異世界と異世界
「それで、レイ。あなたが異世界に召喚されるのが二度目と言っても、この世界は初めてよ。」
「あっ、はい。」
「あなたがいた世界に魔術はあったかしら?」
「私が元いた世界にはありませんけど、前の世界では…。」
とりあえず菫のこととかは触れずに前の世界についてだけ簡単に説明した。
魔法やら魔獣やら。
「なるほど…。基本的なものは同じようね。」
「サーリナ様?」
サーリナ様、しばらく考えた後、にっこりと微笑んだ。
嗚呼、やっぱり美しい。
サーリナ様は再度、転がってる男性…王子様の方を向いて睨むように見る。
「馬鹿息子、起きてるのでしょう?」
冷たい声でそう呼びかける。
すると先ほどまで微動だにしなかった王子様はゆっくりと起き上がった。
「おー。母上、本気で殴るのやめてくれ。」
首あたりを押さえながら王子様が立ち上がる。
やっぱりサーリナ様の息子さんも綺麗だ。
最初はただのイケメンだと思ってたけど、気品もある。
まぁサーリナ様よりは男っぽさからか綺麗と言うよりはイケメンなんだよね…。
「レイをとりあえずこの王宮だけでも案内しなさい。」
「え!?」
サーリナ様の言葉に驚いた。
え、なんで王子様自らが!?
いや、というか悠長にお城の案内なんかいいのですか??
私、一応異世界のものですし!!
「いいのよ。とりあえず、今、私の夫がレイに対してどうするか対策を考えてるはずだから!」
「えっぇ?」
「それにこの馬鹿息子にレイは召喚させられたのだから、その責任は取らなければならないわ!」
「責任って…。そんな。」
責任などは別に。
以前の世界では、お荷物扱いで…。
「いいえ!あの馬鹿な息子のせいであなたの人生可笑しくなってるんですからね!」
「あっはい。」
サーリナ様の勢いに思わず頷く。
いや、サーリナ様が言っていることはまっとうなことなんだけど…。
それは分かってるけど、以前の世界で過ごしてから常識が可笑しくなっていると思う。
「さぁって。」
「きゃあっ!」
またも私の体が宙に浮く。
イケメン王子に抱き上げれている。
「おろして、おろしてくださいいいい!!」
じたばたと暴れるがなかなか降ろしてくれない。
なんで、なんで降ろしてくれないの?!
「リュウベルト!!」
「…はぁー。ようやく会えた運命なのに。愛でることも許されないとは…。」
「相手が許可したなら良いけど、相手が拒否してるのに無理矢理は許されないわ。」
サーリナ様に怒られて、王子様渋々私は降ろされた。
うぅ、びっくりした。
なんでこの人毎回私を抱きしめたり、抱き上げたりしたがるのだろうか…。
じっと王子様を見ていると王子様は私を見て幸せそうに笑う。
「ひぃ。」
「怯えてるじゃない!!」
「えぇ!?」
美形の笑顔は恐いです。
前回の世界である意味トラウマになってるんです。
前回の世界で暴力を振るわれるときに笑顔でしてくるイケメンがいたもので…。
あと最後のあの穴に落ちるときも笑顔の美形が私を見てて…。
ああ、もうトラウマです…。
「大丈夫よ。レイ。さっき言ったように、あなたに誰も危害は加えさせないから。もちろんこの馬鹿息子もね!」
「サーリナ様ぁ…。」
「失礼な!俺は絶対に俺の運命を傷つけないからな!」
「煩い!とりあえず、レイ。あの馬鹿に案内してもらって。本当は私が行きたいけど…。」
「なっ!母上でも、俺の宝玉を案内するという大役は譲れないぞ!」
「…馬鹿息子が煩いし、私もそろそろ夫の方に合流しないとだから…。」
申し訳そうなサーリナ様に気になさらないように声を慌てて掛ける。
王女様は忙しいのに!!
しかもきっと夫っていってたから王様にだろうし、それにさっき王様は私の対応をどうするか話し合ってるって言ってたし!
それって結局私の話ですよね?
申し訳ない気持ちなってしまう…。
「リュウ、ちゃんとレイを案内するのよ?」
「分かってる。これから俺の運命が生活するのだから、不便なことがあったらいけないからな!」
サーリナ様は不安そうに私たちを見ながらもため息をつき、目を閉じた。
「さぁ、俺の宝玉。いくぞ!」
「ぇ、ぇ、ぇえ?」
王子様に手を握られて、どんどんと部屋を出た。
「はぁ…。あの馬鹿息子め…。何事も起きなければ良いけど…。」