宝玉の乙女
王子様ことリュウ様に手を引かれ、お城内を案内される。
食堂や図書館とか…普通のお家ではないものだなぁって思いながらついて行くのだけど…。
一体、いつまでこの手は繋がれたままなんでしょうか?
「あれっ…?」
「ん?どうした??」
遠い目で楽しそうなリュウ様を見ていたのだが、気になる光景に思わず声をあげた。
リュウ様も私がじっと見つめている方を見た。
「あの女性達は…?」
「嗚呼、彼女たちは宝玉の乙女だ。」
「宝玉の乙女?」
聞き慣れない言葉に戸惑う。
宝玉の乙女?
女性達が集まって、訓練?をしていたようなので気になったのだけど。
このお城でも騎士達の訓練している場は先ほど見たし、以前の世界でも見たけど…女性が訓練している姿を見られたのは初めてだった。
だから驚いて声を上げてしまったのだけど。
宝玉の乙女って一体?
「宝玉の乙女は、この世界で最強の力を持つ女性達のことを指す名だ。」
「はぁ…?」
「宝玉の乙女は、産まれたときからずっと体のどこかしらに宝石が埋め込まれているんだ。」
「宝石が埋め込まれている…?」
なんとも信じられない。
女性の体に宝石が?
いや、この世界事態が信じられないことなんだけど…。
だからそういうことがあることもあるのかもしれないけど。
「そういう女性は多く居るのですか?」
「いや、宝玉の乙女はとても少ないな。」
「少ない…。」
確かに訓練している女性は少なく10人ぐらいだ。
とても少ない。
「少ないが、宝玉の乙女一人で一つの部隊を沈めるぐらいの力があるからな。」
「えぇ!?」
さっき見た騎士様達も強そうでしたが?
その部隊を一つを!?
どれほどの人数がいるかは分かりませんけど…多分10人以上はいるでしょう?
「ちなみにこの国の部隊は40人ぐらいが一つの部隊だな。」
「40人!?」
鍛えた男性が40人を一人で?
「この国のだからな!この国は一応大国だからな、その40人も相当強いぞ?他の国に比べてな。」
「えぇ!?」
「だから宝玉の乙女は最強と言われているんだ。」
「あんなに綺麗な人たちが…。」
遠目からみれも美しい人たちばかりなのに…。
それなのに、そんな力をもっているなんて…。
そうつぶやけば、隣の王子様は大笑いしはじめた。
「ふふふ…ははは…。美しいか…。ふはっは。」
お腹を押さえながら笑ってるんですけど…。
そんなに面白いこと私言いましたか?
「いやー悪い。美しい、確かに美しいな。」
「…なんですか?その言い方。」
「いや、なんも間違っていない。」
まだ笑う王子様を睨むように見る。
間違っていないのに、なんでそんなに笑うのかしら…。
「いやな、宝玉の乙女達は美しいよりも恐れられる存在なのだがな…。」
「えっ?」
「言っただろう?宝玉の乙女は最強の力を持っているって。故にいろんな国が宝玉の乙女を手に入れようと必死になっているのだ。」
「つまり…それは…。」
「そうだ、宝玉の乙女を手に入れるために戦争を起こしたこともある。」
「…そんな…。」
「まぁ、今はそんなこともないがな。昔、宝玉の乙女がその戦争に終止符を打ったことがあって以来な。」
宝玉の乙女が戦争を終わらせた。
それほど強いっていうことですよね?
「戦争を起こした国は宝玉の乙女に相当の痛手を受け、それ以来戦争は起きない。っが、宝玉の乙女を自国に取り込もうとする動きは今でもある。」
「はぁ。」
「まぁ、そんな宝玉の乙女はな、国の力になると同時に敵にもなりうる存在だ。彼女らは感情のない兵器ではない。感情のある人間だ。彼女らの機嫌を損なえば国が終わるかもしれない存在だからな。」
「…はぁ。」
「故に、恐れられる存在でもあるんだ。いや、むしろ恐れられる存在の方が強いか。」
「…それは…なんとも身勝手ですね。」
そういえばリュウ様は面白そうに笑う。
…なんでこんなに笑うのか、この人は…。
「身勝手とは?」
「いや、宝玉の乙女様達は別に望んでそうなった訳ではないのに、勝手にもてはやされながらも恐れられるなんて。」
以前の世界の私の扱いのようで。
私だって、あの世界に行きたくて行ったわけじゃないのに。
帰してくれるなら帰して欲しいのに。
帰してもくれないし、それに黒は不吉だって言われて雑に扱われ。
本当に理不尽だったと思う。
今思えば。
「…恐れる気持ちは分かります。でも、その力を理不尽に使った宝玉の乙女様達はいるのですか?」
「いや、そんな宝玉の乙女がいたとは聞いたことがないが。」
「なら、本当に身勝手ですね。周りの人たちは。あんなに綺麗な人たちを。」
姿も美しいけど、心も美しい人たちだと思います。
だって、今まで長年そんな理不尽を受けながらも力をそれに使わなかったなんて。
私にもし力があれば…以前の世界で私はきっと力を使っていたと思うから…。
「俺の宝玉?」
リュウ様が心配そうに私の顔を覗き込もうとした。
それほど私は暗い顔をしていたのだろうか。
心配掛けて申し訳ないと思い顔をあげようとした瞬間。
リュウ様の顔ぎりぎりになにかが通った。
そう何かが通った。
「ひぃ。」
「っち!!」
通ったものを見ようとして後ろを振り返ろうとすれば、大きな舌打ちが聞こえたような気がした。