初代宝玉の乙女
宝玉の乙女の初代様はどこにでもいる少女だった。
違ったことと言えば、幼なじみの少年が魔王を倒す勇者に選ばれてしまったことだった。
少女と少年は昔から仲が良く、将来を誓い合った仲でもあった。
しかし、少年が勇者に選ばれたことによって、少年は旅に出なくてはならなくなった。
今まで少年は普通の少年と過ごしてきたのに。
そんな少年が急に勇者だなんて。
少年は絶望した。
でも自分が魔王を倒さなければ、少年の愛する人、少女も死んでしまうのだ。
少年は絶望しながらも旅に出ることを決意した。
しかし、少女はそんな少年の絶望も知っていた。
周囲が勇者として少年を讃えるなかで少女は泣きそうな顔で少年を眺めていた。
そしてついに少女は言ってしまう。
「あなたが勇者になったところで、世界が救える保証などないのでしょう?ならば、私はあなたを勇者として旅立たせることはできません」
と。
少女は少年が死ぬかもしれない未来を迎えたくはなかった。
少年が死ぬかもしれない未来に絶望しているのを知っていた。
だからそういったのだ。
そして。
「逃げましょう。私と。」
そう少年に告げたのだ。
世界のために犠牲になるのは許せない。
彼は勇者ではないのだ。
私の愛する人なのだと。
少女は必死に愛する少年を説得した。
滅び行く世界ならばそれでいいと。
少年とともに滅び行くと。
少女は少年を本当に愛していたのだ。
少年はそんな少女を見て頷きたかった。
逃げたかった。
でも、これほど思ってくれる、世界と自分を天秤に掛けても自分を迷わず選んでくれる彼女を愛しく愛しく思っていた。
だからこそ、少年は少女を深い眠りにつけることにした。
幸せな夢を見て、世界が平和になるまで。
勇者に目覚め、魔術も使えるようになった少年の初めての魔術だった。
彼女が泣かないように。
自分を思って泣かないようにと。
記憶さえ消そうと思った。
でも、できなかった。
どうしても、できなかった。
少年は少年であることを求めてくれる少女からの愛をどうしても欲してしまった。
それが少年の弱さだった。
少年は眠る少女を美しい湖のほとりに優しくおいて、旅だった。
勇者として。
少女の笑顔が再度見れるように。
そして数年後。
少女は目覚めた。
少女は絶望した。
少年はとうの昔に勇者として旅立ってしまっていたのだから。
勇者の施した魔術は完璧ではなかった。
少年の魔力が弱わり、少女の魔法は解けてしまったのだ。
少女は知ってしまった。
愛しい少年は今にも命を落とそうとしていることに。
だからこそ、自分の魔法が解けてしまったことを。
絶望した。
愛しい人の死んでいく未来を知っていながらも助けられない自分が。
絶望した。
きっと、愛しい人の命を代償にこれから生きていく自分が。
嗚呼、嗚呼、私に力があれば。
あの人を守れる力があれば。
そう願った。
祈った。
その祈りは神に伝わった。
「愛しい人を助ける力をあなたにあたえましょう。」
神は少女に一つの宝石を授けた。
「それが宝玉よ。そして少女は…初代の宝玉の乙女様は、宝玉の力を使い、愛しい人を助けたのよ。」
「勇者をですか?」
「そうよ。魔王の力の前に倒れそうになった時にね、初代様が現れ、勇者と共に魔王を倒したそうよ。」
「故に宝玉の乙女の力は愛なの。」
「え?」
「初代様は勇者への愛にて、神から宝玉を与えられたの。」
だから、宝玉の乙女様が信頼し、愛してる人しか宝同石にも力を入れることができないと…。
なんとも夢物語みたいですが、でも宝玉の乙女様達も本当にいるわけですし。
本当にあったことなのかもしれません。
「でもまぁ、敬愛でもかまわないの。信頼と愛であればね。だから女の御主人をもつ宝玉の乙女も珍しくないわ。」
「えっとそれは先ほどの主従の契約でですか?」
「んーそうね、でも、女同士での愛もあるから、パートナーの場合もあるし。男女でも主従の契約であることもあるわ。」
なるほど…。
なんとも深いです。
宝玉の乙女様達は!
「それに、もし、宝玉の乙女が御主人やパートナーに対して愛を感じなくなったら宝同石を回収することもできるわ。」
「えっ?」
回収可能なんですか?
そう驚いて聞けば、もちろんとサーリナ様。
「だって宝玉の乙女達も人だから。愛がなくなることもあるわ。まぁ、なかなかないけどね。そんな事例は。」
「はぁ。」
「宝玉の乙女達もパートナー、御主人決めには結構慎重だからね。」
「なんたって宝玉の乙女にとって愛が力だから。愛がないと力が出ないから。」
ふふふっと笑うサーリナ様はやっぱり美しい。
でも、サーリナ様なんでこんなに宝玉の乙女について詳しいのでしょうか?
王族なら一般常識ですかね?
あ、もしくは普通に一般常識なんでしょうか?
でも宝玉の乙女様達は最強の戦士様ですし、国家機密とかであっても可笑しくないような…。
「何故、こんなにも詳しいのかって思ってるでしょう?」
「ふぇ!?」
「レイは案外表情に出るわ。」
「すっすみません!!」
「いいのよ、とても可愛らしいから。」
そんなに表情に出てたなんて…恥ずかしい。
サーリナ様は恥ずかしくて頬を赤くしている私に向かってさらに楽しそうな表情を向ける。
そんなに私の顔面白いですか?
「それはね、私も宝玉の乙女だからよ。」
「えっ…えぇぇええええええ!?」
サーリナ様の大暴露にさらに私の顔は面白くなったに違いありません。




