望まれる未来
「アデル!!」
「どうしたのー?サーちゃん。」
「どうしたのじゃないわ!!さっきの!!」
王の執務室にサーリナは怒りの形相で突撃してきた。
先に来ていた王、アデルはそんなサーリナをのんびりと眺める。
「さっきのって?」
「レイのことよ!!まだあの子は来て一ヶ月なのよ!ようやく一般人、いや一般の兵よりは体力も強さもって所なのよ!なのに!」
「だからだよ。」
「は?」
「一ヶ月でそれほどの成長をする。それって普通の者じゃありえないスピードでしょう?」
そうアデルが問いかけるとサーリナ、一瞬視線を外した。
そうレイの成長スピードは異常だった。
いくら歴代最強と言われている宝玉の乙女、サーリナが師匠として指導していたとしても。
この成長スピードは可笑しいのだ。
この国の一般兵というが、他の国では最強といわれるほど強い。
そうそんな兵と同レベル。
もしかしたら。
「もしかしたら、兵よりも強いかもしれないんでしょう?」
アデルは知っていた。
常々、監視し報告をさせていた。
レイのことを。
この国、この世界に来てからずっと。
そして驚いた。
まさかの成長スピードに。
ありえない。
そう思えるほど強くなるのが早い。
「異世界人だから?いいや、あれはレイちゃんが生まれ持ったセンスだ。そうだろう?サーちゃん。」
「・・・えぇ。レイは生まれ持ってとても凄い才能を持っていたのだと思うわ。」
レイ本人は気付いていない。
自分に武の才能があるだなんて。
本来なら覚醒することがなかった才能なのだろう。
元々平和な世界で生きていたレイは、武術に興味もなく、全く関わりがなく過ごしてきた。
しかし、異世界に行き、危険な目にあい、その才能が開花したのだろう。
でなければきっと、レイは。
「死んでいたよね。前の世界で。」
「えぇ。きっとね。今、こうして生きてるのは、あの子の才能が開花したからよ。」
死を直前にして開花した武の才能。
まず生きるために逃げ、回避を自ら学び、それこそ達人の域までいっていた。
最初の修行の時に驚いたのだ。
サーリナの全力の攻撃を避けたのだから。
レイはただの訓練だと思っていただろうが、サーリナは内心驚きを隠せなかった。
素人だと思ったのに。
その後、無茶とも言えるメニューを言い渡したが、レイは毎日難なくとこなしていた。
正直、こなせるとは思っていなかった。
でもレイはこなしたのだ。
「どんどんあの子は才能を開花させているでしょう?サーちゃんという師匠を得て。」
以前の世界では師事してくれる人も居らず自らのセンスだけで生き延びたレイ。
でも今はサーリナの教えを吸収してどんどん成長している。
「それこそ、宝玉の乙女と同じスピードで。」
「・・・。」
「そうでしょう?サーちゃん。」
「・・・えぇ。覚醒した宝玉の乙女とよく似ているわ。」
宝玉の乙女は最初から強いわけではない。
その身体に宝石を埋め混まれて産まれてくるが、初めは普通の子と全く同じ身体能力。
しかし、覚醒と言われる時期をきっかけにどんどんと一般人よりも身体能力が上がってくる。
今のレイと同じように。
「でも!レイには宝石は埋め込まれていなかったわ!!」
「そうだね。レイちゃんにはなかった。」
成長スピードが異常だったからもしかしてと疑ったりもした。
でもアーニャからの報告には一切そんなものはなかったと。
レイは本当に普通の女の子だったと。
「だから!!だから!諦めたのに!!」
「そうだね。サーちゃんは諦めていた。」
「アデル!あなただって!」
「うん。一瞬は諦めたよ。レイちゃんがリュウの宝玉の乙女になってくれることわ。」
「じゃあ!なんで!!なんであんなことを!?」
「見たからだよ。」
「見たって・・・レイが宝玉の乙女になることを?」
「うん。それと・・・。」
アデルは目を閉じて思い浮かべる。
半月前に見た光景を。
「リュウの隣で、リュウと笑い合う宝玉の乙女。初代の生まれ変わりとも言われて皆に慕われているレイちゃんの姿を。」




