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それ、ホントに僕ですか?  作者: 海々深々魅々美
パンドラの箱は誰が閉じる?
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第47話

「まあ、栄養つけなきゃないってのは理解出来るけど、そもそも彼女でもない桃っちがしゃしゃり出てくる訳?百歩譲って桃っちがライの健康を気遣うのも分かるよ。でもさ、そう言うのはお節介なんだから止めた方が良いと思うよ、ストーカーの桃っち。」


桃の言動を認めた上で貶める李の煽り言葉に彼女は微動だにせず、寧ろ誇らしげにその言葉を甘受していた。


「まあ、将来の旦那様の健康を気遣うのは妻として至極当然だし、何よりもちゃんと結婚の約束をしたんだからストーカー呼ばわりするのはオカシイかな~。」


桃が自慢気に話す確固たる想いと茶化された事に対しての言い分が妙に相性が良く、卑しさというよりも如何に愛を募らせているのかが表情、そして体から溢れ出していた。


しかし、李はそんな彼女に臆しもせず真実を述べるだけ。


「そうなんだー。じゃあ、ウチの方が先にライと婚約したから、ウチと一緒に食事するべきだよねー。」


あまりの大声と衝撃の内容に桃はおろかクラスメイトですらざわめきと驚愕に室内を満たしている中、雷太に至っては誰よりもその事実に言葉を失っていた。


「そ、そそんなの関係ないし!第一に私の方がらい君に関わってたんだから、あなたが出る幕じゃないし!」


「そう?関係無いって事は認めるって捉えて良いのね?それに本妻だと名乗るんだったら食事の用意は当然してあるよね?……あ!ごめーん。用意してないから、どうしよっか?って話し合ってたんだね。」


動揺を誘い、且つボロを出せばすかさず追い打ちをかける李の企みに桃はすんなり引っ掛かり、悔しそうに唇を噛みしめ怨嗟のこもった目付きで睨む。


自分の慢心さが生んだ事態に悔しさと情けなさに握られた拳は震え、反論しようにも込み上げる感情に負け、上手く思考を纏められなかった。


「桃っちは何時も詰めが甘いよね……だから、ライに忘れられちゃうんだよ?」


「李、言い過ぎだよ。それとどっちが先かなんて覚えてないんだけど、何か証拠があるの?」


あの強引さと理屈と屁理屈を交えた口論で言葉巧みにアプローチをかけてた桃のこのやられっぷりには、さすがの雷太も可哀想というより悔しく感じ、助け船を差し出した。


「ウチのママはさ、そう言う所はしっかりしてるから婚約書とその証明写真をしっかり残してあるんだよねー。と言うか、ライは困ってたんじゃないの?桃っちは牽制のつもりで大声で喋ってたのかな?ついつい話の内容が聞こえちゃうけど、すっごく苦手そうにしてたけど、どうなの?」


桃のフォローに徹するつもりが証拠はあるわ、矛先は彼へと向けられるわと状況は更に後手に回り、桃の運命は委ねられる。


「…正直言うと苦手だよ。」


そう言うと桃の抑えていた気持ちは爆発し、涙となって止めどなく流れ落ちていく。


「でも!それは僕の記憶が無いからであって桃に悪気はないよ。僕が覚えてたらもっと優しく出来るし、もっと接したり出来るよ。…ただ、記憶が無いのに桃と気安く話せないじゃん?なんか、桃を弄んでる気がするから踏ん切りが着かないというか……桃が大事にしてる思い出を踏みにじるような気がするから…。」


「らい君、捨てないで~!!何でもするから!一人にしないで~!」


崩れ落ちる様に雷太の膝元に抱き着く桃を宥め、優しく声を掛ける雷太を羨ましげに見つめる李。


「あの、俺を置いてけぼりにしないでよ。」


蚊帳の外に出された流は悲しそうに彼に話し掛けた。


しかし、雷太は桃を慰めのに必死で耳にさえ届いておらず、流の方を注目すらしない。


「雷太!俺を見捨てないでくれよー。」


流もまた彼の膝元に飛び込み、助けを乞おうとした。


しかし雷太の膝元で声を掛けられ、背中や頭を撫でられご満悦の桃はすがり付こうとする流を手で押し退け、独占する。


お腹は空くのにありつけない。


桃との仲を修復した筈なのに、また振り出しから。


更に流まで情緒不安定になる始末。


それを楽しげに見つめる李は一体何の目的で話に参加してきたのか、てんてこ舞いに巻き込まれた彼にそれを推察する余裕は残されていなかった。

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