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それ、ホントに僕ですか?  作者: 海々深々魅々美
穏やかに柔らかに
92/109

第92話

それはほんの偶然の産物だった。


年を負う毎に彼女に対して、両親の感心は薄れていった。


その証拠に学校での出来事を話してもどこか無関心に空返事ばかりでBGMの様に聞き流されていたのかもしれない。


テストで百点を取った。


徒競走で一位を取った。


そんな少しだけ誇れる話をしても両親はテレビか携帯電話かに集中して一切聞き返されず、ただ軽く賛美の声をあげて終わる。


だからこそ、誰かに認めて貰いたい欲求が強くなる一方だった。


何かと言う具体的なものは無く、ただ自分がここに居るのだと認めて貰いたかった。


自ずとスクールカーストのトップにありたいと願い、誰かを従えればあたしと言う存在が目立つ気がした。


そしてとうとう頂点に立った時、見下ろす先に水華を見ない人物が居た。


それが美夜だった。


丁度、母親を亡くし心を閉ざし気味であった彼女の悲壮感が水華には両親の影に見え、余計に承認欲求が酷くなってしまった。


嗚呼、これがいじめっこの気持ちなのかと水華は欲求が満たされていく中で、しみじみと感じた。


ストレスの捌け口かもしれない。


恋の裏返しかもしれない。


ただ、水華にとっては誰からも認めて貰いたい。


その一心だった。


その純粋な気持ちに導かれた先に待ち構えていたのが雷太であった。


彼は外見ではなく、中身を見ている様な鋭い目付きで水華を睨んでいた。


そんな気がして水華の欲求の捌け口は次第に雷太へと矛先を変えていった。


実のところ、単に顔覚えの悪い雷太は本当にこの人で合ってるかを確認する為に、凝視していたのだが水華にしてみれば、どうでもいいことだった。


彼は水華を批判する為に水華自身を認めなければならない。


それが堪らなく嬉しかった。


良い部分、悪い部分を含め認めてくれる雷太のあの眼差しを見たいが為に美夜を苛めるように変わり、悪役を演じきり、視線を独占するようになり、水華は益々明るくなった。


ただ、それも卒業してしまえば彼の視線を失うのは分かりきった事で、水華は心の何処かで覚悟はしていたが、やはり高校生活は惨めだった。


井の中の蛙とはこの事かと痛感させられた。


勉学も運動も大して秀でたものもなく、容姿も平均点を少し上回る程度の人物を誰が注目するのだろうか。


水華は再び欲求に駆られる日々を送った。


中学の同級生は彼女のいじめを見ていたせいか、誰も近寄らず関わろうとしない。


かと言って、同じクラスの生徒からは構ってちゃんの面倒臭い存在とあしらわれ、彼女が孤独になるのは最早、時間の問題だった。


その中で唯一の救いであったのが美夜が同じ高校に通っていた事。


しかし、スクールカーストの下位である水華が再び美夜を苛めても誰も見る者はいないだろうと彼女は美夜に許しを請い、新たに友達として自身の存在を認めて貰おうなどと浅はかな考えをしていた。


結果として許して貰えたのだが友達としての距離感を掴めず、更に話題も無く暫くの間は無言で登下校する、謎の時間があった。


そうして、とうとう水華と美夜が共通して話せる雷太の話題が出た事により水華の浅はかな考えが再び、頭を満たした。


このまま美夜とつるめば、もしかしたら雷太に会えるかもしれない、と。


そんな邪な思いに神様は味方するのだろう。


まんまと水華は雷太と巡り会う事が出来たのだった。

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