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それ、ホントに僕ですか?  作者: 海々深々魅々美
穏やかに柔らかに
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第89話

家での一悶着で終わる筈も無く、高校に向かえば当然の如く未来が雷太達の教室で今か今かと桃が現れるのを待ち構えている。


「桃ちゃん、おはよーー。」


そうして桃の姿が見えた瞬間、陸上競技の特待生である未来のその自慢の脚力を用いて、素早く彼女との距離を詰めていく。


「ぎゃっ!」


桃は短く悲鳴を上げ、未来の抱擁から逃れるべくその場から走り去った。


最近の桃の日課が先ず、未来からどうにかして逃げる事から始まる。


勿論、今まで逃げおおせた事なぞ無く、悲しげに項垂れる桃と満足げに抱き締める未来が教室へと戻ってくる。


そして美夜もまた一学年上であるにも関わらず、雷太の隣の席へと座り朝礼まで会話を楽しむのが習慣となっていた。


「美夜さん、友達、待ってるんじゃないですか?」


そんな質問を投げ掛けた事もあった。


「あ…うん。そ、そう、だね。」


美夜は曖昧で挙動不審な態度で返事をして、結局その日は朝礼まで動かなかった。


雷太の前で見栄を張ってしまった美夜は友達と呼べる程の関係は築けなかった様で、会話事態もそれに触れる様な話題は出てこなかった。


「ねえ、桃ちゃん。デートしようよ。」


「やだ。」


「お金払うからさー。」


「やだ。」


「……雷太の写真欲しくない?」


「欲しい!!」


今日も桃は未来の分かりやすい罠に引っ掛かる。


何時ものワンシーンに慣れてしまったのかクラスメートはその光景を暖かく見守り、又は「誰とくっつくの?」等と雷太を茶化す女子生徒まで居るのだが、一部の男子生徒は違った。


もはやハーレム状態と言っても過言では無い境遇に嫉妬や憎悪といった視線を送り、未だに桃にアプローチを掛ける猛者までいるのだ。


「桃ちゃーん、雷太と栗林先輩が手、繋いでるぞー。」


それを知っておきながら、わざと大声で桃を焚き付ける流はきっと、この現況を楽しんでいるのだろう。


けらけらと雷太が戸惑う様を見て笑い、今度は美夜に耳打ちして煽るのだから、心の底では憎んでるのでは?と思うほど巧みに彼女達を操作して彼を困らせる。


梅雨が明け、本格的な暑さがカーテン越しからでも痛感する日射し、吹いた風がどことなく生暖かく、何をせずとも額に汗が浮かぶ。


ルールが違うと咎める桃とお互いの時間は決めたのだから問題無いと突っ張る美夜の間に挟まれる雷太。


二人の言い争いを宥めた所で李が茶々を入れれば、再び事態はややこしさを増していく。


それだけで手一杯の雷太の元へ歩み寄る影に彼は気付けないほど、誰よりも汗をかきながら、二人を落ち着かせるのに必死だった。

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