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それ、ホントに僕ですか?  作者: 海々深々魅々美
パンドラの箱は誰が閉じる?
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第53話

「私、初めてナンパされたかも…。」


「これだけメンツが良ければ、誰だろうと放っとけないよね。」


居間で寛ぐ美夜と李はここまでの道のりであった事を仲良く喋り、台所では桃は飲み物の準備をすべく、ヤカンに水を張り、ガスコンロに火を点けた。


「二人ともミルクティーで大丈夫でしょ?」


通路から顔を覗かせ、桃は二人に尋ねれば肯定の声が聞こえる。


水が沸騰する間に雷太のバイト先である軽食喫茶で購入したケーキを各皿に乗せ、茶葉を何にしようか悩んでいた。


偶々趣味が一緒である事に深い意味を見出だし、運命を信じる桃にとってこれ程胸をときめかせる事はまずない。


茶葉の匂いを嗅ぎ、この恋敵に囲まれた緊張感を和らげ、果たしてこの二人と理性を保ちながら喋れるのか桃自身、不安であった。


「此処って桃っちの部屋っぽくないけど……。」


桃に案内され躊躇なく足を踏み入れたものの、李は女子っぽさがなく、素っ気ない部屋模様に疑問を抱き、彼女に投げ掛ければ、集中していたのか顔だけ出し、もう一度聞き返した。


「ん~?何~?」


「此処って桃っちの部屋?」


「ここはらい君と私の愛の巣だよ~。」


冗談めかした喋り方をしているが桃に至っては真剣そのもので、李の微妙な反応に更に追い込みをかける。


「衣食住を共にして、一日中らい君の匂いに囲まれながら生活してるけど問題ある?」


「いや……桃っちの部屋でも問題ないんじゃ、って思ってさ。」


李と桃との間で内容の齟齬があるのか李は苦笑いしながらも華麗に策略を躱し、まどろっこしいと桃に勘違いされてしまうと懸念し、本題をそのままぶつけた。


すると彼女は困惑しながらも表情から自身の部屋へ案内したくないような拒否感を端々に浮かべ、断る理由を選別している為に言葉に詰まりつつ返答する。


「…私、の部屋は…汚い、から上げたくないんだよね~。ほら、らい君の部屋をいっつも掃除してるから、疎かになっちゃって。」


自分自身を納得させる様に話し、ある程度の設定が決まれば、すらすら言葉は流れていく。


その反応に李は何かしらの隠し事を抱えているな、と推察するが彼女の情緒不安な性格を鑑みれば、まだ言及すべきではないと適当に相槌を打ち、再び美夜とお喋りを再開した。


熱心に李から化粧のイロハを教わる美夜は余程、雷太に褒められたのが嬉しいのか、真面目でありながらも嬉々としてメモ帳に書いている。


台所から仄かに茶葉の香りが漂いだす頃、桃だけはどうにも複雑な気持ちでこの女子会に臨んでいた。


雷太の側に居られればなんて綺麗事を言っても結局は独占欲に火が点いて、例え彼が心許す人であろうと桃にとっては鬱陶しい存在に成り下がる。


だからこそ、仲良くなる事に意味なんて有るのかな?と、頭には何時も過っていた。


雷太無しに付き合うのであれば別段、気にもしない事があの二人から見えてしまう。


「お待たせ。」


それでも、邪険には出来ない。


何故なら雷太に嫌われるから。

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