1◇魔物退治をしませんかぁ?◇
新しい物語です。
よろしくお願いいたします。
◇魔物退治しませんかぁ?◇
バサッッッ!!!
男は光を纏った、大振りな剣を軽いものでも扱うように鮮やかに片手で一振りし、最後まで残っていた魔獣を目映い光で殲滅させた。
魔獣は禍々しい黒い炎を身に纏った、巨大な熊のような魔獣だ。
1頭倒すだけでもでもSランククエストなのに、今回は大小合わせて3頭現れていた。2頭はまだ多少は小ぶりなのもあり魔法と剣で攻撃を繰り返してなんとか剣士達、魔術師、弓使いとさらに支援系魔法で衝撃軽減、攻撃増幅の付与をもらって何とか倒すことができたが、最後のボスらしき魔獣は強敵だった。どんな攻撃を仕掛けても、ほかの魔獣よりも甲鉄な鋼のように強靭な毛が1本1本鎧となり傷一つ付けられなかった。
そこで最後の手段として、件の扱うのは特別な力を持つ者だけが振える光る剣を用いて特別に巨大な魔獣を倒したのだ。
最後の魔獣が消えた後には、親指の爪ほどの大きさの赤黒い石が残されていた。
「あぁ?あんなに手こずらせやがった癖に、こんなもんかよぉ。」
魔獣を切り裂き消滅させた男とは別の、更に体躯の良い大男と言って良い男がすかさず赤黒い石、魔石を手に取り大げさなまでに残念がった。
「ちょっと、倒したアシュより先に獲物を手にするんじゃないわよ。ジェフのはこっちでしょ」
濃茶にところどころ赤毛まじりのまだらな髪を短く刈った大男ジェフさんは、女性のウエストよりも太い腕のこれまた大きな手でつまんだ魔石をよこから水色のまっすぐな髪を高い位置で束ねたスレンダーボディの女性にひょいっと奪われてしまった。代わりにジェフさんの手に取り上げられた魔石より半分くらいの大きさの同色の魔石が渡されて・・・
「なんだよぉ~、ひどいなフィオナ」
「これはアシュの報酬!!!」
スレンダーボディの女性フィオナさんは、魔獣にとどめを刺した男アシュトンさんにポイっとそれを投げ渡した。
「・・・フィオナ、頼むからまだ魔獣の息吹のある魔石はもう少し丁寧に扱えよ。」
まったく、と苦笑いしながら受け取るアシュトンさんは、魔獣を倒した時のような真剣な顔の時よりも幾分か緩んだやさしい顔をして、じーっとしばらく手にした魔石を光に透かして見ていた。
そして徐にこちら、私が結界を展開しているほうへ足取りも軽くやってきた。
「アイリ、すまないがこれにまた魔法付与できないか?」
アシュトンさんは、私の手にコロンと取り立てほやほやの魔石を転がす。
魔石魔法付与。
それは本来この世界にはないもの。
魔法ありきのファンタジー系ものでよく聞くあれだけど、魔石への付与はこの世界では未知のものだったらしい。
私だけができる特殊能力。それがあるからこそ、戦闘能力のない私がこのパーティにいれてもらえている。
できるか?
いいえ、できるできないじゃないんです。
やらないと私の存在価値はないもんね。
「えっと、キングスベアの魔石だから・・・んーっ、炎の魔法の増幅、水魔法の相殺・・・それにこれなら支援系、できるかなぁ・・・。
攻撃系と支援系どっちを希望しますか?」
ジェフさんは小さいといったが通常の魔獣を倒して取れる魔石は小指の爪ほどで今回のは大きいと言っていい。それに、魔獣を倒してからといって必ず魔石が手に入るわけじゃない。
今回は3頭分すべて魔石が取れたのだから幸運だった。
「出来たら攻撃もできる支援系で!」
希望を聞けばすぐに返ってくる返事。
「攻撃もできる支援系・・・アシュトンさん、具体的な希望があるんですか?」
先ほど聞いた返事が即答だったことから、何か欲しい具体的な付与魔法があるのではないかと思った。
そう思って聞き返せば、ふっと口元を緩めて目元も柔らかく微笑んで明るい声で答えてくれた。
「できたら前に付与してもらった氷の幻影魔法を、炎でこの魔石に付与してほしい。このくらいの魔石ならできないかな?」
「それって、周りに氷の幻想を見せるだけでなくその攻撃を受けたと同じだけのダメージを相手に与えた、あれ?」
「あぁ、あの魔法はすごいわよね。ほかで見たことないもの」
アシュトンさんの後ろから紺色のローブを身に着けた若草頭の男、ヒューバートさんは自身の身長よりも大きな杖を手にやってきた。
気が付けば、フィオナさんも私の横に来て魔石をのぞき込んでいた。
魔法付与は受け入れる器が大きければ大きい魔法が付与できる。上級魔法と言われる魔力を多く使う魔法は、大きい器ほどしっかり付与できるのだ。
「わかりました。少し時間をもらいますが出来たら渡しますね。ふふっ、炎でですね。新しい魔法付与は楽しみですね」
新しいことができると思うとワクワクする。
大技な魔法は、それに合わせて大きな力の魔石がいるからそうそうできない。もちろんそんな魔石は、滅多に手に入らないから失敗ができない。すんごいプレッシャーにもなるけど楽しみでもある。
「・・・ところでアイリ、マナはどうしてるんだ?」
久しぶりに新しい魔法を試せることにニマニマしていたからか、若干呆れたようににジェフさんが声をかけてくれた。
おっといけないいけない。
あまりにも間抜けな顔は、年頃の女性としてどうなのかと、気を付けないと。
「はい、マナならここにいますよ」
少し下がったところに立つ大木の傍に屈み、何もない空間の何かを手でつかむようにそっとめくり横にずらせばそこにラベンダー色のふわふわな髪をした小さな女の子マナが現れた。
柔らかな草を寝床にして横になって丸まっている、小さく可愛い私たちのお姫様。
「あらぁ、寝ちゃったのね」
今まで何もなかった空間から出てきたマナを、大人5人がニコニコとのぞき込む
フィオナさん、声大きいです。そしてマナのほっぺたつつかないでください。
「魔物と戦闘中だったってのに、さすがの図太さだなぁ」
「まぁ、この子は最初から動じなかったしな・・・」
ヒューバートさん、ジェフさんの笑いが含まれたあきれたような声に私は苦笑いしかできない。
大人5人が寝ている姿をのぞき込んで普通に話をしていても、起きる気配がない。
確かに図太いのかもしれないなぁ。
「アイリに似て強い子なんだよ」
起こそうかと私が手を出す前に横から、アシュトンさんがそれよりも早くマナを抱きかかえてくれた。
アシュトンさんは、ジェフさんほどではないけどたくましい体躯をしている。
白銅色をした鎧を付けて金髪碧眼、しなやかに鍛えられた筋肉質な体。それに加えて子供にも優しいって・・・
「さぁ、帰ろう」
眠る幼女を宝物のようにたくましい腕にかかえて、やさしく微笑むその姿はまるで魔物からお姫様を救った勇者のよう。
そうね、間違いなく勇者様なのよね。
ここにいるみんなは、かつての魔王討伐の勇者様御一行様の孫にあたる。
私とマナ以外は・・・
読んでくださりありがとうございます。
拙いお話ですがよろしくお願いします。
12時と18時にまた投稿予定です。




