運命の少女 2
「まぁ、でも、この王族の運命を見る力はあながち馬鹿にできないの。」
サーリナ様は苦笑しながらも幸せそうで。
嗚呼、王様を愛しているのだなって感じた。
「私も、こーなってるわ。あんな誘拐まがいでもね。」
「サーリナ様。」
「後悔もしてないのよ。可笑しな事にね。」
サーリナ様は一度紅茶を飲んでからこちらを見た。
「まぁ、でもそれはレイにとってどうなるかは分からないわ。」
サーリナ様はまっすぐ私を見てくれている。
きっと私の困惑をくみ取ってくれてるんだと思う。
自分も同じ状況にいたから、よく気持ちが分かるのかも。
「会ったこともないのに…それなのに…。」
「そうなのよ…会ったこともないのにね。私のことを愛してるなんてほざいたわ。あの人。」
なんか…それは…信じられないというか。
なんというか…。
急にそんなことを言われても信じられないし…頭の可笑しい人だと思う。
「本当に頭の可笑しい人だと思ったわ。」
あ、やっぱりサーリナ様もそう思ったんだ。
「でもね、こうも言ったのよ。会ってなお、君を好きになったって。過ごす時間が増えれば増えるほど、君を愛してしまうんだって。本当に恥ずかしい言葉をね…。」
サーリナ様はその当時を思い出しているのか、少し頬を赤く染めている。
可愛らしい。
「きっとリュウも…。」
「えっ?」
そういってサーリナ様はリュウ様を見る。
リュウ様は私の前に手を握ってひざまずいていた。
いつの間に!?
「あぁ、この数時間で、夢で見ていたレイを思う気持ちよりももっと愛しくなってる。」
「ふぇ!?」
「俺の運命は優しくて可愛らしくて…これ以上の人はいないと思うんだ。」
「…それ以上はやめなさいよ。リュウ。」
サーリナ様は呆れた声で止めてくれた。
本当に助かりました。
ただでさえ、いろいろと処理が追いついていないのに、さらにこんなこと言われると。
「あなた、さっきこれ以上はやめておこうっとか言っておきながらねぇ?」
「機会があるのにそれを見逃すことはしないぞ。」
「…ほんと…あなたはあの人の子だわ。」
はぁっと大きな声をはき出して眉間を押さえている。
あの、この状況をどうにかしてください、サーリナ様。
私が必死に助けを求める目線を向けていたのに気づいたサーリナ様はリュウ様に座るように声を掛けた。
リュウ様渋々という感じでまた隣に座る。
そんなリュウ様の姿にサーリナ様は再度ため息をついた。
「まぁ…その馬鹿はおいといて。一応、あなたを元の世界に戻せる方法も探しているけど…。時間がかかりそうなのよね。」
「え?」
戻る方法?
えっ、それがあるのですか?
前の世界では戻る呪文はないから諦めろって冷たく言われて終わったのに。
サーリナ様達は探してくださってるのね。
私がその事実に驚いて固まっていたのをどうやら帰れないことを悲しんでいると勘違いさせてしまったらしい。
サーリナ様が慌てたように言葉をつなげた。
「あのね、喚ぶ魔術は何故かあるけど、戻す呪文は一緒に書かれてなくてね。探させてはいるのだけど…。でも喚ぶ呪文があるって事は戻す呪文もあるはずだから!!」
「サーリナ様ぁ…。」
あー、サーリナ様が一生懸命元気づけようとしてくれている。
その姿に思わず泣きそうになる。
「…俺はレイを帰す気はないのだが?」
「それはお前次第よ。戻す呪文を見つけないってことには一切ならないわ。」
不満そうなリュウ様に対してサーリナ様も怒ったように言う。
余計なことをいうなって感じで。
そりゃあそうですよね、一生懸命元気づけようとしてるのにそれを邪魔をするようなことを言えば怒りたくもなりますよね。
本当はサーリナ様に感動していただけなのですが…。
「それに、レイだって家族があるのよ?その家族はきっと心配してるわ。」
「それはそうだが…。」
「もし、もしもレイがリュウと結婚してくれるっていったとしても、戻れるなら一度戻って話をした方が良いでしょう?」
なぜか話が進んでいるのですが…。
いやもしもの話で進んでいますがね?
でも、なんででしょう…確定で話が進められているような気もするのですが…。
私の勘違いでしょうか?
勘違いですよね?
「それに、レイが世界を行き来できるならご両親だって安心するでしょうし。」
「えっ?」
「それはそうだな。ご両親にもちゃんと俺が挨拶できるし、それにレイが妊娠した際に里帰りもできるだろうし…。」
リュウ様がぶつぶつと言っている言葉がとても恐いのですが!?
なんで妊娠なんて言葉が?
サーリナ様に助けを求めて見るが、呆れた表情でリュウ様を見るだけで…。
あっ、こちらを向いて苦笑で首を振りました…。
嗚呼、サーリナ様でも止められないと…。