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第80話

「大トリを飾るのは桃っちだね。さ、早く見せて?」


ゆっくりとアルバムを眺める桃を足早に切り上げる為、李は拍子を打ち、桃に催促する。


午後を回り、教室に居る生徒はこの大雨の中、ずぶ濡れ覚悟で歩きたくないと無気力に項垂れるか雷太達の様に会話や写真を楽しむかのどちらかしか残っていなかった。


李は一度、時刻を確認し再び外を眺め、憂鬱に息を吐き出す。


「桃っちには言ったけど、桃っちが覚えてるのはライの事じゃないからね。」


もう結果は見えているとばかりに李は机に頬杖をつき、外を見つめたまま、桃に言い放った。


「因みにウチはそれを証明出来るからね?桃っち。」


桃が不満気に顔を歪ませているのが視界の端に入ったのか、何かしら反論するであろう彼女を妨げるように結論を突き付けた。


「桃っちのアルバムでね。」


「李、何言ってるの?」


言い返せず黙り込む桃の横で雷太は口を挟まずにはいられなかった。


「分かってるならどうして?」


彼の疑問は尽きない。


桃と雷太が会った時点でこの事実を話していれば、こうもややこしい事態にならずの済んだ筈なのに、と言いたい事は山ほどあるのに、多過ぎた為にただ単調に李に疑問を投げ掛けた。


「じゃあ、雷太は急に事実を突き付けられて、分かりましたって頷ける?今まで信じてきたモノが全部嘘だったとして、それを簡単に、疑念も抱かず受け入れられる?」


やはりと言うか、李はある程度の流れを想定し、この集まりに臨んだのだろう、彼の質問に答えを導かせていく。


「桃っちは見ての通り、ライに対しての執着が酷いよね?それを指摘した所で火に油を注ぐ事に成りかねないよね?だってさ、依存が激しい桃っちにとってライは必要不可欠な訳でしょ?それを正そうとしても桃っちにとっては奪われるかもしれないって考えるかも。そうなった時、桃っちがどんな行動するか…分かりきってるじゃん。ね?桃っち。」


「………。」


「だから、本当は一ヶ月かけて、徐々に徐々に疑心を募らせて、ライへの依存度や中毒性を弱らそうとしたんだけど、ライが今日にするって言うから、こんな感じになったんだよね。」


李の伝えたい事は理解したのだが、それでも今、彼女がしようと企てている事はどうにも残酷過ぎる様な気がして、桃が不憫でならなかった。


「ささっ。桃っち、テディベアを持った、らいとのツーショット写真を見せてよ。」


空は暗く、ゴロゴロと鳴り響く雷の音が直ぐ近くまで聞こえてくる。


皆が持ち寄ったアルバムを一人で眺める美夜の顔は訝しげに写真を見つめ、何か納得がいかないのか頻りにページを開閉させ、誰かを見比べていた。


真相は知れ、勘違いを正せる筈なのに桃の顔色は曇っていくばかり。


ようやく、彼女の『らい君』に会えるのに桃は一向に写真を出さず、じっと俯いたまま、言葉も発しない。


それをしつこく見せてとお願いする李の姿は無邪気に見えて、とてつもなく腹黒く、狡猾だった。

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