表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それ、ホントに僕ですか?  作者: 海々深々魅々美
記憶は何処へ、記録は悲しく
55/109

第55話

「ああーーっ!!」


叫び声と共にドタドタ騒がしく響く足音に釣られ、他の二人も微睡んだ瞳を擦ったり、欠伸をしながら両手を空中にさ迷わせたりと徐々にはっきりとしていく意識の手伝いをしていた。


「う~、頭痛い。」


桃はこめかみを抑えながら、布団から起き上がり忙しなく動く李をまだ半開きな目で訝しげに見つめれば、彼女はどうやら一糸纏わぬ姿で自分の服を探している。


「なんで、あんた裸なの?」


雷太の部屋での女子会で起きてみれば李は裸と言うシュールな現況に桃は鼻で笑い小馬鹿にしながら問い掛ける。


「こら!見るな!」


李は余程、恥ずかしいのか首まで真っ赤にさせ、体を丸め片手に掴んだ衣類で肌の露出した部分を出来る限り隠し怒鳴った。


一瞬、ちらりと見えた体の体型に桃は勝ち誇った顔をしながら自身も本格的に動こうかと布団を捲ろうとしたが、何故か自分も裸である事に疑問を抱く。


「ねえ、何で裸なんだっけ?」


急いで下着だけ着けた李は問い掛けに信じられないのか顔をしかめ、桃に指差し「桃っち」と先ずは首謀者の名を言った。


「桃っちがライの布団に匂い染み込ませて興奮させるとかライの汗が染み込んだ布団に裸でくるまると直に当たるから興奮するとか言い出して裸になったんよ。」


言われたは良いものの桃は両目を閉じ、暫く唸りながら昨日の出来事を思いだそうとするも頭痛が記憶を呼び戻す妨げとなり、いまいちピンと来なかった。


「桃っちがライの為ならこんな事出来る!って言いながら色々ヤバめな事してたけど、覚えてる?」


それでも見当が付かないのか李は更に話を進ませていく。


「で、それで歯ブラシ突っ込んでみたりとかパンツ嗅ぎ出した辺りからライの服着たりとかミヤセンも張り合い始めて…で最終的に皆裸になって布団で寝るって事になりましたとさ。」


「やば、全然覚えてない。」


大分、抑え込んでいたものが爆発したのか桃の行動はそれはそれは目に余り、説明していた李も鮮明に思い出したのか嫌悪感丸出しに桃を蔑視した。


「じゃなくてっ!学校ヤバイよ!?時間時間!」


そんな悠長に桃を蔑んでいる暇は無いと李は急いで制服に着替え、洗面台へと向かい洗顔した後に化粧直しを施す。


残念ながら、彼女達の顔を彩っていた物は枕やら布団に付着し大変な事になっているが李は化粧、桃は記憶を探索し、美夜は未だに寝ていて、各々はそれに気付けていなかった。


「んん~?お姉ちゃーん。土曜の朝位、気持ちよく寝させてよー。」


騒がしい音に惰眠を貪る美夜は不機嫌そうに顔をしかめながら、枕元に置いてある携帯電話を確認するや、我が家と勘違いする程、寝惚けた口調で訴える。


そして、またむにゃむにゃと夢の中へと落ちていく彼女を他所に李は間抜けな声を出し、中途半端な化粧のまま日付を確認すれば、確かに土曜日と表記されていた。


「まじ、びびったー。」


急に安堵した気持ちになったせいか、李の腰は抜け柔らかく崩れていき、自分自身が寝惚けていた事がおかしくなり、乾いた笑い声が響く。


「そうだったー。今日休みだから女子会しようって思ったから開いたのに、すっかり忘れてたー。」


そう。


忘れる程、李はこの二人にとの会話が楽しかったのだ。


「違うよ!!大変なのはらい君だよっ!」


ホッと肩の力が抜けたのも束の間、今度は桃が大慌てで携帯電話へと向かい、急いで電話を掛ける。


「んえ?雷太君?」


桃の悲痛な叫びで涎を垂らしながらも勢い良く飛び起き、せっせと寝癖を直そうと髪の毛を解く美夜の格好はちゃっかり雷太の寝間着を着ていた。


「多分、この状態を見たから、部屋に入らなかったんだよ。」


雷太へ発信しながらあたふたと隠れられない様な狭い所でさえ彼の姿を探し歩く桃の表情は刻一刻と青ざめていく。


「嫌われたらどうしよう?」


彼に無断で部屋を使用しそれどころか凄惨たる有り様を見られ、更に部屋に居づらい状態のまま寝床を占拠してしまった事が桃の背中に後悔をのしかからせる。



無機質に鳴り響くコール音が雷太の拒絶を表しているようで桃の不安は頂点に達してしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ