナちゃんは、そこを目指していた。
真剣な顔で、腕を伸ばして足を上げるマナちゃん。それをさりげなく手助けしていく兄少年は、内心ヒヤヒヤしていた。
「キャーッ!何やってるの!!」
「危ないわよ、降りなさい!!」
そこにドレスの裾を大きく乱して走りよる、母二人。麗しい貴婦人然とした姿からは考えられない、行動と大きな声。
少年二人は、よく似ていて兄弟と間違われるが実は従兄弟である。
「「ゲッ!母様」」
少年たちの口から飛び出した言葉も、お城に来ているため、小さな貴公子のような姿だが話す言葉は、貴族らしくない。
「もう、ちょっと・・・」
焦る少年や母親たちと違って、マイペースに登るマナちゃん。
あと少しで目的地まで到達しそうです。
がっ、
「あれ?」
短い足をくいっと上げた瞬間、少し延びていた小さな枝にスカートの裾が引っ掛かった。
「あれぇ?んっしょ!」
だがマナちゃんの目には引っ掛かった枝は見えない。
まだまだ小さな3歳児。そこは、力業で無理やり引っ張った。
ビリッ!
「「キャーッ!」」
今までで、一番のキャーッ!が出ましたが、それはもう正真正銘悲鳴でした。
「やったぁ!ちゅいた!!!」
「小さいのに、すごいねぇ」
「よし、もう少しだよ上に行くか?」
お姉様方の悲鳴が聞こえないのか、子供たちは一様に到達したことを喜びあった。
更に登ろうと言う子供たちに、お姉様方だけでなく、お城の侍女や騎士たちまで真っ青になる。
「うん、いくぅ!」
だが回りを鑑みない、それが子供と言うもの。
大人たちの心配を他所に、更に上に手を伸ばすマナちゃん。
お母さんの帰りをおとなしく待つなんて、3歳幼児には不可能なことなのです。
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週一更新、がんばりますが、体調と仕事の都合で、予告なく止まることがあるかもしれません。なるべくキリがいいとこまで頑張ります。




