魔獣と少女
えっえっえっ?
まさか、今まで話していたのはこの魔獣?
しかも魔獣が人間の少女を心配していた?
先程の会話から、魔獣とこの少女はしばらく一緒にいた。
そして、魔獣の方が少女の食べ物を探して、与えていた?
「そんな、まさか。」
「ルーミア!」
「ジュディ!」
魔獣は少女を背に庇うように前に出ている。
その姿は親が子を守るよう。
「あっあの、あなた達は一体?」
「近寄るな!!」
「なっ!」
魔獣はゴウっと大きな炎を吐き、威嚇してくる。
リュウ様の結界で、なんともないけども、魔獣が少女を守ろうとしていることに驚きで固まってしまう。
「レイ!」
「あっ、えぇ。分かってます。」
リュウ様の声にハッとし、武器を取り出す。
目の前に魔獣がいるのに、武器を構えずいるなんて。
しかし、この魔獣は倒してもいい魔獣?
「ジュディ。」
「大丈夫、ルーミアは隠れていなさい!」
「えっ?何故、魔獣が人間を守る?」
「ジュディは、悪い魔獣じゃない!私を守ってくれてるの!ずっと!!」
「それは君を騙しているだけではないのか?」
「違うもん!ジュディは、ジュディは、村の人から捨てられた私をずっとずっと守ってくれていたんだもん!!ゲホゲホゲホ!!」
「ルーミア!」
「リュウ様。」
「魔獣が人を守るなど今まで聞いたことがない。」
「でも、実際目の前に。」
困惑しながらリュウ様を見れば、リュウ様も目の前の光景を信じられないようでどうしたらいいのか分からないようだ。
喋る魔獣だもの、知能はあるから、少女を騙しているかもしれない。
けども、少女の話からあの魔獣が少女を守っているのかもしれない。
でも、魔獣を信じるのは。
一体、どうしたらいいのか。
そう悩んでいる時、ハッと思い出されたのは、私の本当の力だ。
今までは、あまり出すことがなかった私の本当の武器。
今まで持っていたものを消し、二刀の短剣を出す。
「レイ!それは。」
「はい、これで判断します。悪だった場合、消し去ります。でも、善だった場合。」
二刀を構え、魔獣に振り下ろす。
魔獣は交わそうとするが、後ろに少女がいるので動けないようだ。
この姿を見て、私は確信した。
この魔獣は。
「裁判!!」
「ジュディーーー!!!」
振り下ろした刃は何にも触れず、そのまま消えてしまった。
目の前の魔獣は、何一つ怪我なく、目の前に立っている。
やっぱり。
「えっ?」
「あっ?」
「やっぱり、あなたは、この子を守っていたのね。」
「えっ?」
「リュウ様、この魔獣は善です。」