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師匠

「レイ…どうしてなの?」


「それは…。」


「レイに何かあったのは分かってるわ。でも、それはあなたが強くならなくてはならないことなの?」


「…はい。」



そう答えるとサーリナ様はそうと言って考えるように下を向き、しばらくして顔を上げた。



「私は、聞かなくてはなりません。」


「サーリナ様。」


「力を持つと言うことは、それは人を傷つける術を手に入れると言うことです。」


「はい。」


「何故、必要なのか。それはその術を手に入れるに値するほど理由なのか。それを知らないと私はあなたに力を与えることはできません。」



サーリナ様は真剣な表情でそう告げた。

そうですよね。

元は何も力のない小娘の私。

それが、力をもてばどうなるか。

それをきっとサーリナ様は恐れ、また心配している。

でも、私は。



「私は人を信じるために力が欲しいのです。」


「人を信じるため?」


「はい。」



私は今もまだ人を信じられていない。

ただの小娘が異世界に落ち、迫害されたことはトラウマとなっているのです。

それをなんとか菫という存在で保っていたのに。

今だって本当は人が恐いのです。

多分リュウ様は気づいているはず。

人が私に触れるたび、私は怯えているのだから。

こんなに優しくしてくれるサーリナ様達でさえ。

恐いのです。

でも、そんな私が嫌で嫌で。

信じたいのに。

でも、弱い私では。

だからこそ、私はもし裏切られても生きられる強い力が欲しいのです。

私が私を信じ、強く生きられるように。

サーリナ様達に私が以前の世界での私への対応を全て話しました。

時折悲痛な表情を浮かべるサーリナ様にさらに心が痛みました。

でも、話さなくてはならないと思ったのです。

私は、私なりの覚悟を見せなければならないのです。



「私は…人を…私を信じるために力を強さを欲しいのです。」


「レイ…。」


「お願いです。私が宝玉の乙女様になれるとは思いません。でも、それぐらい強くなりたいのです。」


「…はぁ…。」



サーリナ様は呆れたようは表情を浮かべる。

そりゃそうよね…。

結局、私は自分自身のために力を求めめるのだから…。

サーリナ様をまっすぐ見られなくてうつむいてしまう。



「レイ。」


「はい…。」


「顔をあげなさい。」



サーリナ様にそう言われて、顔を上げる。

サーリナ様はまっすぐこちらを見ていた。



「…あなたは宝玉の乙女をめざすのね…?」


「はい。私は宝玉の乙女様のようになりたいのです。」


「…とても厳しい修行になるわよ?」


「かまいません。」



そうなることは覚悟しています。

そう伝えると、サーリナ様は思いため息をついた。



「…そういうことね。リュウ。」


「ようやくか。母上。」


「…私はあなたと違うから、分からなくて当たり前なのよ?」



今まで黙っていたリュウ様はサーリナ様に問いかけられて笑いながら答えた。

それにサーリナ様少し不機嫌そうに答えた。



「でも、ようやく理解してくれただろう?」


「えぇ。でも、これは本当は望むことじゃないわ。」


「あぁ。俺だって一切望んではいない。」



リュウ様とサーリナ様の会話は私には分からないけど二人はなにやら納得したように話を進めていく。



「愛する人を望んで茨の道に進めたいとは思わない。」


「ならば!」


「でも、愛する人の望みを叶えないのはもっと思えないんだ。」


「…はぁ…。」



リュウ様はにこやかに笑いながらこちらを見た。

…もしかして私の話?

サーリナ様は深くため息をつき、リュウ様から視線を外し、私を見る。



「レイ。修行は明日からよ。」


「え?」


「今、現代で私はこの国、いえ、多分今この世界で一番の宝玉の乙女と言われているわ。そんな私があなたの師匠となり修行を見るわ。」


「…サーリナ様?」


「レイ、駄目よ。」


「えっ?」


「私のことは師匠と呼びなさい。」



驚きのあまりサーリナ様を凝視する。

するとサーリナ様はお茶目にウィンクを見せてくれた。



「私はね、実は弟子を取りたいと思ってたのよ。」



ふふふと楽しそうに笑うサーリナ様。

私は泣きそうになるのを我慢して、笑顔を作り、頭を下げる。



「宜しくお願いします。師匠。」




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