異世界の美女様
「こっっっっっの馬鹿息子がああああああああああああああああああ!!!!!」
「ひぃ!!!!」
意識を失なった私は女性の怒鳴り声で目が覚めた。
目が覚めた私の目の前にはイケメンのドアップで声にならない悲鳴がまた出てしまった。
逃げたいって思うのに、体が動かない。
なんでなんでと目線を動かせば、何故か私の体はがっちりと抱き込まれている。
誰に?
男に。
このイケメンに!!!
なんで、どうして?
私は暗い穴に落ちて…そして…。
「あ、れ?」
私はなんで生きてるの?
アレは罠で…。
それにハマった私は死ぬはずじゃ…。
「俺の運命!目が覚めたか!?」
「ひぃ!!」
私の声に反応したイケメンがこちらを見る。
「あの、下ろして…。」
「…。」
イケメンに頼むが反応がない。
目線は確実にこちらを見てるのに。
「…ぃんだ。」
「えっ?」
何か話しているけど小さすぎて聞こえない。
恐いけど耳を澄ませてみる。
「なんって可愛いんだ!!俺の宝玉は!!!!!」
「みみゃあああああ!!!!!」
先ほどよりも強く抱きしめられて、すりすりされるんですけど!!
恐い恐い恐い恐い!!!
何これ!??
恐すぎる。
怯えに怯えていると、急に私の体に自由が戻った。
「ごめんなさいね。馬鹿息子が。」
笑顔の美人さんが目の前に現れた。
そして何故か、イケメンが倒れている。
「あっあの。」
「大丈夫、あなたに危害は加えないから。それは約束するわ。」
いや…そういうことじゃなくて。
いや、そのそれも大事なんですけど…。
何が何だか分からなくて、頭の中が真っ白になっている私の美人さんが握って椅子に座らせられる。
落ち着いて周りを見れば、なんか豪華そうなものがたくさんある。
というか…なんだろう部屋もお屋敷?ううん、お城みたいな…。
「ふふふ、ここはエルーマ国の王宮よ。」
「おし、ろ?」
えっ、やっぱり…お城。
お城なの?
なんで、私は…。
もしかしてここは…。
「あなたの予想通り、異世界よ。」
にっこり笑顔の美人さん。
嗚呼、美人の笑顔って本当に美しいなぁ…。
「私はこの国の王女。サーリナよ。よろしくね。」
「王女様…。」
…なんとなく分かってたけど、やっぱり王女様でした!!
だって、だって王宮って言ったたし、美人だし!!
高貴なオーラがあるし、美人だし!!
とりあえず、美人だし!!
そんな美人さんに私は手を握られて、覗き込まれる。
あれ、美人さんは良いにおいがするんですね!!
「あなたの名前は?」
「私は、澪、レイです。」
「レイね。」
嗚呼、美人さんが嬉しそうに私の名前を呼んでくれる。
手を握られてるだけでも緊張するのに、呼ばれたらさらに緊張する。
それほど、王女様、サーリナ様は美しかった。
今まで菫っていう綺麗な人を見てたけど、サーリナ様は菫以上に美しくて。
何をしても絵になる人だ。
女神様って言われても信じられるぐらい。
それほど美しい人。
その美しいサーリナ様は悲しげに私を見た。
「ごめんなさい。レイ。」
「ぇっ…?」
「あなたは、私の馬鹿息子に召喚されてしまったの。」
「息子?」
「そう、さっきまであなたを片時も離さなかった馬鹿な男。そこに転がってる男よ。」
サーリナ様は冷めた目線を転がっている男性に向ける。
その目線は実の息子に向けるものじゃないように思えるのですが…。
「名前をリュウ、リュウベルトというわ。一応この国の王子様よ。」
「王子様…。あの、王子様がなんで召喚なんて…。」
召喚うんぬんに関してはもう驚きません。
二度目ですし。
前の世界で聖女やら魔王やら魔獣やら魔術やらに関しては知ってますし。
なんとなく同じような世界的なものだと思ってます。
でも、なんで王子様が召喚なんて…。
以前の世界は魔王を倒すために聖女を呼ぶために力をもった魔術師達が集まってしてましたし。
「あら、レイはあまり驚かないのね。」
「…あの…私…。」
不思議そうな顔をするサーリナ様。
私はどう説明すれば良いのかが分からなくなってしまう。
素直にいっても言いのか…。
だって以前は簡単に相手を信じて依存して裏切られたから…。
サーリナ様は優しそうな人だけど…でも、また……。
少し考えて答える。
「慣れていますから…。」
「慣れてる?」
「…二度目なんです。異世界に行くの…。」
「え…?」
サーリナ様は驚いてこちらを見たが、私の表情を見て、何も言わずに静かに目を閉じた。
「…そんな顔をしないで。大丈夫、聞かれたくないことを聞くほど野暮ではないわ。」
「…サーリナ様…。」
「まぁ、異世界が二度目なら落ち着いていても可笑しくないわね。」
苦笑しててもサーリナ様は美しかった。