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覚醒

恐怖と絶望を感じたあの瞬間。

死ぬかも知れない。

本当にそう思った。



「足は震えて、立てなくて、今にも魔獣は襲いかかりそうで。」



本当に恐怖を感じた時には悲鳴もでなくなって。



「嗚呼、これじゃあ、ウィルも私も死んでしまう。」



そう思った。

もう目の前の魔獣は飛びかかってきそうで。

ガタガタ震える私を庇うようにウィルが立って。

ウィルもガタガタ震えているのに。

嗚呼、ウィルが死んじゃう。

死んでしまう。



「助けないとって思いました。」



自分もさっきまで死んでしまうって思ってたのに。

怖がっていたくせに。



「助けたい、助けなきゃって。そう思ったんです。」



さっきまで震えていたのに。

不思議と震えは止まっていた。

自然と魔獣の前に私は立ちました。

襲いかかってくる魔獣の前に。

後ろでウィルの声がしました。

私のことを呼ぶ声が。



「その瞬間でした。私が覚醒した瞬間は。」



体の奥底からとても熱い力が湧き上がってきて、私はいつの間にか手に大剣を持ち、魔獣の鋭い爪を受け止めていました。

そして、今までしたこともないような動きが勝手に出来て、いつの間にか魔獣は倒れていました。

私の前で。



「なにが起きたか、分かりませんでした。」



でも、これで助かったんだって。

ウィルを助けることができたんだって思いました。

そしてウィルの無事を確認しようとウィルの方を向いた時。



「私は絶望しました。」


「えっ?」


「ウィルは、あいつは、私を化け物を見るように見ていたんです。」


「えっ、そんな・・・。」


「嗚呼、やっぱりレイ様は違いますね。」


「えっ?」


「いえ、今はそれを置いておいて・・・でも、その反応は今、思えば普通のものなんです。」



ウィルが化け物を見るように私を見たことも。

仕方がないこと。

そういうものであるってことを今の私は知っている。

でも、あの時の私は知らなかった。

だから、絶望した。

ウィルが・・・私が守りたかった人が私を怖がっているという事実に。

信じられなかった。

だから私は手を伸ばしてしまった。

手を掴んでもらえると信じて。

ウィルに大丈夫と手を伸ばした。



「でも、その手はあいつに払われてしまった。」



そしてあいつは言ったんです。



「『バケモノ』っと。」


「そんな!!」


「多分意識なく言った言葉だと思います。でも、その言葉は確かにあいつが思った本音。」



その言葉を聞いた後のことはよく覚えていない。



「泣きながら家に帰り、その後はずっとあの村を出るまでは部屋に引きこもって過ごしました。」


「村を出るまで?」


「はい。私が宝玉の乙女と噂を聞きつけたサーリナ様がやって来てくれて、私をあの村から連れ出してくれたんです。」



そう言うリィナさんは幸せそうだった。

先程までの辛そうな表情が消えて。



「という訳で私はあいつが死ぬほど嫌いで、あいつに会うことが死ぬほど嫌なんです。」



リィナさんの絶望はどれほどのものだったのだろうか。

愛していた人を守る為に覚醒したというのに。

その人から怖がられ。

そして罵声までも。

どれほど辛く、悲しかったことだろう。



「宝玉の乙女の覚醒とは良くも悪くも周囲を変えるんです。」


「リィナさん・・・。」


「私は今は宝玉の乙女になれて良かったと思ってます。」


そう言うリィナさんは優しげに微笑んでいた。


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