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第85話

「桃ちゃん、小学校はどこ通ってたの?入学してから一週間位はずっと探してたのに、全然見付からなくてさ。もしかして嫌われたのかなとか思っちゃって、あの頃は落ち込みっぱなしで大変だったんだよ。」


「えっと……小学校からはちょっと私立の方に通ってたのね。だから、何も言わずに居なくなっちゃってゴメンね。」


「いやいや、いいのいいの。ただ、桃ちゃんが居なくて寂しかったって伝えたかっただけだから。それに今、こうして再開出来た訳だし、謝る必要ないよ。」


「う、うん。ゴメンね。」


らいの止めどなく出てくる言葉の数々にいくら、らいへの感情をダム並に溜め込んでいる桃でさえたじろぎ、その積極さに苦笑いを浮かべた。


二人の様子を廊下から眺める李は万事解決といった具合に満悦と笑みを浮かべ、たじたじとなる桃を見て楽しんでいた。


「やっと、見つけた。」


ようやく晴れ間が覗き、湿気と急激に温かくなり、廊下はむしむしとして、雷太は額に汗を浮かばせ、片手で顔を扇ぎながら、急いだために荒れた呼吸を整える。


「あれ?場所言ったっけ?」


「居そうな所をしらみ潰しに探しただけ。で?らい君は?」


李はそのまま目線だけでこの教室内に居る事を教える。


「久し振りに会ったのにもう意気投合しちゃって、もうライの入る隙間なんてないよ?」


「別に入ろうとは思ってないし。ただ一応、確認だけはしとかないと、ね?」


そう言いながら恐る恐る開け放たれた扉から、ほんの少しだけ顔を覗かせ、明るい声がする方を見つめた。


その先には二人がイチャイチャと体を密着させ、ペチャクチャとお喋りを楽しんでいる。


「あれがらい君?」


「そだよー。驚きでしょ?」


「…確かに。」


顔と顔を密着させる程のスキンシップに桃は顔を捩らせる。


と、その先に雷太が居ると気付くや力任せに振りほどき、一目散に彼の元へと走り、怯えた様に影に隠れた。


「ん!お前、早く桃ちゃんから離れろよ!」


「…僕が匿ってる訳じゃないんだけど。」


雷太の姿を認識するやらい君は怒りで足音を大袈裟に立て、そのまま彼を見上げる形で睨みつける。


「らい君助けて!」


「はいはい、待っててね、桃ちゃん。こんな卑劣漢から直ぐ助けてあげるからねー。」


確実に雷太に向けられた言葉であるが、即座にらいが反応し、朗らかに笑う顔を桃に見せた後、キッと顔を険しく雷太へと向け、犬でも追い払うかの様に雑に手を振った。


「違うよ!雷太君に言ったの!」


「桃ちゃんの求めてるらい君はここに居るよ?」


「違うもん!」


雷太の周囲で高い声色が鳴り響く中、やんわりと結末を迎えない展開に頭が痛くなった。


そして、とうとう雷太は基本的な疑問を桃にぶつけた。


「桃って……女の子と結婚の約束したの?」


雷太の目の前で牙を向く『らい君』は疑る暇さえ無い正真正銘の女の子だった。


確かに髪はショートで少しばかり筋肉質な体つきではあるものの、全体的な柔らかさと何よりも顔や胸、声や仕草、どれを取っても女の子だ。


「何だよ?悪いかよ?」


その言葉使いさえ無ければ見てくれは良い分、損をしているのではと雷太は決着の付きそうな手応えが無く、寧ろ事態は余計にややこしくなるのだなと痛感しながら、ふと考えた。


「ち、違うよ!らい君…じゃなくて雷太君!私は確かに雷太君と約束したよ!この子は多分、人違いしてると思うの。」


桃はあたふたと弁解するが、横ではらいが茶々を入れ一向に話は前に進まなかった。

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