18◇ヒーローの登場ですかぁ?◇
※サブタイトル変えました。
ヒーローが駆け付けました。
たくましい腕、目の前には白銅の胸当て。
鼻につく香りもよく知っている人。
確認しようと頭を上げたいのだけど、たくましい腕は腰とアイリの頭をすっぽり包み抱えている。頭を動かすことができない。
私が動くのが分かったのかさらにぎゅっと強く抱きこまれた。
あ~、いや~、ねぇ~、たすけに来てくれたのはありがたいんだけど・・・
異性の抱きかかえられるのは・・・
私には、ムリでして・・・
ハズカシ・・・なのです。
離してほしいです
・・・アシュトンさん
「お前らかぁ!僕の大切なマナを襲ったのは!!!」
周りの様子が見えないまま羞恥に身を縮こませていると、聞こえてきたのは大きな爆発音と共にヒューバードさんの怒りに満ちた声が響く。
雷鳴響かせた後に滝のような水攻撃を仕掛けているみたいだ。
ちゅどーん!バシャ~ン!!!じゅわぁっといった音が聞こえる。
落雷後、水攻撃、炎が消えて蒸発音という順番のようだ。さらにビシッとビシッと小さな音まで聞こえてくる。どんなことが行われているのか、それは想像しないようにしよう。ちなみに合間合間ギャーとかうわぁ、やめてくれ!などなども聞こえてくるけど、それも聞こえない聞こえないです。
「アイリもマナも、ってマナは寝てるのか・・・アイリは大丈夫か?」
「ちょっと、アシュっ!アイリ?大丈夫?」
ジェフさんとフィオナさんも傍に来てくれて、フィオナさんはアシュトンさんさんの腕を引っぺがしてくれたおかげで呼吸が楽になりました。
だって、あんなにアシュトンさんに引っ付いてるのは息をするのもつらい。鼻腔をを擽るいつものアシュトンさんのさわやかな香りに交じって今日は汗の匂いもする。ここまで全力で来てくれたからなのか?
でもこんなに密着したことなんてないから本当に勘弁してもらいたい。
フィオナさんに感謝です。
フィオナさんの手によって拘束から解放されて改めて頭からつま先まで怪我がないことを認めてもらった。
それにしても、この状況でマナは寝てたのか。一旦は暑くて起きたけど快適になったからまた寝たのかしら。寝る子は育つというからいいけど、豪胆なんて言葉では済まされないくらいうちの子すごくない?
「ありがとうございます。防御結界を強くしていたので大丈夫です。」
マナが無事なら大丈夫です。何しろ実際に攻撃らしい攻撃も受けていないし。さすがクレイさん仕込みの結界。今回のことで自信になりました。
にっこり笑って言ったら3人から溜息がこぼれた。
呆れているようだ。
すいません。
たいした能力もないのに・・・
「ねぇ、こいつらどうする?Aランクダンジョンに簀巻にして投げ込んでおく?それともアーミードラゴンの餌にする?いっそのことこのまま僕が炎火で炙り焼きにしてもいいかな?」
3人と確認をしているとヒューバートさんの嬉々とした声が響き振り向くと驚くことにあの悪男と悪女はいつぞやの時代の実験コントのように顔や体を煤化し服もところどころ焦げ破れていました。さらには髪は縮れて爆発して笑いをこらえるのに必死です。その2人はヒューバートさんが魔法で出した植物の蔦による拘束を受けて転がされていました。
「ぷっ、お前っそれやりすぎ?でも、ないか。」
「あははっ、いい気味だわ!どこの誰だか知らないけどうちの仲間に手を出したんだから当然の報いね」
ジェフさんは笑いをこらえようとしていますがフィオナさんに至っては高笑いをして、明らかにバカにしています。アシュトンさんは何とも言い難い渋い顔をしています。
私としてもマナがいたのにも関わらず、負傷するかもしれないような不意打ち攻撃をするような人たちをかばうつもりもないので最大限の罰を与えてやりたいです。
「・・・気持ちはわかるが、冒険者同士の私闘は、禁止だからな。ギルドの保安部に任せよう。」
アシュトンさんからまともな判断が下されました。
「え~~~っ、僕のマナにひどいことをしたのにぃ。ねぇ、マイスイート」
ヒューバートさんはするするとおんぶ紐を解き私の背中からマナを奪っていきました。
抱いた感触が変わったことでうにゃぁと言いながら目を擦って目を開けたマナ。
「ぁれぇ、ひゅーいたのぉ。もうちゅいたぁ?・・・まなちゃん、おなか、ちゅいたぁ」
マナに頬ずりをしているヒューバートさんにかまわず、寧ろべしっと音を立ててヒューバートさんの頬をはがそうとしています。
って、おなかすいたってあれだけ食べたのに・・・
「そうだね、早く帰ってごはんを食べようね」
マナの言葉を受けてヒューバートさんはさっさと町のほうへ歩いていく。
マイペースすぎやしませんか。
私のほうはというと、ほっとしたことで現在全身脱力状態です。
でもこの悪人2人の処理もあるし、しっかりしないと・・・そう思っていたらふわっと体が持ち上げられた。
「うわぁ」
「足が震えているじゃないか。町までこのままいくから」
アシュトンさんの腕に持ち上げられて、所謂お姫様抱っこをされてしまった。
間近にあるアシュトンさんの麗々しい顔。
恥ずかしさのあまり顔を手で覆ってしまった。
ムリぃ
顔を覆ってしまったけど絶対にジェフさんもフィオナさんもぬるい目で見てる。絶対に呆れてる。
「・・・こいつ等は俺らが持って帰るから、先に行っとけ」
ジェフさんの声が聞こえてそれにアシュトンさんがかけして移動する振動が伝わってきた。
折角気遣ってくれたのにこんな失礼な態度でアシュトンさん、気分を害したかな?
歩いてから全くと言って話してくれないことに不安に思って、手をそっとずらして顔を盗み見るつもりだったのに。
「どうした?」
手をずらして見上げた途端、ばっちり目が合って爽やかスマイル付きでみつめられた。
目が合った瞬間に顔に熱がこもるのが分かった。その熱は上昇してさっきの結界内の熱さが比じゃないくらい。
どうやってこの熱を冷ませるんだろう。
なんでもないです、と小さく返事をして、町でみんなに会うまでこの赤い顔を何とかしようと冷静になるように別のことを考えるのだった。
◇
町についてヒューバートさんが知らせておいてくれたのか、すぐにギルド長が出てきて件の悪人たちは保安に連れていかれた。
あの2人を見たギルド長の視線が何か言いたそうだったけど、察してもらいました。
悪人なのですからこのくらいは仕方がないと思ってもらおう。
「・・・あいつらは尋問の末に分かったが、ここのところ短期で各地のギルドで報酬強奪をしていたやつららしい。気が付いたときにはほかの町に移動していて手掛かりがなかったんだ。
見た目も魔法で変装して非戦闘員の素材集めの特別クエストを狙っていたらしい。奴らは一応戦闘員冒険者だが、実戦の経験は乏しいな、ちょっと閉鎖されたダンジョンへ閉じ込めると言ったら聞いてもいないことまでベラベラ白状してくれた」
ギルド長はあきれながら話してくれた。初めてのことじゃなかったんだ。確かに声をかけてからの連携は慣れていたもんね。
冒険者登録をする際に、冒険者としての決まりを教えてもらったけど元々冒険者は、国や団体に所属しない破落戸が多くいたこともあってこう言う問題が絶えないらしい。
勇者に憧れて冒険者になるなんて、50年前に言い出したこと。歴史はまだ短いみたいだ。
みんながみんな、ヒーローになりたくって冒険者になるのならいいのにね。
申し訳ないと思いながら、後処理については皆さんにお任せして私は、これこれからのことを考えないといけなくなりました。
カシャッカシャッ、・・・っ!カシャカシャッカシャカシャ・・・・・・!
ボールの中には卵と牛乳、砂糖が入った液体が入っている。
それを泡立て器でまぜてるんだけど、すぐに手が止まる。
昨日、怖い思いをさせたマナにプリンを作ろうとギルドに併設されている食堂のキッチンを借りているのだけど・・・
眠い
あれだけ寝たにも関わらず、夜もしっかり睡眠をとっているマナと違って、私は眠れなかった。
襲われてから、これからのこと考え出したら目が冴えてしまって・・・
以前から考えていたことだけど、私の冒険者として今行動ができるのは、アシュトンさんたちがいるからこそ。私自身には戦う力も回避する力もない。あるのは結界で攻撃が過ぎ去るのを待つだけ。攻撃、魔石を使えばできないことはないけど、人に使う勇気がない。魔獣に対しては、言い方は悪いけどゲームみたいって思ってた。現実味がないと言うか・・・
でも人に対しては、相手を死なせてしまったらどうしようって考えてしまった。
あのときだって、本当は攻撃できる魔石をもっていた。だけど使うのが怖かった。
平和ボケ日本人で、命のやり取りなんてしたことない私だから、戦闘なんてムリ。
だけど冒険者を続けるならムリなんていっていられない。マナを連れてのクエストをこなしていかないといけないんだもの。
もうすぐ、マナも3歳。
みんなに入れてもらって、独立すると決めたタイムリミットまであと僅か。
進退決めないと・・・
読んでくださりありがとうございます。
結界があるのにアシュがアイリを魔法で浮かせたのは、害意がないからです。アイリの防御結界は、害意があるとき有効なんですよ(´・∀・`)




