希望
「そんな・・・嘘・・・。」
「嘘じゃないよ。本当だよ。」
「レイが初代様の生まれ変わり?」
「って言われてただけだけどね。」
「でも・・・それほどの力を?」
「うん。そう言われていたよ。」
「だって、今までどんなに願っても、そんな未来。」
「ああ、そうだね。いつだって僕たちの宝は死に、そして悲しみに暮れた君が見えていた。」
そう、何度も何度も見た。
辛い未来を。
僕らの宝・・・リュウは死んでしまう未来ばかり。
「でも・・・でも・・・その未来は?」
「まだ確実ではないね。レイちゃんは今も迷ってる。」
「・・・そうよね。」
「でもね、確実に前よりは良い未来が産まれたんだよ。」
そう、リュウが生きていく未来が。
「レイちゃんは僕らの光だよ。レイちゃんが来てから、一切リュウが死ぬ未来が見えなくなったんだから。」
「・・・本当に?」
「うん。あぁ、もちろん、レイちゃんにリュウの神託については一切話してないよ?」
「それは当然よ。レイは私たち、いえ、この国、世界には一切関係ないのだから。巻き込まれることなんて・・・」
「うん、サーちゃんがそう言うだろうと思って言ってないよ。」
「それならいいわ。」
サーリナはそう言うと振り返り、部屋から出て行った。
その代わりに入ってきたのは黒い影。
「アデル様。」
「あぁ、ルディ。お帰り。」
「はい、ただいま帰りました。」
「お願いしてたものは?」
「はい、こちらに。」
黒い影はすっとアデルに近づき、頑丈な箱をアデルに渡した。
アデルは笑顔でその箱を見つめ、少しの魔力をその箱に注ぐと、箱は自然にカタリと音を立てて開いた。
「これが。」
「はい、これが初代宝玉の乙女の宝石の欠片です。」
「綺麗な黒だね。」
「はい。」
小さな小さな欠片。
でも輝きは強く、とても美しい黒き宝石。
アデルはその宝石を優しく見つめる。
「レイちゃんの色だね。」
「リュウ様の?」
「うん、優しい黒色だ。」
今日初めて直接会ったが、とても優しい黒色だった。
夢でみたまんまの優しい瞳をもった黒だった。
「そんな優しい子に、僕は最低だね。」
「アデル様。」
「僕は僕の未来のためにあの子を犠牲にしたんだ。」
「それは・・・。」
「僕の最善の未来のため。この国の、世界のために。」
「アデル様。」
「本当なら何も知らず幸せに暮らせるはずだったのにね。」
でも、そうしなくてはならなかった。
何故、彼女は異世界におまけとして召喚されたのか。
どうしてあんな世界だったのか。
そして何故あの時までリュウが召喚魔法を使わなかったか。
何故、もっと早く使わなかったのか。
「全て、僕のせいだって分かったら、きっとレイちゃんは恨むね。」
「そっそれは。」
「いや、レイちゃんだけじゃなく、サーちゃんだって。いや、きっとリュウに殺されちゃうね。」
アデルは笑う。
全てを知り、操りながらも。
何も知らないふりをして笑う。
「まぁ、それでも、僕は何を犠牲にしても進むんだけどね。」
「そうですね。」
「たとえ、それが人から軽蔑されてもね。」
「陛下・・・私は、陛下のお心のままに動きます。」
影はひざまずく。
王の悲しみを知りながらも。
それを隠し進む王のために。
「嗚呼、頼むよ。ルディ。僕の影。」
「はっ。」
アデルの言葉を聞いて影はその場から消えた。
アデルは再び、手元の宝石を見つめる。
「お願いだ。僕らの希望。どうか、助けてくれ。」




