スーザン一族
その後、師匠が出すメニューをこなした。
通常でも辛いメニューだったけど、さらに身体が重いことによってもう立つこともできないぐらい。
「レイ、大丈夫?」
「はっはい・・・。」
返事をするのもやっとで、情けないです。
心配そうな師匠に申し訳ない気持ちになる。
「やっぱり重さもっと軽く・・・。」
「大丈夫です!!」
やはり軽くしようとする師匠の言葉に思わず起き上がる。
これでさえきっと師匠からしたらまだまだなのに。
これ以上軽くなんて。
頑張るって決めたのに。
「私はやれます!!」
「・・・そう。」
食い気味に伝えれば、師匠は苦笑した。
辛いけど、耐えられないぐらいじゃないのだ。
もっともっと頑張らないといけない。
「じゃあ、変えないけど。焦りは禁物よ?」
「・・・はい。」
「焦って無理をしても身体を壊すだけだから。もし無理だと思ったらすぐに言うこと。」
「はい。」
心配そうな師匠と約束をする。
身体を壊しちゃ意味がない。
だから身体を壊さない程度に頑張らないと。
「ふふふ。今日はとりあえず終りよ。」
「えっ。」
「これからこのメニューをこなしていけばいいわ。毎日は私も一応職務があるから、付き合ってあげられないの。」
そういえば、師匠はこの国の王女様でした。
忙しいはずなのに。
「あら、レイ。私は私が望んでレイの師匠になったのだから何も気にすることはないのよ。」
「・・・はい。」
「それでね、レイに紹介したい人が居るの。」
「紹介したい人?」
「えぇ、入りなさい。」
師匠がそういえば静かにドアが開き、入ってくる人が。
茶色の髪の美しい女性です。
「本当ならば、昨日レイに紹介するはずだったんだけど、馬鹿のせいやレイが疲れているのもあったから今日に回したの。」
「え。」
「これからレイの身の回りの世話等をする侍女のアーニャよ。」
「アーニャです。宜しくお願いします。レイ様。」
「え、え?」
アーニャと紹介された女性は綺麗なお辞儀をする。
侍女って・・・。
「私、あのそんな人を付けていただくなんて!!」
「あら、本当なら後2、3人はつけたいぐらいよ?」
「えぇ?!」
「あなたは異世界からの客人よ。丁寧におもてなししないといけない客人。」
「え、いや、そんな。」
「それにあなたは望んでいないけど、あの馬鹿息子の運命よ。本来ならこんな修行なんかしないでほしいぐらいなのだけど。」
「え?」
「言ったでしょ?この国の王族には運命の相手が必ずいる。それはこの国のだれもが知っていることなの。」
ねっとアーニャさんに師匠が言えば、アーニャさんは静かに頷く。
「私たち国民にとっても王族の方達が運命を見つけ一緒になることは国の繁栄に繋がるものであり、運命を見つけられないことは惨劇を呼び起こすとまで言われています。」
「そんな。」
「この国の歴史の中で運命を見つけられず、狂った王がいるのです。」
「・・・嘘。」
「いえ、嘘ではありません。それを知っているからこそ、国民たちにとって運命は国にとって最重要人物となり、宝のような扱いになっています。」
え、嘘でしょ。
そう思って師匠を見れば、遠い目をしていた。
「そうなのよね・・・。この国全体がそんなんだから他国の平民の兵士であった私をすぐさま受け止め、受け入れ、寧ろもう大事にしやがって逃げ道もふさぎやがるのよ。」
「あら、サーリナ様はそれでも結構なあがきを見せたと母から伺っていますが?」
「・・・結局は逃げれなかったから同じよ。本当に恐い国だわ。」
「そうでもないと思いますが?それに馬鹿な貴族は運命の大事さを理解せず、王族に自分の血筋を入れようと必死になっているものもいるのも事実です。本当に馬鹿共が。お前達など運命様方に勝てると思っていることが本当にクズとしか思えない。」
本当に救いようのない馬鹿者たちですとアーニャさんは蔑んだ目でつぶやいている。
なんでしょう・・・アーニャさん、その貴族達になにか恨みでもあるのでしょうか・・・。
とても恐い圧を感じます。
「ああ、レイ様。怯えないでください。」
「アーニャは運命をそばで守ってきたスーザン一族の娘だから、運命への思いが強すぎるのよ。」
「スーザン一族?」
「えぇ。スーザン一族は王族の手足となり動いてきた一族なのだけどね。王族の手足と言うよりは王族の相手である運命の手足となってきた一族なのよ。」
「はい。私たち、スーザン一族は王族を支え、この国を繁栄へと向かわせてくださる運命の方々にお使いできることが何よりもの喜びなのです。」
「・・・ホント、運命至上主義な一族なのよ。」
・・・それってどういう一族なんですか?
「なんでも、この一族の先祖が、初代の王の運命に命を助けれたそうでね。」
「あのそれならば、王族に忠誠を誓うのでは?」
だって初代の王の運命ってことはお后様ってことですよね?
それならば、王族の忠誠を誓っているんじゃ。
「それがね、最初はそう初代王のお后に仕えていたそうだけど、お后が死に、次の王に仕えていたが、また王の運命が現れ、その運命がまたスーザン一族を救ったそうなのよ。」
「はい、スーザン一族が危機に陥ると助けてくださるのはいつだって王族ではなく、そのそばに居られる運命様だったのです。」
「え?」
「姿が違えど、血筋もなけれども、運命様達はスーザン一族をいつだって救ってくださるのです。きっと王族の運命でありながらも、スーザン一族の救世主でもあられるのです。」
「ってなってるそうでね。故にスーザン一族はいつの代でも王族の運命が現れれば、すぐさま跳んできて、運命に忠誠を誓うのよ・・・。」
そういう師匠の目は遠い目をしていました。




