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それ、ホントに僕ですか?  作者: 海々深々魅々美
パンドラの箱は誰が閉じる?
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第51話

「最近は4月でも、もう梅雨時期かな?って思う位、蒸し暑くなってきてるね。」


帰り道を三人並んで歩く中、気まずい沈黙を破ったのは意外にも引っ込み思案な美夜だった。


暑さに我慢出来なくなり、両目を隠す様に垂らされた前髪をハーフに振り分け、ハンカチでおでこに浮いた汗を拭う。


艶かしくため息を吐き、スカートからYシャツをはだけ、ボタンを第二まで外し、リボンタイを緩め、だらしなくする姿に李は学校とのギャップに一人驚いていた。


「確かに年々、暑くなってる気はしますね~。私とらい君の仲みたいで困っちゃいますよ~。」


敵意を向けていた桃でさえこの暑さには参るのか、美夜とまともに会話する程、むしむしとした空気にはお互い苦手であった。


「そうかな?ウチは暑い方が好きだから、今も心地好い空気だとは思うよ。」


髪型から服装から如何にも暑苦しそうに見えるのに、李は平然と汗一つかかず、嫌な顔もしない。


しかし、二人からの反感を買ったようで疑念の声をあげ李の発言に不服そうに小首を傾げた。


「暑いと汗はかく、体は怠くなる、化粧だって落ちる、良いことないよ?」


「そんなヤワな化粧品使わないで!」


美夜は暑さに対してのデメリットを言うや、李はすかさず彼女の化粧に掛ける情熱の低さに注意した。


李は愕然として、あれこれとどの化粧品が良いかを説くも美夜の知識の乏しさ故に話の半分すら理解出来なかった。


「オカルトに関してだったら、色々知ってるんだけどね。」


困り果てつつも、こちらも何か知識を披露してやろうと李に自身の趣味を知って貰おうと試みるも「いやいや、フォローになって無いですから」と一蹴され、肩を落とす。


「ミヤセン、ありのままでって言うのも素敵ですけど、ほんの少し化粧するだけでもっとライに好かれるって思えば、やった甲斐はあると思うんすよ。ねえ、桃っち?桃っちもその辺り気遣ってるよねー?」


唐突に同意を求められ、肩を跳ね上げ驚きながらもそれとなく返事をする桃を見て、李はもしやと嫌な予感が横切った。


「もしかして、桃っちもそんな化粧しないとか?」


「え?いや、化粧はした事あるよ。」


「したって何だよ?現在進行形じゃないの?」


「……まだ、早いかなって。」


「まだ?」


「…お、大人になってからし始めようかなって。」


「二人ともそれじゃ遅いよ!」


駅へと向かう大通りに李の叫びが響き渡り、歩行者は一斉に彼女へと振り向く。


感情的に成り過ぎた李は周囲の状況に気付くや一気に昂りは冷め、顔を真っ赤に染め、視線から逃れる様に美夜の背中に回り込み、身を縮み込ませた。


「ある程度はやっとかないといざとなった時、濃すぎたりとか肌に合わなかったりとか気付けないよ。ライだって、スッピンでも良いって言うかもしんないけど、やっぱり化粧してもっと綺麗になったら、もっと良いって言ってくれるよ。」


小声ながらも心をチクチク刺す言葉に二人は言い返せず、しょんぼりと項垂れるが李はなんと助け船を出す。


「ウチがレクチャーしてあげるから。」


ここで差を広げればかなり有利になるにも関わらず李は敢えて二人と同位置に並ぼうとした。


それは単に雷太に気に入られる為ではなく、純粋に化粧の楽しさを知って貰おうと言う思いがあるからだった。


「じゃあ、実践してみようか。」


素材の良い二人を自分の手腕でいかに輝かせられるか、鞄からド派手な小箱を取り出し、李の顔はイヤらしく微笑んだ。



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