封印
「ほら、行くぞ!」
「ちょっ!リュウ様!!」
リュウ様に腕を掴まれて、街に出かけるのはいつもの事。
出てしまえば、楽しんでしまうのだけども。
楽しんでいていいのだろうか。
魔素に苦しんでいる人がいる中で。
これじゃあ、アイツらと一緒では?
「違うだろう。俺たちは時間が必要だから、その時間を有効活用しているだけだ。」
「リュウ様。」
「あの馬鹿どもは急がなければならないのに、それをせずに遊んでいた。でも俺たちは聖剣に必要な時間だが、俺たちには暇になるから、それを上手く利用しているだけだ。必要な時間が短ければ、ちゃんとその時間だけしか使っていないだろう?」
「えぇ。」
「アイツらとは全然違う。俺のレイは真面目だからな。あんなふざけた奴らとは違う。」
ハッキリとそういうリュウ様にビックリしつつも安心してしまった。
嗚呼、もう。
本当に厄介だな。
宝同石のせいで感情が筒抜けだから。
だからこそ、私が悩んでいたことを知り、さらっとそういうんだから。
その言葉で安心してしまうんだから。
本当に厄介だ。
「惚れたかい?」
「それはない。」
「酷いな。」
「そういう感情はないって分かってるはずなのに。」
「希望はもちたい。」
「もってもないものはない。」
「だとしても諦めないからな。」
「はいはい。」
もう。
リュウ様に対しての気持ちは、親愛でしかないのだけども。
そんなの1番リュウ様が知っているはずなのに。
まぁ、聞かない人だから仕方がないか。
「さぁって、そんなくだらないヤツらのことを気にせず、これを食べ。」
「んぐぅ!!」
急に食べ物を突っ込まれて何も喋れなくなる。
まぁ、美味しいからいいけど。
そんなこんなしながらもちゃんと封印はでき、それは誰もが予想できないぐらい早かったようで、時折ゴウ様達から連絡があるが、それはいつも数日前にいた場所からで、大分先に先にと進んでいる。
「さっさと魔王も封印してやって、新婚旅行に、行こう。」
「いや、行きませんけど。」
「今回の旅で良さそうなところも見れたし。レイはどこがいいか決めておいてくれ。」
「いや、だから行きませんって。」
「俺はのんびり過ごすのもいいと思うんだ。」
「いや、聞け。」
本当に話を聞かないな、この人。
まぁ、でも早くこの旅を終わらせて、師匠達を安心させたい。
きっと、ずっと師匠達は心配していると思うから。
「リュウ様。」
「ん?」
「早く、終わらせましょうね。」
「えっ?」
「師匠達の元に早く帰れるように。私達の帰る場所ですから。」
「嗚呼、そうだな。」