21◇彼女とのことをおもいだしませんかぁ?◇
私、越智愛理と大山日奈子は、小学生の時からの親友だ。
兄のいる私は、短い髪の見た目はまんま男子なゲーマー予備軍だった。
女子らしいおしゃれや恋愛に興味はなく、男子に混じってゲームの話ばかり。服も兄のお下がりばかり着るものだから『越智さんちの元気な兄弟』といわれていた。
少年漫画、冒険ものラノベの愛読書。
学校の宿題を終わらせた後は、ひたすらゲームのレベル上げに勤しんでいた。
ゲームの中でも特にRPGが大好きで、ダンジョン攻略、時間制限ありのミッションなどを嬉々として熟していた小学生だった。
そんな中、出会ったのが同じクラスで席が前後となった日奈子なのだ。
彼女は、私と違って見た目ふんわり系女子、中身は恋愛煩悩な残念美少女だった。
ゲーム好きで男子とも女子とも仲のいい私と違って、果敢に男子に恋愛アタックをする日奈子は女子に嫌われていた。
だけどある日、私と日奈子には意外な共通点が見つかり、それからは気がつけばお互い無二の親友となっていた。
かわいいフリルの付いたブラウスとふんわり膨らんだスカートで、ティーンズおしゃれ雑誌の読モと言われても違和感がない美少女の日奈子。
女子とは普通には話すのに、男子には上目使いと舌ったらずな甘えたしゃべり方、くねくねとしたりと、女子からは総すかんをくらっていた。
さらにはまだまだお子ちゃまな小学生男子にも、作ったような女の色気はあまり印象ヨロシクないらしく気持ち悪がられ避けられていた。
その様子に私は特に興味も無かったが、彼女の落とし物を拾ったことをきっかけに親しくなったのだ。
ふわふわ系あざと女子の日奈子と、男子と間違われる女子力ゼロな私。真逆な私たちの共通点、それは
─────ゲーマー
意外や意外、リア充かと思っていた日奈子は、なんとゲームオタクだったのだ。
しかも、恋愛シミュレーションゲームの・・・
「いやいや日奈子、あれはないよ。卓也君引いてたじゃん。」
「え~、でもぉ~、『恋カツ』のヒロインは、こんな感じだったよぉ~」
「だから、そのしゃべり方もやめて。キモイ。
そんな女の子がリアルにモテると思うの?いる?そんな女子?やめときな、日奈子のいいところ全部消しちゃってるよ。」
「えー、そっかぁ。・・・まぁ、ねえ、やっぱ無理があるよね?
はぁ、ゲームみたいな優しいイケメンっていないよねぇ。物語、王子様的なイケメンに傅かれて、耳元で甘くささやかれた~い。
でも、そんな男子と話すなんて私にはやっぱ無理ぃ~。」
日奈子は、その時プレイしているゲームのヒロインになり切ってしまうほど依存していた。
そんなだから、男子の色目使ってるって言われてほとんどの女子に嫌われてるけど、実際はゲームのヒロインになり切らないと男子と話せない内気な子なだけなのよね。
そのことを知ってしまえば、とってもいじらしいかわいい女の子なのだ。
だけど、なかなか本性を誰にも見せることがないせいか、恋人はおろか友達もできなかった。唯一、日奈子の本性を知った私だけが親友と呼んでもらえたのだ。
そんな日奈子だから、高校は女子校へ進学した。・・・私も何故か、同じ学校に通うことになったのは偶々だと思いたい。その学校の部活にeスポーツゲーム研究会というのがあって、第一志望校にした。偏差値もまあまあだったけど、頑張れば何とか行けると言うレベルで自宅から通えると言うことで両親からの許可もとり意気揚々と提出した。そして受験勉強、受験当日を迎え、合格発表、卒業と目まぐるしく日々は過ぎ、ゲーム三昧だった春休み後、高校入学式で隣に何故か日奈子がいた。
卒業式の時に、あんなにワンワン泣いて会えなくて寂しいと言っていたくせに、同じ高校とは聞いていない。
それが、桜咲く新しい高校でこれからもヨロシクねっ!って、同じ制服を着て満面の笑みの日奈子を見て唖然とした。
まぁ、別に別れたいわけじゃなかったけど、私の進路を聞かれ教えた時に「え〜、レベル高すぎ〜。ムリ〜」って、言われたら進路が分かれるんだろうなぁと思うでしょ?確かにあれから、受験勉強で合格するまでゲーム禁止令が出されていたから、人のことを気にする余裕が無かったけど、聞いた記憶が無いんだよなぁ。日奈子は、言ったよぉ〜ってニコニコしてたけど、絶対にあれは言っていないと私は未だに思っている。
まぁ、そんなこんなで腐れ縁というか、いつも一緒の居心地の良い親友の付き合いは長く続いた。
でも、別れは突然訪れた。
高校2年の春、日奈子は忽然と姿を消した。
日奈子が最後に居たであろう場所には、その日私に攻略法を聞いてきたゲームのパッケージが落ちていた・・・
『君と歩むこの世界 2〜eternal world』
確かこんな名前だったと思う。
その頃、日奈子の大好きな乙女ゲームの続編として出されたそれは、前半は普通の乙女ゲームのように異性との恋愛レベルを上げていくものなのだが問題は後半だった。後半は、好感度が高い人を連れて世界を救う冒険に出ると言うもの。その冒険で魔王を封印して無事帰還を果たした時に、好感度MAXなキャラとエンディングを迎えられると言う。
つまりは二部構成ゲーム。
冒険前の準備期間が恋愛重視の普通の乙女ゲーム、後半の冒険になるとRPG要素も多く含まれたレベル上げと共に好感度も上げないといけないらしい。
RPGをやったことのない日奈子は、これが上手くいかずダンジョンでもイベント重視をしたせいで必要なアイテムをゲットできずに何度もゲームオーバーをしていた。
そしてRPG大好きな私が、攻略本をもって一緒にアドバイスしながらお泊り会をやって一晩中ゲームをやり込んだ。ラスボスまでもう少しというところまで手伝って、徹夜明けに朝日がまぶしい中帰宅した。その時にコンビニに行くという日奈子に送ってもらいながら近くの角で別れたのが最後だった。
まるで神隠しのように、いなくなった日奈子。
黙っていれば美少女の彼女の失踪は、当初誘拐を想定されたけど手がかりが皆無で未解決事件と言われるものになった。
数年に一度テレビで情報提供を呼び掛けていたが、なしのつぶて。
私も一緒に探し回った。
あの時日奈子は、私があげた攻略本とゲームとスマホしか持っていなかった。
何か手がかりはないか、必死に探してコンビニ向かいの草藪にゲームのパッケージを見つけて思わず駆け出した。
最後まで一緒にいたのは、私だ!
何かの事件に巻き込まれたのではと、自宅にも学校にいても落ち着かず時間があれば探し回った。探し回っていて、疲れ切っていたのだ。日奈子の持ち物らしきものを見つけた私は、迷わず道路に飛び出した。
車が来ていることにも気が付かず私は、猛スピードの車の前に飛び出して・・・
そして、事故にあった。
幸い命は助かったが、内臓がひどく損傷して長らく入院生活をすることになった。
退院してからもリハビリの日々。
勿論、学校に通えるようになるまで半年を要して、高校は中退した。
動けるようになっても、時々痛む体を抱えてまともなに生活ができるようになったのは、事故から3年たった20歳になってからだった。
季節の節目に寝込むことが多くなった私は、復学を諦めて親戚の伝手で入社した会社で働きだした。
電話応対、伝票整理と簡単な仕事ではあったが、高校中退という学歴を考えれば正社員待遇で雇ってもらえたことは運がよかった。
たとえ小規模、家族経営の癖の強い従業員たちであっても、中に入ればどうにかやっていけた。
ただ親友という、飽きることなく一晩中語り合える友がいないことを除けば日々は単調に過ぎた。
リハビリの辛さ新しい職場に慣れるために忙しく、日奈子のことを忘れそうな日常に時々発狂しそうになりながら過ごした年月。
いつどこで、私は死んだのか?
何の因果でこの世界に転生したのか?
私がこの世界に導かれたその一端が、開いた壁一面に描かれた絵に隠されているような気がした。
読んでくださりありがとうございます。
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