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それ、ホントに僕ですか?  作者: 海々深々魅々美
パンドラの箱は誰が閉じる?
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第46話

二時限目を過ぎた辺りで急激にお腹が空いた事を考えると、どうやら朝御飯は食べてないなと雷太は空腹に苛まれるよりもちょっとした疑問が晴れた事に欲求は満たされていた。


となると、と記憶を辿れば、ここ数日は桃に食事を一任していたのだから昼食をどうすべきか考えねばならない新たな課題が浮かび上がる。


傷心に暮れる彼女にお弁当を作る気力なぞは待ち合わせておらず、当然の事ながら彼女もまた昼食をどうすべきかを考えている筈だろう。


その証拠に授業中であるにも関わらず、雷太の元にノートの切れ端がリレー形式に渡り、四折りにされたそれを開けば、『お昼どうする?』と言う一文の後でみっしりと愛の言葉が連なっていた。


彼女を垣間見れば、彼女もまたチラチラと彼を様子見ている。


雷太はその切れ端を丁寧に八折りにして机の中へとしまい込んだ。


その行動を桃はどう捉えたのか、続々と切れ端は寄せられ、そして開けばダムが決壊したが如く愛で溢れ、溺れてしまいそうな程の情報量と虫歯が出来そうな甘い文体、だのに執着の見える文章にお腹の虫でさえ怖がって鳴くのを止めてしまう。


そもそもどうしてクラスメイトは面白がって次々と送られてくる切れ端を教師の目を掻い潜り、渡してくるのだろうかと、雷太は少なからず理不尽を感じた。


休み時間に昼食の予定を話し合えばいいものを、と考えたものの彼は既に桃ありきで考慮していた事に気付けずにいた。


桃からしてみれば密談しているような、そんな背徳感にまみれた行動が二人の絆をより深めている気がし、尚更一方的なやり取りは増して、彼への想いを書き連ねれば切れ端程度では収まらず、授業が終わる頃にはとうとう一ページ丸々使用していた。


これだけ残念な彼女なのに容姿が整っているお陰か美化され他の人の目や耳に残るのだろう、誰もそれを気味悪がったりだとか、危なげに見ない。


反対に雷太の印象は悪くなる一方である。


こんなに健気で献身的な桃を蔑ろにして他の女性との交遊関係を築き、報いろうとする姿勢が見えないだとか、どんどんと彼女を贔屓し始めた。


勿論、流もその一人である。


これが昔の約束無しで考えると、夢中であるが故の行動なのだなと氷解出来るが、それでもやり過ぎであり、相手に恐怖を植え付けかねないと彼女は危惧しないのだろうか。


「ね~ね~、らい君。お昼ご飯どうする?」


現に雷太は少なからず桃をどう取り扱えばいいのか考えあぐね、また邪険にも出来ないのだから程よい距離感を掴めずにいた。


「どうしようもないから購買部で買うしかないんじゃない?」


そう提案したのも束の間、意外な人物からのお誘いが雷太に驚きを、そして桃に妬みをもたらした。


「なら、ウチのサンドイッチでも食べる?」


軽めの笑みで近付く李に桃は当然の如く座っていた雷太の膝から立ち上がり、行く手を阻み冷ややかな視線で見下ろす。


小柄なイケイケファッションの彼女は、それでも桃の脇から顔を覗かせケバケバしい布で覆われたそれを彼にちらつかせた。


「ゴメンね。桃っちの声がデカイからついつい聞こえちゃってね。」


「いや、それはいいけど。李はお昼大丈夫なの?」


桃が体を動かし、李の視線を邪魔する度に彼女は至る所から顔を出し話を進めていく。


「それは、絶対、に、駄目です。」


しかし桃は決してそれを許さず、一言一言を強調しながら断固として受け入れないと小さなギャルに宣った。


「えー?何で?」


「らい君にはきちんと栄養をつけて貰って、夜に頑張って欲しいのでそんな軽食で済ませる訳には絶対にいけません。」


こいつは一体何を言っているのだろうか、と雷太は訝しげに話を聞いていたが李はどうやら違う観点を見据えて反論し始めた。

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