宝玉の乙女 2
静かに後ろに振り返れば、綺麗な女の人が笑顔でこちらを見ていた。
この人さっきまで訓練していた人…つまり宝玉の乙女様?
「…何をするんだ?ライア?」
「えっ?殿下が可愛らしい女性に襲いかかってるのかなーって思って武器を投げたのですが?」
にっこり笑う宝玉の乙女様の手にナイフがくるくると廻っている。
もしかしてこれが跳んできた?
「大丈夫ですかー?可愛いお嬢様!」
「えっ?」
「こーんにちは!私、宝玉の乙女の一人、リィナって言います!」
いつの間にやら隣にまた違う宝玉の乙女様が立っていた。
にこにこと私を笑顔で見ている。
私も自己紹介をしようかと思った瞬間、間に黒い影が入った。
「見るな!減るだろう!!」
「ひっどーーーい!殿下ーー!!」
「何が酷い!?寧ろ、お前等の方が酷いわ!!」
どうやらリュウ様が間に入ったようだ。
リュウ様は背が高いからリィナ様が全然見えない。
「急に出てきやがって…。」
「えー。だってあの殿下がにこにこ笑顔で可愛い女性を連れてたら気になるじゃないですかー!」
「そうですわ。っで、殿下。彼女のお名前は?」
リュウ様は不満そうな顔をしてライア様から視線を外す。
そして小さく舌打ちをした。
「…どうせ、お前達聞こえていただろうが…。」
「えー?やだなぁー、そんな盗み聞きをするみたいなー。」
「…盗み聞きと同じだろうが…。」
「耳がとても良いのでね。でも、お名前は聞いてませんからね。」
ふふふっと笑うライア様。
きっと綺麗な笑顔なんだろうけど、リュウ様の背中しか私には見えません。
「…レイだ。俺の宝玉だ。」
「あぁ…。噂は聞いてましたけど…。」
「へぇー…。殿下ー。ほーんと可愛い人ですねー。」
すっとリュウ様をよけて、リィナ様が私の腕をつかんで前に出した。
そして私の頬を手のひらで包んでくる。
「ふふふ、とーっても興味をもっちゃいましたぁー!」
「ふぇ?」
「ふふふー、可愛いー。ねぇ、レイ様。私のパートナーになりませんかぁ?」
「え?」
「はぁ!?」
パートナーていう聞き慣れない言葉にはてなが浮かぶ。
パートナーっていったい?
疑問を浮かべていた私を再度リュウ様が強く抱きしめたので、ようやく見えたリィナ様達がまた見えなくなった。
なんか黒いオーラが見えるような…。
「やらんぞ。彼女は俺の宝玉だからな!」
「えー…。嫉妬が酷すぎますよー。」
「…リィナ、あまり勝手に話を進めないの。レイ様が困るでしょ?」
「はぁい。」
「殿下も。睨まないでください。」
ライア様がそう言ってはいるがリュウ様はがっしりと私を抱きしめたまま。
なので、ライア様達はまだ見えない。
ライア様はそんなリュウ様の姿を見て、ため息をついている。
「まぁ、いいです。リィナもまだ訓練中なので帰りますよ。」
「はーい!」
「では殿下、レイ様、また後でお会いしましょうね。」
「来なくていいぞ。」
「いいえ、隊長から呼ばれてますので。」
ではっと言ってライア様たちは離れていった。
っと思う。
見えないので、分からないけど。
しばらくリュウ様に抱きしめられ、数分してから離された。
ようやく違う風景が見えた。
先ほどの訓練の場所を見るが、ライア様達はもうどこかに行ってしまっていた。
「ライア達なら訓練に行ったぞ。」
「そうですか…。」
「どうせ、後で来るからな…。さぁ、次に行くぞ!」
リュウ様に再度手を繋がれてどんどん進んでいく。
先ほどまでの黒いオーラもなく、笑顔でリュウ様が進んでいくので、先ほどの宝玉の乙女達を気にしながらもついて行く私なのだった。