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恐怖

「まぁ、アデル様の凄さはおいといて。リュウ様、レイ様は今、さっき話を聞いたばかりなんですよ?ただでさえ混乱してらっしゃるのに。」


「あっ、そう、だよな・・・。すまない、レイ。」


「いえ、あの・・・。」



リュウ様が申し訳なそうに謝ってきてくれるが。

正直、アーニャさんがすぐ助けに入ってくれたし。

気には全然してないんですが。



「でも、俺はレイに危険な橋を渡ってもらいたくはない。」


「リュウ様。」


「もし、レイに何かあったとしたら・・・。俺は。」


「それは私もです。レイ様。」


「アーニャさん?」


「宝玉の乙女になることがそれほどのものとは知りませんでした。今まで何故、新たに宝玉の乙女が出てこないのかを考えることもなかったので。」



アーニャさんは困ったように眉を寄せてる。



「私たちは今まで宝玉の乙女は産まれた時から宝石をもっている。それが常識で、それ以外はないと思っていましたから。」


「それが急に生まれ持っていなくても宝玉の乙女になれるなんて。きっと本当にごく一部の者しかしらないことだからな。」


「そんな話を私みたいな部外者にしても良かったんですかね・・・?」


「いや部外者ではないだろう!!俺の運命なのだから!」


「ああ、もう!それは置いといて!!」



リュウ様が興奮してまた私に詰め寄ってくるのを、またアーニャさんが間に入って止めてくれる。

しかも今回はリュウ様の腹に拳をめり込ませて。

リュウ様結構ガッツリ入ってるからか、苦しそうにうめいてますよ!?

いいんでしょうか?

まぁ、アーニャさんだからいいのかな?



「レイ様は部外者ではありません。むしろ当事者です。」


「えっ。」


「お忘れですか?アデル様はレイ様が宝玉の乙女になるのを見たと。レイ様、あなたがです。」


「私が・・・。」


「先ほども言いましたが、私は、いえ、リュウ様もですが、レイ様が危険なことになるならレイ様が宝玉の乙女になることは反対です。」


「アーニャさん。」



アーニャさんはまっすぐ私を見つめてそう言ってくれる。

私を心底心配しているって表情が伝えてくる。

アーニャさんは私が宝玉の乙女になる方法をとることで死んでしまうかもしれない未来を心配しているんだ。

それは今、アーニャさんの拳に苦しんでいるリュウ様も。



「でも、それは私たちの気持ちだけです。これを決めるのはレイ様自身ですから。」


「私が。」


「はい。リュウ様も、あなたの気持ちを伝えることはしても、無理矢理魔術を使ってレイ様を止めるなんてことは絶対にしてはいけませんよ。」



アーニャさんはしっかりとリュウ様を見てそう言う。

そんなアーニャさんの言葉をリュウ様は何も言わずに受け止めているようだった。



「レイ様。レイ様が決めることです。どうかレイ様の心で決めてください。」


「私は・・・」



アーニャさんが深く礼をする姿を見ながら考える。

私は一体どうしたいのか・・・。

宝玉の乙女になりたいのか?

私は・・・。



「私はまだ分かりません。強くなりたいとは思っています。それに宝玉の乙女様たちにあこがれもあります。」


「レイ。」


「でも。」


「レイ様?」



宝玉の乙女様たちみたいにはなりたい。

なりたいけど。

でも。

でも・・・。



「死んでしまうのは怖い。」



死んでしまうかもしれない。

それは怖くて仕方がない。

正直、師匠たちの話を聞いていて怖くて仕方がなかった。

身体が震えないようにするのに必死だった。

まだまだ私の心は弱いのだなって感じた。

でも、やっぱり死ぬかも知れない、そう言われると怖い。



「私は以前の世界で、何度も死んじゃうかもって思うことはあった。」



魔獣っていうのに襲われたとき、誰も助けてくれなくて必死に逃げた。

食べ物も満足に食べれなくて、お腹がすいてるし、暴力も受けてどこもかしこも痛かった。

でも逃げないと死んじゃう。

だから必死に逃げた。

何度も何度も。

そのたびに今回は死んじゃうかもって思うこともあった。

怖くて怖くて。



「あの瞬間はずっとずっとトラウマのように覚えているの。」



死を直面した時、手足が冷たくなって。

でも、なんとか生き残れた。

運が良くて生き残れた。

生き残れて、今この世界で生きていくことができて。



「この世界では誰もが優しくて、死を感じることは少なくて・・・。でも、でもね。今もあの恐怖はしっかりと覚えているの。」



冷たくなるあの瞬間を。



「怖い。怖い・・・。だから、私は分からない。」




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