王子と侍女2
「いいから降ろしなさい!」
「嫌だ!俺がレイを運ぶんだ!」
・・・さっきの私の言葉はなかったことにされてますね。
分かります。
だんだんヒートアップしていくんですが。
この言い合い。
「あの。あの!」
「ん?どうした?レイ。」
「どうしました、レイ様?」
言い争いを止めたくて、いや、この姫だっこ状態をやめて欲しくて、大きな声をあげれば、二人は同時にとても優しい笑顔で私を見る。
イケメンと美女の笑顔がこんなに近くに!!
思わず顔が真っ赤になる。
それをさらに嬉しそうな顔で見る2人。
・・・なんだろう、そっくりだ。
この2人。
顔とかじゃなくて雰囲気が。
うん、この私を見ている笑顔が。
っていうかきっとこれ私が恥ずかしがるって分かってやってますよね?
ううう・・・なんとかして視線を変えたい。
「あの、お二人は一体どういう関係ですか?」
「「えっ?」」
「いや、さきほどからの会話からすんごく仲がよさそうなので・・・。何か特別な関係なのかなって・・・。」
視線を変えたくてさっきから気になっていることを二人に尋ねてみた。
さっきからの会話からやら、距離感から特別なのかなって感じて不思議に思っていたのだが。
そう尋ねると、二人は心底嫌そうな顔をする。
えぇ・・・私何か駄目なこと言いましたか?
「レイ様。そんなそんな、恐ろしいことを言わないでください!!この馬鹿王子と特別などと!」
「そうだ!この暴力女と特別なんて!!俺の特別はレイだけだ!!」
「そうです!私の特別もレイ様だけです!!」
えっと、あの、別にその特別って言ってもあの恋人とかとは言ってはないですけど・・・。
友人とか幼なじみとかそういうのかなって・・・。
でも、どうやらお二人はそうとらえられたようで・・・。
「なんだと!!レイ!こいつは本当に暴力的でな!昔っから足癖が悪く、俺や他の男達を蹴ってきたか!それに暴言も言ってくるな!」
「黙りなさい!!レイ様にそんな嘘を!!それならばこいつはこいつだって他の女なんて全員ゴミだとか昔からいってまして!!」
「やめろ!レイに何を!!」
「あなたこそ!!」
二人はとっくみあいの喧嘩が始まったのですが。
目的の姫だっこはうまく解除されましたが。
とっくみあいの喧嘩にハラハラとするようになってしまいました。
「なにが天才よ!私よりも魔術のセンスないくせに!」
「はぁ?俺はセンスもある!それに魔力だって、お前の倍だぞ!」
「魔力があったて、仕えなくちゃ意味がないでしょ!!」
アーニャさんもう敬語もなくなっている。
これが素のアーニャさんってことでしょうか。
先ほどまでは丁寧な淑女ぽかったのですが。
さっきからリュウ様を蹴ってますし。
いやリュウ様も足で蹴ってますし。
なんでしょう・・・子どもの喧嘩に近いです。
口げんかもどんどん低レベルになってますし。
もう最後は馬鹿の言い合いになってますし。
「ばーか!」
「馬鹿って言う方が馬鹿なんです!!」
うん、程度が低い!
そんな喧嘩を見ているとだんだん面白くなってきました。
「ふふっ。」
我慢していたのですが、思わず笑いが漏れてしまいました。
「ふふふ、ふふっ。」
「レイ・・・?」
「レイ様?」
「あっ、ごめんなさい。」
笑い声に気付いた二人がこちらを見る。
やっぱり、そっくり・・・。
って違う違う。
謝らなくちゃと急いで謝ったのだが・・・。
何故か二人は固まってじっと私を見る。
・・・恐いのですが・・・。
「あぁぁ!!なんて愛らしいのでしょうか!?」
「ひゃっ!!」
先に復活したのがアーニャさんだったのですが。
固まっていながらもまだ姫だっこをしていたリュウ様から私を奪い、ぎゅうぎゅうと抱きしめられています。
しかも高速で頬ずりをされながら!!
「あああ!!私の主様がこんなにも可愛いだなんて!!嗚呼!!なんて幸せ幸福!!」
「あっアーニャさん!!」
「嗚呼!!愛おしいという言葉はこの為にあったのですね!!」
嗚呼、駄目だ!!
全然聞いてない!!
アーニャさん確実に自分の世界に入ってる!!
アーニャさんを止めるのに必死だった私は気付かなかった。
「この笑顔だ・・・。」
リュウ様が嬉しそうにでも泣きそうに瞳を潤ませたことも。
そう呟いたことも。




