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それ、ホントに僕ですか?  作者: 海々深々魅々美
パンドラの箱は誰が閉じる?
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第45話

「でも、何で雷太は笑ってるのに桃ちゃんは不機嫌そうな顔してるんだ?」


雷太が覚えのない写真を見て驚いている間に、流はその写真の不思議な点に疑問を抱いていた。


確かにと彼は流の疑問に言われて気付き、更に二人の微妙な距離感にも何かつかえた様にしっくりと来なかった。


「それは……忘れちゃった。」


桃はその点に関し重要視してないのか抑揚なく喋り、疑問を一蹴する。


彼女にとって大事なのは写真の中の不審な部分ではなく、雷太と一緒に写っている、ただ一点だけに留められている。


彼女の返答を聞き、流もまた疑問を流す中で雷太だけはいつまでも胸につっかえたままこの写真を見詰めていた。


「でも、何でこの写真なの?もっと仲良く写ってたりとかしてるのだって有ったんじゃないの?」


雷太は諦めずに問い詰める。


「それはね。この日に結婚しようって約束したからなんだよ。…もしかして、思い出してくれたの!?」


しかしその疑念は逆効果で、却って期待を煽るような真似をしたらしく桃の瞳は爛々として嬉しそうに体を擦り寄せ、照れながらも空いた手で雷太の胸にのの字を書いた。


呆れながら笑みをひきつらせ、彼はゆっくりと頭を横に振り、これ以上の詮索は危険と判断し彼女に写真を返した。


「らい君がね、『大人になったら結婚しよう』って約束してくれて、すっごく嬉しかったの。私、あの日が来てるから大人だし、らい君もあれが通ってるから大人だし、もう結婚出来ちゃうね!……結婚しちゃうか!!?」


写真を胸に当て昔の純粋な思い出の余韻に浸ってるかと思いきや、興奮は頂点に達し唐突に爆弾発言しつつ、今から市役所に行こうなどと雷太を無理矢理、外に連れ出そうとした。


「桃、駄目だよ。そう言うのはちゃんと成人してから家族を養えるように、将来を見据えて行動しないと。」


あまりの突飛な行動に彼は尤もらしい事を並べ立て桃を落ち着かせようと説得した。


「らい君……。」


すると、急に立ち止まり気付かされた様にハッと目を見開き体を戦慄かせ、熱烈な抱擁を以て嬉しさを体現する。


「嬉しい!らい君がちゃんと私との今後を踏まえて堅実な考えでいてくれたなんて!何で最初に教えてくれなかったの?教えてくれれば、私だって節度ある振る舞いをしたのに…私だけ舞い上がっちゃって恥ずかしいじゃん。」


それらしい事を言ったような気もするがと返事をしたいのだがそもそも、ここは校内でしかも教室で、生徒達が彼らのイチャイチャを冷やかし混じりに見ているものだから、彼は顔を真っ赤にさせ、桃の手中から逃れようとするも、しっかりと掴まれている為に一向に離れられない。


流に助けを求める為に視線を送るもそ知らぬ顔をしてゆっくりと明後日の方向を向き、やんわり断られた。


しかしながら丁度よく予鈴が鳴り響いた。


桃は葛藤しているのか深刻そうに廊下と教室を見比べ、逡巡した後に名残惜しく雷太を手放し、不満げに唇を尖らせる。


「やっぱり、既成事実が有った方がそれに向かって頑張れるんじゃないのかな。…でもらい君の重荷にもなりたくないし。かと言って卒業まで我慢出来るかって考えると無理な話だし……。」


ぶつぶつと誰に話すでもなく、試案の考察を繰り広げる彼女を尻目に雷太のこの友人への不信感をポツリと言い放つ。


「もう勉強教えないぞ。」


「ごめんって雷太ー。だってあの桃ちゃんの目を見たら誰だって助けられないって。『邪魔したら後で、分かるよね?』って伝わっちゃったよ。マジで。目は口ほどにってこう言う意味かって思ったよ。」


窓から煌々と照らす太陽が雷太の体を熱していく。


心は不安で冷えているのに体は暑くなるばかり。


背中を伝う汗が気持ち悪さを際立たせ、桃の溢れる愛の恐怖と寝不足が相乗して一層目眩を引き起こす。


そう言えば朝ごはん食べたんだっけ?なんて身近な記憶も曖昧な程に彼は頭を悩ます事で一杯であった

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