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それ、ホントに僕ですか?  作者: 海々深々魅々美
パンドラの箱は誰が閉じる?
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第52話

「美夜ちゃん、きゃわいいーー!!」


真っ先に誰よりも早く反応したのは朝美であり、カメラモードに切り替えた携帯電話を片手に店内、それも営業中であるにも関わらず、一人撮影会を開催し、赴きある場所へと美夜を座らせ、激賞を浴びせた。


「じゃじゃーん!どうよ?ウチがプロデュースすれば、ダイヤモンドは益々輝きを増したでしょ?」


両手を使っての視聴効果で桃を持て囃しながら李は笑壺に入り、声色も昼食時にあった刺々しさは無くなり、楽しみながら二人を弄ったのだなと雷太は平静を装いながら感じた。


「確かに二人とも印象がガラリと変わったね。」


依然鳴り止まぬシャッター音が店内に響きながら、彼は改めて桃の顔をまじまじと見つめるや、彼女は恥ずかしいのかこそこそと李の背後へと隠れる。


ピンクゴールドの髪を三つ編みのハーフアップでスッキリとした印象を与え、そのハイトーンな髪色を爽やかさを重点に置いた化粧で透き通る、全体的にこの夏に向けたクールなイメージでまとめた桃の顔に、照れ笑いした表情の緩みがギャップとなって彼の心を深く胸打たせた。


素直な気持ちで桃は美少女なんだなと感心してしまう。


呆然と見惚れる最中、李は頻りにボディランゲージで桃を褒める様にと合図を送るも、雷太の褒め言葉には限界があった。


「や、やっぱり、桃、は綺麗なんだね。」


しかし、そんな単純な言葉でさえ彼女は茹で蛸の如く顔を赤らめ、何時もの斜め上を行く返しも出来ずうんうんと頷く。


大人しい桃の姿は流石の雷太でさえ心を揺れ動かせ、彼もまた跳ね退く事さえ忘れ、思わず見てしまう。


気持ちばかりが前面に押されていた為に彼女の持って生まれた美しさが埋もれていたが、化粧一つでここまで変わるとは雷太は予想だにしていなかった。


「あっ!」


何やら良い雰囲気が漂い始めた頃に漸く事の重大さに李は気付いたのか、思わず声をあげ急いで雷太の視線を妨げる様に体を動かす。


化粧の良さを知って貰いたいが為にした行動がここまで雷太に影響を与えるとは思っておらず、後悔が李に焦りをもたらした。


「ライ、これが化粧の力よ!」


サムズアップしながらのウインクでお茶目に自慢する李を見るや魔法が解け、雷太は深呼吸し絆され掛けた自身の節度を深く反省する。


「ねえ、らい君?今の私となら結婚してくれる?」


李の後ろで控え目に話す桃のそのおしとやかさに彼は思わず、うんと答えそうになるも既に落ち着いた今ははっきりと断りを入れた。


「ごめんね、桃。確認出来るまではまだ何も言えないや。」


「ちぇっ、折角らい君の好きそうな感じを演じてみたのに、やっぱり化粧一つでらい君の気持ちは変わらないじゃん。」


ブー垂れる桃を宥める李の後ろから疲労困憊した美夜とホクホク顔の朝美が戻ってくる。


荒く崩した団子ヘア、元々タレ目な彼女の瞳を生かす様に引かれたブラウン系のアイライン。


自信の無い気弱な表情は一転しアンニュイ漂う大人な女性へと様変わりさせ、その伏せ目がちな視線が淫靡な印象を窺わせた。


知らぬうちに雷太は生唾を飲み込み、再び訪れる魅惑の魔法の虜となる。


「美夜さん、綺麗…ですね。」


桃と同じ台詞を言った筈なのに胸に込み上げる恥ずかしい気持ちは一体何なのだろうか、と雷太は骨抜きにされた頭では到底まともな思考が出来ない中で次第に美夜の容姿に魅了され、そんな事などどうでもよくなっていた。

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