第99話
誠に勝手ながら、お盆休みを頂いておりました。
「なんで駄目なの!?」
そう声を荒く抗議するのは今にも雷太に馬乗りしそうな程、雷太に近寄り相当不服であるのか、いくら彼が目を反らそうとしても食らい付く様に目線を合わせようとする桃だった。
「いや…駄目でしょ。」
彼は苦笑いをして、該当する部分を両手で隠しながらも少し考えた結果、やはり駄目であると伝えたが、それでも桃は納得していない様子で頻りに首を横に振っている。
「腕は良い、足は良い。だったら、耳だって許容範囲でしょ?」
「それでも、あの時は場の盛り上がりとか考えて、我慢して、良いよ、って事にしたからね。それに汚いし。」
こうして押し問答を繰り返す最中でも、他の三人は黙々と次のゲームの準備をしているのだから、桃がごねるのは良くある光景なのだろう。
顔面の筋肉を解したり、トイレやジュースの補充と無駄なく激戦に向け、着々と勝利への執念を溜め込んでいく。
「汚くないもん!そういう事、気にしてるんだったら全然問題無いよ。らい君の事、好きだから全身隈無く舐め回したいし。だから、ここはオッケーって事にしとこ?」
だからこそ問題があるでしょ、と雷太は項垂れ、彼女の執心に疲れがどっと湧いた。
「でも、桃っちはさっき…ルール違反したでしょ?」
桃が勝者となった時は必ず、すったもんだが起き、間延びした休憩時間に耐えきれず、李が気だるそうに彼女に釘を刺す。
「…何の事?」
「さっき、抱き着いた時に性の捌け口にしようとしたでしょ?」
李の言葉にいまいちピンと来ず、眉間にしわを寄せ、先程の出来事を思い出しているようだが、思い当たる節がないのか、首を傾げた。
「わざと、体擦り寄せたりとか…。」
「ああ!あれね。…あれ?みんな、やらないの?」
さも当然であるかの言い方に彼女たちは、見合わせた後に首を横に振る。
「ええ?勿体ない。え?らい君の事好きなんでしょ?なんでやらないの?おかしくない?触れるんだよ?今まで妄想してた体を触ったりとか味見出来ちゃうんだよ?興奮しないの?」
「あのさ、本人目の前にして言うことじゃないと思うけど…それにそんな邪な考えでやってたんなら、もう止めた方が……。」
猫かぶりをしている三人に自分がしてきた行為が如何に正当な理由で成り立っているかを熱弁する桃を遮り、雷太はぎこちなく笑いながら、そろそろ終わりにしようと提案した時、四人は一斉に彼を見つめた。
「「「「それは駄目。」」」」
彼女たちの真剣な眼差し。
そして鬼気迫る強い想いに、雷太は言葉を失い、諦めたのか静かに部屋の隅へと後退した。
「私はこの日の為に、一週間我慢し続けて参加してるんだから、らい君に触れただけでもう悶々なんだよ?これでらい君に対しての性犯罪を行わずに済むんだから、感謝して欲しいんだけど、な?」
覚悟を決めたのか、もう耳を隠す事を止めた彼に桃は逃げ場を無くすかの様に体で覆い被さり、いやらしく笑い声を上げた後、ピチャピチャと水滴の跳ねる音が部屋に響く。
時折、擽ったさと苦しげなうめき声を上げる彼の反応に他の三人は食い入り、瞬きさえ忘れる程、彼女の後ろ姿で隠れた彼の表情を想像しながら、間抜け顔で見詰めていた。
「良いなぁ。」
生唾を飲み込み、呟かれた美夜の言葉に李と水華は返事はせず、小さく頷いた。
「ふ~。満足満足。」
時間にすれば短くとも、濃密な桃との触れ合いに雷太の顔色はすっかり紅潮し、我慢していたせいか息も絶え絶えに放心状態となっていた。
彼の淫らな姿に一同はゲームを忘れ、夢中に見つめ、欲望がお腹の底から湧き出る感覚をただひたすらに抑え込んでいた。
「…なんですか?」
再び静けさが訪れた室内の異変に彼は弱々しく尋ねる。
その言葉で三人は我に返り、口々に何でもないと繰り返し、慌てたように手を大袈裟に振る中、桃だけは目を見開き、飲み込む事を忘れた涎が口の端から流れ出ていた。
ギラギラと燃えたぎる瞳には欲が見え、荒々しい息遣いは事を想像しているのか、離れたばかりのその体を再び雷太へと向け、闊歩する。
彼は事態を理解出来ず、何故彼女はまた近付いてくるのだろうか、とぼんやり考え、惚けた頭が上手く体をコントロール出来ず、そこに座ったまま、ただ見上げていた。
「らい君が悪いんだからね…そんな顔されたら誰だって我慢出来ないよ?」
桃は再び、彼に覆い被さり両手を首に回し、おでこをくっ付け、彼の虚ろ気味な瞳を真正面から見据えた。




